BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , THOMAS DOLBY - - report : THOMAS ...

2012/02/18

トーマス・ドルビー - THOMAS DOLBY
トーマス・ドルビー - THOMAS DOLBY


公演初日リポート:THOMAS DOLBY



「彼女はサイエンス(SHE BLINDED WITH ME SCIENCE)」、「HYPERACTIVE!」、坂本龍一と組んだ「FIELD WORK」等、数々の金字塔を残すトーマス・ドルビーが本日まで「ブルーノート東京」に出演しています。鬼才のライヴ・パフォーマンスに接する、本当に貴重なチャンスです。 

長い間ぼくは、トーマスのことを「スタジオ・ワークに徹底的にこだわる、厳格で孤高のミュージシャン」だと思っていました。スタジオにこもり、にこりともせず、膨大な時間をかけて、自分が納得いくまで音を練り上げ、その間、誰もまわりにひとを寄せ付けないというイメージを勝手に持っていました。

しかしどうでしょう、ステージ上のトーマスは終始笑顔でノリノリです。何度か来日していますが、ライヴをするのは初めてとのこと。ファンの前でセッションできて幸せだ、という気持ちが全身から溢れているように感じられます。MCはユーモアとウィットに富み、マイクから離れているときでも「サンキュー」というフレーズを何度も言っていました。トーマスの音楽が魅力的であることは十分に承知していたつもりでしたが、こんなにハッピーで人なつっこい人柄だったとは。ますます彼の存在が身近に思えてきました。デヴィッド・ボウイ、モリッシー、プリファブ・スプラウトらとの絡みでも知られるギターのケヴィン・アームストロング(「彼女はサイエンス」のオリジナル・ヴァージョンにも参加)も、ヴァン・モリソン・バンドにいたドラムスのマット・ヘクターも、トーマスと一緒にプレイするのが心底、楽しそうです。

プログラムはニュー・アルバム『A MAP OF THE FLOATING CITY』からの曲と、往年のビッグ・ヒットをミックスしたものでした。エレクトリック・ドラムスとシンセサイザーが’80年代の空気を運ぶ後者が新鮮に響いたのも嬉しかったですが、個人的には新作の曲がタップリ聴けたことこそ収穫でした。カントリー・ロック風の「ROAD TO RENO」、伝説のジャズ・シンガーであるビリー・ホリデイが夢に出てきたときのことを歌った「LOVE IS A LOADED PISTOL」における暖かなサウンド作りに、ぼくはすっかり魅了されてしまいました。 
トーマスは決して「’80年代のスター」の域にとどまってはいません。今なお第一線で、クリエイティヴな活動を続けているアーティストなのです。彼のパフォーマンスはきっと、爽快な気分を皆さんに与えてくれるはずです。

「この前に出したアルバムは20年ぶりの新作だった。だけど次は、そんなに待たせないからね」とMCで語っていたトーマス。この様子ですと、さらなるニュー・アルバムの発表や、次の来日公演も意外と近いのでは、と思います。
(原田 2012 2.17)


● 2.17fri.-2.18sat.
THOMAS DOLBY


トーマス・ドルビー - THOMAS DOLBY