BlueNote TOKYO


'13 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHARLES LLOYD - - report : CHARLES...

2013/01/04

チャールス・ロイド - CHARLES LLOYD
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公演初日リポート:
CHARLES LLOYD NEW QUARTET
featuring JASON MORAN, REUBEN ROGERS & ERIC HARLAND



新年、あけましておめでとうございます。ご愛読、本当にありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

この2013年、「ブルーノート東京」は開店25周年を迎えます。記念すべきアニバーサリー・イヤーの第1弾アーティストは、サックス奏者のチャールズ・ロイド。半世紀以上に渡って第一線に立ち続ける真のレジェンドです。クラブ内には始終、おごそかで暖かな雰囲気がたちこめていました。

ロイドが率いてきた数あるバンドの中で最も有名なのは、キース・ジャレット、セシル・マクビーまたはロン・マクルーア、ジャック・ディジョネットを従えた‘60年代カルテットでしょう。しかしこの顔合わせは3年足らずで幕を閉じました。しかし現在、ロイドが率いているジェイソン・モラン、ルーベン・ロジャース、エリック・ハーランドとのニュー・カルテットは今年で発足7年目を迎えます。ロイドは親子ほど年齢の離れた共演者から大いに触発され、リズム・セクションはロイドのプレイを通じてジャズの歴史や伝統を体得する・・・ぼくは現カルテットこそ、掛け値なしにロイド史上最高のユニットなのではないかと思っています。

彼らは曲間をほとんどおかず、メドレーのように曲を連ねていきます。おそらく事前に何を演奏するかも決めていないはずです(ロイドの頭の中には青写真があるのかもしれませんが)。ロイドが簡単なモチーフを提示すると、「よしわかった」とばかりに、他のメンバーがリズムなりコードなりを打ち出します。リズム隊が定常テンポでソリストをサポートすることは、あまりありません。全員がそれぞれの体内にあるビートを感じながら、しかしそれをあえて前面に出さずに、各人のプレイに耳を傾けつつ、会話するように演奏している、といえばいいでしょうか。

ぼくは初日のファースト・セットを聴きましたが、レパートリーは本当に多彩です。'60年代カルテットの当たり曲である組曲形式の「DREAM WEAVER」があると思えば、ロイドが最も尊敬するミュージ シャンのひとりであるセロニアス・モンクが書いた「MONK'S MOOD」も演奏され、さらに賛美歌の「ABIDE WITH ME」をイントロダクションがわりに、「IT'S ALWAYS YOU」までプレイ されました。この曲、トミー・ドーシー・オーケストラをバックにフランク・シナトラが歌った'40年代のヒット・ナンバーです。ロイドはテーマ・メロディを思いっきりスローで演奏し、アドリブに入ると倍テンポで盛り上げました。高音重視の音使い、16分音符の混ぜ方など、どうしてもジョン・コルトレーンのバラード演奏を連想してしまいます。思えばロイドはコルトレーン同様、激動の’60年代の空気を吸ったひとりなのです。

演目は各セット、大幅に異なるようです(セカンド・セットでは、友人であるビーチ・ボーイズの曲も演奏されたとのことです)。テナー・サックスだけではなくフルートやタロガト(ソプラノ・サックスとチャルメラを混ぜたような音がする楽器)も聴かせてくれます。公演は6日まで続きます。レジェンドの風格と貫禄を、ぜひ目の当たりに!
(原田 2013 1.3)


● 1.3thu.-1.6sun.
CHARLES LLOYD NEW QUARTET featuring JASON MORAN, REUBEN ROGERS & ERIC HARLAND
☆ 参考:セットリストはこちら


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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NILE RODGERS & CHIC - - report : NILE RO...

2012/12/29

ナイル・ロジャース - NILE RODGERS
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公演初日リポート:NILE RODGERS & CHIC



2012年も楽しいこと、面白いこと、つらかったことなどなど、たくさんの出来事がありました。楽しさ、面白さを何倍にも増幅して、つらさや悲しさを吹き飛ばしてくれるライヴが、「ブルーノート東京」の年末年始を飾ります。ナイル・ロジャース&シックのステージです。

このところずっと、桜の季節に来日していた彼らですが、その時のMCでナイルは「今度は年末年始に帰ってくるよ!」と力強く宣言しました。そして今、彼は東京で、完全燃焼を繰り返しています。さすが有言実行の男、ナイルです。

「今日の曲はすべて私が書いて、プロデュースしたビッグ・ヒットばかりなんだ」というトークは、いまや定番といっていいでしょうが、もちろんその言葉に偽りはありません。世界的というか地球的というか、とにかく一世を風靡したナンバーが出るわ出るわ・・・。マドンナに提供した「LIKE A VIRGIN」、ダイアナ・ロスに提供した「I’M COMING OUT」、 デュラン・デュランに提供した「NOTOROIUS」、シックを象徴する「LE FREAK」、「GOOD TIMES」等、有名曲が次から次へと、惜しげもなく飛び出します。

ひょうきんなキャラクターを持ったドラマーのラルフ・ロールがコクのある歌声を聴かせるデヴィッド・ボウイのカヴァー「LET’S DANCE」における場内の盛り上がりも、ハンパではありません。もちろんナイルのファンキーなギター・カッティングは「常に」といっていいほど炸裂を続け、そこにラルフの強靭なドラムス、ジェリー・バーンズの骨太なスラッピング・ベースが絡み合ったときの快感は、とうてい言葉にすることができません。

厚みのあるホーン・セクション、けっして前面に出ることはないものの、サウンドの要をしっかり押さえているキーボード。そしてどんなタイプの曲も歌いこなしてしまう女性シンガーたち。ナイルは本当に良いバンドを率いているなあと、いつもながら思います。あまりのボルテージの高さに、ぼくは「初日からこんなに飛ばしちゃっていいのか」と圧倒されてしましたが、来たるカウントダウン、ニューイヤーに向けて、ナイル・ロジャース&シックのパフォーマンスはさらに熱を帯びていくことでしょう。

彼らのファンキー・サウンドに体を揺らしながら、2012年を笑顔で見送り、2013年を思いっきりポジティヴに迎えようではないですか!
(原田 2012 12.28)


● 12.28fri.-2013 1.2wed.(1.1tue.OFF)
NILE RODGERS & CHIC
☆ 参考:セットリストはこちら


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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RITA COOLIDGE - - report : RITA CO...

2012/12/25

リタ・クーリッジ - RITA COOLIDGE
リタ・クーリッジ - RITA COOLIDGE


公演初日リポート:
RITA COOLIDGE



クリスマスを飾る円熟の歌声。2度のグラミー賞に輝くリタ・クーリッジが今、ここブルーノート東京で、飛び切りのステージを繰り広げています。

「WE'RE ALL ALONE」や「YOUR LOVE HAS LIFTED ME HIGHER AND HIGHER」など数多くのヒットを持つ彼女は同時に、全米チャートのポップ部門、カントリー部門、ジャズ部門、アダルト・コンテンポラリー部門に登場したことのある稀有な存在です。どんなタイプの曲もリタ節で歌いこなしてしまう、文字通りの“ザ・シンガー”といえましょうか。そんな彼女の最新作は『RITA COOLIDGE CHRISTMAS』 というクリスマス・アルバム。そこからのレパートリーも含むライヴを、目の前で届けてくれるのですから、本当に朗報です。

“ザ・デルタ・レディ、リタ・クーリッジ!”というMCに導かれて登場したリタはまず、ジャズのスタンダード曲「COME RAIN OR COME SHINE」から歌い始めました。声質はまったく違いま すが、あえてフラット気味の音を出して、そこからグリッサンド風にその音の位置に声をもっていくあたりや、繊細なマイク・コントロールに、ぼくはなぜかヘレン・メリルを思いだしました。続いては、お待ちかねの「SUPERSTAR」。カーペンターズのカヴァー・ヴァージョンでも有名ですが、もともとはリタが歌って人気を博したナンバーです。3曲目からはクリスマス・ナンバーも次々に登場します。「SANTA CLAUS IS COMING TO TOWN」はなんと、ニューオリンズ・ファンク風のリズムで解釈。“クリスマス=冬=寒い=しんみり”というイメージを裏切る、熱いパフォーマンスでした。

かつて公私共にパートナーであったクリス・クリストファーソン絡みのナンバーでは、「LATE AGAIN (GETTIN' OVER YOU)」が光りました。音楽監督も兼ねるジョン・マク ダフィーのギターも冴え渡っています。また、ドラムスのリン・コールターは「BABY IT'S COLD OUTSIDE」でドラムの席から離れ、スタンド・マイクでリタとデュエットを聴かせてくれました。「彼は素晴らしいシンガーなの」とリタが紹介した通り、かすれ気味の、実に渋くていい声をしています。リンはまた、曲によっては片手に2本のスティックを持ったり、スティックとマラカスを同時に持ったり、左手でボンゴを叩き右手でドラムスを叩く等、いろんな技でバンドを盛りあげていました。

クライマックスはもちろん、「WE'RE ALL ALONE」と「YOUR LOVE HAS LIFTED ME HIGHER AND HIGHER」。「往年のヒット曲を歌うことに飽きてしまった」というシンガーも少なくない中、今もリタは、このレパートリーを大切に歌い、待ちわびていたオーディエンスに感銘を与えています。これは本当に素晴らしいことだと思うのです。
(原田 2012 12.24)


● 12.24mon.-12.26wed.
RITA COOLIDGE
☆ 参考:セットリストはこちら


RITA COOLIDGE - リタ・クーリッジ