BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CANDY DULFER - - report : CANDY D...

2012/02/14

CANDY DULFER - キャンディ・ダルファー
CANDY DULFER - キャンディ・ダルファー


公演初日リポート:CANDY DULFER
with special guest PRINTZ BOARD



今年のバレンタイン・シーズンは、例年よりもさらにホットでエキサイティングなものになるでしょう。ファンキー・サックスの女王、キャンディ・ダルファーが新作『クレイジー』を引っさげて来日しているのです。

キャンディがセンセーショナルなデビューを飾り、瞬く間に人気を集めてからもう20年が経ちます。彼女の成功を受けて登場した若手女性管楽器プレイヤーは星の数ほどいるはずです。しかし今なお、キャンディは頂点に輝き続けています。けっしてスターの座に安住せず、現在も成長・吸収を続けていることは、さらに強靭になったサックスの音色、磨きのかかったヴォーカル、全身全霊をこめたパフォーマンスに接すれば一目瞭然です。

今回のステージは、『クレイジー』からのナンバーが中心でした。このニュー・アルバムが、また良いのです。キャンディの持つ魅力、美味しさを最大限に引き出すような曲がズラッと揃っているのです。それを目の前で演奏するのですから、当然ながらそこには“ライヴならではの臨場感”が加味され、バンドは乗りまくり、オーディエンスは熱狂しまくる、という図が生まれます。

もちろん「LIFE OF THE PARTY」、「SAX-A-GO-GO」といった定番もプレイされました。“この曲はプリンスが私に作ってくれたの。「パープル・レイン」も「KISS」も「サイン・オブ・ザ・タイムズ」も確かに素晴らしいけど、私にとって彼のベストはこの曲よ!”という前置きで始まった「LIFE OF THE PARTY」は、これまでぼくがキャンディのライヴで聴いてきた全「LIFE OF THE PARTY」を凌ぐ圧巻の出来でした。キーボードとヴォーカルのチャンス・ハワード、ギターのウルコ・ベッド等、“キャンディ・ファミリー”というべきおなじみの面々も鉄壁のサポートで女王のサックス・ブロウを盛りあげます。

スペシャル・ゲストとして『クレイジー』のプロデューサー、プリンツ・ボードが加わったのも嬉しかったですね。ブラック・アイド・ピーズのミュージカル・ディレクターとしても大ヒットを飛ばしたプリンツですが、ライヴで楽しそうに歌い、踊る姿は“気さくなお兄ちゃん”という感じ。彼が入ると、ステージには一層の華やかさが生まれます。プログラム後半ではトランペットも聴かせてくれました。

最後は総立ち&ダンス大会となって、1時間40分にわたるセッションは終わりました。「うわー、初日のファースト・セットからこんなに飛ばすなんて!」とびっくりしたのですが、なにしろガッツの固まりのようなキャンディです。さらにすごいライヴを繰り広げてくれることでしょう。どのオーディエンスも裏切ることのない、最高のステージに御期待ください。
(原田 2012 2.13)


● 2.13mon.-2.15wed., 2.19sun.-2.20mon.
CANDY DULFER
with special guest PRINTZ BOARD


CANDY DULFER - キャンディ・ダルファー


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , TAKE6 - - report : TAKE 6

2012/02/12

TAKE 6
TAKE 6


公演初日リポート:TAKE 6



待ちに待ったグループの登場です。

ア・カペラ・コーラスの最高峰にして、卓越したエンタテインメント集団であるテイク6が久しぶりに来日してくれました。前身グループの頃から数えると発足30年、テイク6としてのレコード・デビューから数えても25周年になろうという老舗ですが、そのハーモニー、チームワーク、振り付けにはさらに磨きがかかり、「どうしてあんなに見事にハモれるのだろう」、「どうしてあんなにビシッと各メンバーのパートがかみ合うのだろう」と、最初から最後まで驚かされっぱなしでした。

オープニングは、ナット・キング・コールの代表曲である「STRAIGHTEN UP AND FLY RIGHT」。愛娘ナタリー・コールもかつて「ブルーノート東京」で歌っていましたが、こうしたR&B系のスタンダード・ナンバーをサラリとこなすテイク6がまた、なんともいえず粋なのです。目をつぶると、まるでドラマーやベーシストやホーン・セクションもいるように聴こえてきます。しかし目を開けると、そこにいるのは6人の卓越したシンガーたちです。まさしくヴォイス・オーケストラ。すべてを声でまかない、猛烈にスイングし、グルーヴする彼らに降参です。

メンバーそれぞれのキャラクターが立っているのもテイク6の魅力ですが、個人的に釘付けになったのが次の二人です。一貫してベース・パートを担当するアルヴィン・チーアは、ジャズ・ベーシストのクリスチャン・マクブライドに笑顔がそっくり。フレーズ作りも似ているように思いました。

キャップ(帽子)がトレードマークのクリスチャン・デントリーは主に高音パートを歌いますが、その声はむちゃくちゃ艶やかで躍動感があります。しかも無類のモノマネ名人です。ぼくは彼の、“DJがマイケル・ジャクソンのアナログ盤をスクラッチしているところ”のモノマネに、驚き、腹をかかえるほど笑いました。この超絶芸は、彼らを生で見たファンだけが味わえる特典といっていいでしょう。

「SPREAD LOVE」、「SO MUCH 2 SAY」といった初期のレパートリーもしっかり聴かせてくれましたし、名曲満載の近作『The Standard』からミシェル・ルグラン作のバラード「WINDMILLS OF YOUR MIND」も披露されました。デビュー当時なら、彼らがフランス産の歌を取りあげるなんて想像もできなかったに違いありません。しかし今の彼らはそれをごきげんにスイングさせ、見事テイク6・サウンドに料理しています。いったいこのグループは、どこまで凄いエンターテイナーになってゆくのでしょう。

テイク6は本日までブルーノート東京に出演し、14日には「すみだトリフォニーホール」で新日本フィルとの共演を行ないます。「いい歌をとことん味わいたい」、「ハッピーにグルーヴするステージを楽しみたい」という方は、ぜひ足をお運びください。胸がいっぱいになるほどの感動を届けてくれるはずです。「日本のファンに会いたくて、ずっとうずうずしていたんだ」と語るテイク6に、会いに行きましょう!
(原田 2012 2.11)


● 2.11sat.-2.12sun.
TAKE 6
☆ 参考:セットリストはこちら


●2.14tue.
TAKE 6 ジャパン・ツアー2012
"TAKE 6 St. Valentine's day Special"
ジャズ&クラシック・ナイト with 新日本フィル

すみだトリフォニーホールにて公演


TAKE 6


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ELECTRIC EMPIRE - - report : ELECTRI...

2012/02/09

エレクトリック・エンパイア - ELECTRIC EMPIRE
エレクトリック・エンパイア - ELECTRIC EMPIRE


公演初日リポート:ELECTRIC EMPIRE
with DJs presented by "Good Music Parlor"
MURO (2.8wed.) DJ NORI (2.9thu.), Jazzy Sport Crew (2.10fri.)



オーストラリアの生んだR&B〜ソウル・ミュージック・ユニット、エレクトリック・エンパイア(2009年結成)が遂に来日しました。

ぼくは喜びいさんで初日のファースト・セットに駆けつけたのですが、予想を遙かに超えたすさまじいライヴに、改めて彼らに惚れ直してしまいました。その全力パフォーマンス、憎いほどキャラクターの立った歌唱・楽曲・演奏は「オーディエンス全員を絶対に満足させるぞ」、「次の音楽界で天下をとるのは俺たちだ」という声が聞こえてきそうなほど頼もしいものでした。ひょっとしたら、音楽リスナーの中には「オーストラリアという国とR&Bのイメージが結びつかない」という方もいらっしゃるかもしれません。そういう方にもぼくは、エレクトリック・エンパイアのステージを、声を大にしてお勧めします。大切なのはどの国で生まれたかということではなく、音楽に対する深い愛情なのだ、ということが、強く伝わってくることでしょう。

構成員はデニス・ダウラット(ギター)、アーロン・メンドーサ(キーボード)、ジェイソン・ヒーラア(ドラムス)。そこに今回はサポート・メンバーとしてサイモン・オルセン(ベース)が加わります。デニスもアーロンもジェイソンも楽器の名手であると同時に、優れたリード・ヴォーカリストでもあります。軽やかで甘美なジェイソン、粘りと張りのあるアーロン、ファルセットの達人でもあるデニスが交互に美声を聴かせることで、バンドのサウンドには一層の深みとバラエティが生まれます。

なかでもぼくはジェイソンのパフォーマンスに惹かれました。基本的にドラムスを叩きながら歌うのですが、そのうまいこと、かっこいいこと。ヴォーカルのブレス(息継ぎ)の間に、ドラムスでフィル・イン(おかず)を入れるのですが、そのフレーズがまた、なんともファンキーなのです。歌いながらドラムスを叩くということは、いいかえれば自分で同時にメロディとリズムをリードするということです。誰にでも可能なことではありません。しかしジェイソンはそれを軽々とこなし、しかも観客に投げキッスまでしてしまうのですから、本当に「降参」です。

プログラムの大半はメンバーの自作ですが、それがまた良いのです。アル・グリーン、スティーヴィー・ワンダー、ダニー・ハサウェイ等の影響が指摘されているようですが、ぼくはそこにザ・バンドやラスカルズの名前も付け加えたくなりました。いいメロディを、いかしたコード(和音)、いいリズムと共に表現する・・・エレクトリック・エンパイアのやっていることは、別に斬新でも何でもありません。しかしその正攻法が、現在では新鮮なのです。うれしい気持ちにさせてくれるのです。メンドーサが歌ったスライ&ファミリー・ストーンの「IF YOU WANT ME TO STAY」(ヴォコーダーを使用)、マイケル・ジャクソンの「OFF THE WALL」といったカヴァー曲も見事でした。そうした先人たちがいたからこそ、今の自分があるということを、エレクトリック・エンパイアのメンバーは痛いほど知っているのでしょう。

ぼくはベテランのステージも、ビッグ・アーティストのステージも大好きですが、これからどんどん躍進していこうとしているミュージシャンのライヴに接する喜びは格別です。ライジング・スター、エレクトリック・エンパイアの未来は限りなく明るい! そう断言させていただきます。

3月にはやはり注目の新星、ベン・ロンクル・ソウルが登場します。こちらも猛烈に楽しみですが、まずは10日まで行なわれるエレクトリック・エンパイアのライヴにぜひ足を運んでいただければと思います。入場料¥5800の、何倍もの興奮と感動を与えてくれるはずです。
(原田 2012 2.8)

● 2.8wed.-2.10fri.
ELECTRIC EMPIRE
with DJs presented by "Good Music Parlor"
MURO (2.8wed.) DJ NORI (2.9thu.), Jazzy Sport Crew (2.10fri.)
☆ 参考:セットリストはこちら



☆ Coming Soon!
BEN L'ONCLE SOUL
3.17sat. & 3.19mon.

エレクトリック・エンパイア - ELECTRIC EMPIRE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NARADA MICHAEL WALDEN - - report : NARADA ...

2012/02/03

ナラダ・マイケル・ウォルデン - NARADA MICHAEL WALDEN
ナラダ・マイケル・ウォルデン - NARADA MICHAEL WALDEN


公演初日リポート:
NARADA MICHAEL WALDEN BAND
with special guest MASAYOSHI TAKANAKA



ホイットニー・ヒューストン、アレサ・フランクリン、セリーヌ・ディオン等を手がけた凄腕プロデューサーにして、最高峰の超絶ドラマー。それがナラダ・マイケル・ウォルデンです。日本武道館でもコンサートをしたことのある彼ですが、ブルーノート東京への登場は今回が初めて。盛りだくさんなプログラムで客席を大いに沸かせてくれました。

店内に入ると、巨大なドラム・セットが目に飛び込んできます。シンバルやタムの周りには花が飾られ、ツーバス(バス・ドラムが2個あるシステム)の片方には彼のイニシャル“NMW”、もう片方には近日発売予定のニュー・アルバムのタイトル“THUNDER”という文字が刻まれています。

オープニングからナラダのプレイはエンジン全開です。大きな体の持ち主ということも関係があるのでしょうか、ひとつひとつの音に並外れた重量感があります。スピード感たっぷりに叩きまくっても、決して軽薄な感じがせず、サウンドに腰があるのです。ウェザー・リポートやマハヴィシュヌ・オーケストラに在籍し、ジェフ・ベックからも愛されたドラムの腕前は今なお輝くばかりです。

そしてナラダは、素晴らしいシンガーでもあります。あれほど激しくドラムを叩きながら歌っているのに、息切れをまったくしていないのですから超人的です。そして曲と曲の間にはMCでファンを煽ります。選曲も“ベスト・オブ・ナラダ”というべきもので、1976年に発表されたファースト・アルバムのタイトル曲「GARDEN OF LOVE LIGHT」があるかと思えば、アレサ・フランクリンとのコラボレーションで爆発的にヒットした「FREEWAY OF LOVE」をニキータ・ジャーメインのヴォーカル(ものすごい声量の持ち主です。ナラダとは30年以上にわたる盟友とのこと)をフィーチャーして聴かせてくれたり、“エンジェル・ファンク”ことアンジェリーン・サリのベースが光るディスコ〜ファンク・メドレーあり、と、とにかく多彩なプログラムで楽しませてくれました。

後半はお待ちかね、高中正義の登場です。つまり’81年の大ヒット・アルバム『SAUDADE』、及び伝説の横浜スタジアム公演で繰り広げられた高中&ナラダの黄金コンビネーションが遂に、今ここで復活したわけです。「SAUDADE」、「READY TO FLY」、「MANIFESTATION」・・・たとえタイトルを知らなかったとしても、誰もが一度は聴いたことがあるであろう名曲の数々が、その当事者たちによって、目の前でプレイされていくのは快感のひとことに尽きます。奔放に弾きまくる高中、そのギター・フレーズに鋭く反応しながらドラムを叩くナラダ。顔を見合わせながら演奏するふたりの笑顔には、“音楽する喜び”が溢れていました。

「BLACK SHIP」で本編を終えた後、再びステージに登場したナラダ・バンドと高中は、さらに3曲を演奏。ラストはエミー賞を獲得した「ONE MOMENT IN TIME」(ホイットニー・ヒューストンのNO.1ヒット)で締めくくられました。「移動中のバスの中で、また一緒にアルバムを作りたいねと話し合った」というナラダと高中。これだけウマが合えば、次のコラボ作品も傑作まちがいなしでしょう!
(原田 2012 2.2)


☆ 参考:セットリストはこちら
● 2.2thu.-2.5sun.
NARADA MICHAEL WALDEN BAND
with special guest MASAYOSHI TAKANAKA



ナラダ・マイケル・ウォルデン - NARADA MICHAEL WALDEN


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PEABO BRYSON - - report : PEABO B...

2012/01/31

ピーボ・ブライソン - PEABO BRYSON
ピーボ・ブライソン - PEABO BRYSON


公演初日リポート:
PEABO BRYSON with special guest DEBORAH COX



ちょっと前にニュー・イヤーを迎えたばかりだと思ったら、もう2月の足音が近づいてきました。時の流れは速いものです。

この時期になるとぼくは、あるシンガーの歌声が聴きたくなります。おそらく、同じように感じているリスナーの方も多いはずです。「あの熱いラヴ・ソング、極上のバラードをライヴで味わいたい」という思いに応えるように、今年も“彼”が来日してくれました。ブラック・コンテンポラリー界を代表するジェントルマン、ピーボ・ブライソンの登場です。

いつも素敵な女性シンガーをデュエット・パートナーとして連れてきてくれるピーボですが、今年はなんと、カナダR&Bシーンの歌姫、デボラ・コックスと一緒にステージを繰り広げました。デボラといえば歌手・女優として幅広く活躍し、全米ナンバーワン・ヒット「NOBODY SUPPOSED TO BE HERE」を持つ超人気者。単独公演でも十分に話題になるであろうふたりを、クラブで見ることができるのは、ぜいたくのひとことに尽きます。

おなじみの“全員握手”から、ピーボのステージは始まります。「ありがとうございます」、「おねがいします」といった日本語を言いながらファンに手を伸ばすピーボに、ビッグ・スターの気取りは全くありません。バンドスタンドにあがると後は、ただひたすら熱唱を繰り広げます。彼の一挙一動に、ファンの視線は集中します。今回は「IF EVER YOU'RE IN MY ARMS AGAIN」、「TONIGHT, I CELEBRATE MY LOVE」などの十八番に混じり、カーペンターズの歌でヒットした「A SONG FOR YOU」等も聴かせてくれました。ところで、少年時代のピーボはサム・クックやマーヴィン・ゲイに憧れていたそうです。しかし現在の彼はワン&オンリー。艶のあるテナー・ヴォイスには、ますます磨きがかかっています。

デボラ・コックスは「NOBODY〜」のほか、デビュー・シングル「SENTIMENTAL」等も披露。間奏ではスキャットも聴かせてくれましたが、最近の彼女はジャズ・シンガーとしても活躍しているだけに、違和感はまったくありませんでした。

お待ちかねのデュエットは「A WHOLE NEW WORLD」で実現。とても息が合っていただけに、もうちょっと多く共演してほしかったというのが本音ですが、ぼくが見たのは初日のファースト・セットですし、毎回、演目が変化することはライヴの常ですので、皆様、ぜひぜひ期待を胸にお越しください。
公演は本日までブルーノート東京、2月3日と4日にはコットンクラブで行なわれます。
(原田 2012 1.30)


☆ 参考:セットリストはこちら
● 1.30mon.-2.1wed.
PEABO BRYSON with special guest DEBORAH COX

● 2.3.fri & 2.4.sat はコットンクラブにて公演




ピーボ・ブライソン - PEABO BRYSON


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