BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ALFREDO RODRIGUEZ - - report : QUINCY ...

2011/11/25

アルフレッド・ロドリゲス - ALFREDO RODRIGUEZ
ジョー・サンプル-JOE SAMPLE


公演初日リポート:
QUINCY JONES PRESENTS
ALFREDO RODRÍGUEZ TRIO



マイケル・ジャクソン、マイルス・デイヴィス、フランク・シナトラ等とコラボレーションを繰り広げてきた“アメリカ音楽界のボス”、クインシー・ジョーンズが今、最も力をこめて売り出している存在がアルフレッド・ロドリゲスです。

キューバのハバナ生まれ。幼少の頃からピアノをはじめ、名門音楽院を卒業後、2006年にはスイスの世界的ジャズ祭、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演。絶賛を博し、2009年からはアメリカを拠点に世界的な活動を繰り広げています。そんなロドリゲスの最新トリオによる初来日公演が今、ブルーノート東京で行なわれているのです。

ステージにあらわれた彼は、いきなり長時間のソロ・パフォーマンスを展開しました。クラシック〜現代音楽への深い造詣をうかがわせるような、広がりのあるハーモニーと超絶的なテクニックがクラブに響き渡ります。やがてベースのレイニエ・エリザルデ、ドラムスのヘンリー・コールが入り、インプロヴィゼーションにさらに熱が加わります。

ぼくがロドリゲス・トリオのプレイを生で聴いたのは今回が初めてなのですが、まっさきに思い浮かべたのは、どんなラテン系ピアニストの演奏よりも、ボブ・ジェームスのファースト・アルバム『ボールド・コンセプション』でした。そういえばボブもクインシーに認められてレコード・デビューを果たしたひとりです。ロドリゲスもボブ同様、多くのひとに長く愛されるアーティストに成長してゆくのでしょう。

2曲目には大スタンダード・ナンバー「QUIZAS, QUIZAS,QUIZAS」が演奏されました。先日のブルーノート東京でJUJUがヴォーカル・ヴァージョンを聴かせてくれたばかりですが、ロドリゲスはドラマティックに、ときに原曲のハーモニーを変えながらこの曲をプレイします。まるでシンフォニーを聴いているような気分になってくるのですが、このあたりのアレンジ能力もクインシーのお気に召したのかもしれません。

いっぽう、「CU-BOP」では、セロニアス・モンク作「エヴィデンス」に基づく即興演奏が行なわれます。ロドリゲスのプレイにはますます熱が入り、前のめりの姿勢になって、椅子の脚を浮かせながら一心不乱に鍵盤に指を走らせます。ドラムスのヘンリー・コールはシンバルをこすったり、その表面をスティックで強く押しつけるように叩く等、いろんな手法を使って音色にニュアンスを加えていました。

高度なテクニック、恵まれた容姿、いまやトレードマークとなった髪の毛の後ろ結び。輝かしい未来が約束されたも同然のアルフレッド・ロドリゲスは、すでに巨匠への一歩を踏み出しているのかもしれません。要チェックの公演は明日まで続きます。
(原田 2011 11.24)


●11.24thu.-11.26sat.
QUINCY JONES PRESENTS
ALFREDO RODRÍGUEZ TRIO


アルフレッド・ロドリゲス - ALFREDO RODRIGUEZ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , GROOVE CONNECTION - - report : Blue No...

2011/11/23

グルーヴ・コネクション - GROOVE CONNECTION
グルーヴ・コネクション - GROOVE CONNECTION


公演初日リポート:
Blue Note Tokyo presents GROOVE CONNECTION
featuring Neal Evans, Eric Krasno (Soulive), Louis Cato (DMS),
Ohyama "B.M.W" Wataru & Kadota "JAW" Kousuke (PE'Z)
with special guest Orianthi



超豪華セッションが昨日と本日の「ブルーノート東京」を彩ります。

題して、グルーヴ・コネクション。ソウライヴのニール・エヴァンスとエリック・クラズノーの“ぜひ日本でスペシャル・セッションを行ないたい”という呼びかけに応えて、PE'ZのOhyama“B.M.W”WataruとKadota“JAW”Kousuke、マーカス・ミラー・バンド他で活動するルイス・カトが終結、さらに公演直前になって“マイケル・ジャクソン、最後のリード・ギタリスト”として脚光を浴びたオリアンティがスペシャル・ゲストとして参加することが決まりました。このメンバーが集まれば、ノリノリでダンサブル、火の出るようなセッションになることは150%確実です。

オープニングはニール、エリック、ルイスによる“変形ソウライヴ”というべき演奏で始まりました。ニールがキーボードから放つ左手のベース・ラインはますます図太く超人的なものとなり、エリックはチョーキングを交えたプレイで場内を盛り上げます。ソウライヴでデビュー当初は帽子を目深にかぶり、椅子に座って演奏していましたが、現在の彼は帽子をとり、上体を大きく揺らしながら立ってギターを弾きます。ニールとエリックの間に位置するルイスは、ふたりのプレイに絶えず視線を送りながら、タイトなビートを送り出していきます。音色のエッジが立っていて、リズムがうねっています。なるほど、マーカス・ミラーやジョージ・デュークに愛されるわけです。

続く「IS THAT IT?」からはPE'Zのふたりも参加します。これはニールの自作ですが、曲調は、マニアックな言い方を使わせていただくと“ブルーノート4300番台、プレスティッジ10000番台”的な、とことんファンキーなもの。1960年代後半から70年代前半にかけてのアメリカン・ブラック・ミュージックへのリスペクトを感じさせるメロディに、ホーン・セクションの響きがよく似合います。

オリアンティは「CAUSE WE'VE ENDED AS LOVERS」から登場。スティーヴィー・ワンダーの作曲、というよりもジェフ・ベックの名演でおなじみのナンバーですね。彼女はメロディをほぼストレートに奏でながら、しだいにタッピング、アーミング等の技も織り交ぜてゆき、やがて驚きの超絶フレーズ(速すぎて、まるで指が止まっているように見えました)を連発、この曲を自身の色に染め上げました。

エリックとオリアンティ。世界有数のギタリストがふたりいるのですから、どうしてもバトルを期待したくなってしまいます。ラストの「GET BACK」では二人のギターが火を噴きました。一音一音を確実にピッキングするエリックと、一回のピッキングでどれだけ多くの音を出すかを追求しているようなオリアンティ。そのプレイのコントラストが最も際立ったのが、このビートルズ・ナンバーでした。演奏中、互いのギター・フレーズに寄せたエリックとオリアンティの笑顔が、このグルーヴ・コネクションの大成功を象徴していたように、ぼくには感じられました。
(原田 2011 11.22)


● 11.22tue.-11.23wed.
Blue Note Tokyo presents GROOVE CONNECTION
featuring Neal Evans, Eric Krasno (Soulive), Louis Cato (DMS),
Ohyama "B.M.W" Wataru & Kadota "JAW" Kousuke (PE'Z)
with special guest Orianthi


●11.25fri. はモーション・ブルー・ヨコハマにて公演
 ※オリアンティは出演いたしません。

GROOVE CONNECTION - グルーヴ・コネクション


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DIANNE REEVES - - report : DIANNE ...

2011/11/13


ダイアン・リーヴス - DIANNE REEVES
ダイアン・リーヴス - DIANNE REEVES


公演初日リポート:DIANNE REEVES



いきなり昔話で恐縮ですが、ぼくがジャズを本格的に聴き始めて数年たった頃(1980年代半ばのことです)、注目の新人としてデビューを飾ったのがダイアン・リーヴスでした。

初めて聴いたのは確か夏のジャズ・フェスティヴァルのFM中継だったと思いますが、「なんてすごいシンガーが現れたんだろう」と驚いたことを覚えています。太く豊かな歌声、幅広い声域、狭い意味でのジャズにこだわらないレパートリー、まるで管楽器のように響くスキャット。歌いながらバンド・メンバーを紹介するところも斬新でした(もっともその後、ぼくは彼女が10年近く様々なグループでバック・ヴォーカリストを務めていたことを知るのですが)。

そのフェスティバルから間もなく、ダイアンはジャズ・ヴォーカル界の人気をダイアン・シューアと二分するニュー・スターとなり、その後カサンドラ・ウィルソンが“ふたりのダイアン”に続きました。21世紀も10年が過ぎてしまいましたが、両ダイアン、そしてカサンドラは当時よりさらに充実した活躍を繰り広げています。嬉しいものです。

そんなダイアン・リーヴスが、本当に久しぶりに「ブルーノート東京」に登場しています。アルバム・リリースも『ラヴィン・ユー(When You Know)』以来、ちょっとごぶさたですが、相変らず忙しく世界をツアーしているようで、リズ・ライト、アンジェリーク・キジョーとの合同コンサート(ミリアム・マケーバ、アビー・リンカーン、オデッタに捧げた)も大好評だったということです。今回の公演のバックはピーター・マーティン(ピアノ)、ピーター・スプラーグ(ギター)、クリス・トーマス(ベース)、テリオン・ガリー(ドラムス)という、さすがの凄腕たち。それぞれが一流のアドリブ・プレイヤーであるだけに、殆どの曲で彼らのソロも大きくフィーチャーされました。

ダイアンは、決してメロディを譜面どおりに歌うタイプのシンガーではありません。旋律は一度彼女の体内に入り、“ダイアン節”に変換されて飛び出します。マイクと口の距離のとり方にも尋常ではないこだわりがあるようで、フレーズによってはマイクを思いっきり近づけて歌ったり、別のフレーズではお腹の下ぐらいまでマイクを離して生の声を客席に届かせたりと多彩です。レパートリーも相変らずバラエティに富んでいて、サックス奏者ジジ・グライスの隠れ名曲「SOCIAL CALL」(かつてアーネスティン・アンダーソンが歌っていました)からタンゴ〜ボレロ風の「TANGO DU JOUR」、アニ・ディフランコのカヴァー「32 FLAVORS」等を楽しませてくれました。

客席はもちろん超満員。おそらく80年代当時からのファンも相当つめかけたことでしょう。今回の公演では、エンディングにユーモラスな仕掛けもあります。ミュージシャンがどのようにステージから去っていくのか。それも楽しみにしながら、いらしていただければと思います。
(原田 2011 11.13)


●11.13sun.-11.15tue.
DIANNE REEVES


●11.17thu. はコットンクラブにて公演




ダイアン・リーヴス - DIANNE REEVES


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL CAMILO , TOMATITO - - report : MICHEL ...

2011/11/09

MICHEL CAMILO -ミシェル・カミロ
MICHEL CAMILO -ミシェル・カミロ


公演初日リポート:MICHEL CAMILO & TOMATITO



名盤『スペイン』、『スペイン・アゲイン』を生んだラテン・グラミー賞コンビ、ミシェル・カミロ&トマティートが白熱のライヴを行なっています。

ぼくは初日のファースト・セットに駆けつけましたが、「いきなりこんなに盛り上げるのか」と驚いてしまうほどのパフォーマンスでした。アコースティック・ピアノとアコースティック・ギターの組み合わせだけで、ここまで起伏に富んだ演奏を行ない、観客を熱狂させることのできるミュージシャンは本当に稀だと思います。

オープニングはアストル・ピアソラの「LIBERTANGO」。いきなりおいしいところがファンの前に届けられた、という印象を受けました。聴こえてくる音はピアノとギターなのに、ぼくは確かにバンドネオンの響きを感じました。トマティートは上半身をほとんど動かさずに弾きます。ただ指だけが楽器の上を舞うのです。

ステージではその他、カミロのオリジナル曲「TWILIGHT GLOW」、ビル・エヴァンスの「WALTZ FOR DEBBY」とジャズのスタンダード曲「STELLA BY STARLIGHT」のメドレー、「FUGA Y MISTERIO」(フーガと神秘)などが次々と登場しました。カミロのピアノは尋常ではない強弱のニュアンスに富み、この楽器が“ピアノフォルテ”という名称であったことを思い起こさせてくれます。

トマティートは右手のすべての指を駆使して、ナイロン弦のギターから歌うようなフレーズを紡ぎ出します。基本的にカミロのほうを見て弾いているので、殆どの観客は彼の正面ではなく横顔を見ることになるのですが、この横顔がまた、なんとも絵になるのです。俳優としても活動しているという話をきくと「なるほど」とうなずけます。「トマトちゃん」というかわいい芸名と、卓越した演奏、そして渋みのあるルックスのコントラストもまた、彼の魅力といっていいでしょう。

本編ラストでは、チック・コリアの大定番「LA FIESTA」が登場。過去、多くのミュージシャンがとりあげてきたナンバーですが、なにしろ作者自身のヴァージョンが偉大すぎるため、意外と独創的な解釈は少ないような気がします。しかし、このふたりの演奏は例外です。「これが俺たちのラ・フィエスタなんだ」という声が聞こえてきそうな、入魂のプレイでした。思えばカミロとトマティートのコンビは発足当時、チックとパコ・デ・ルシアのそれに比べられたこともありました。しかし今の彼らは、もうどのピアノ〜ギター・コンビとも比較できないほどワン&オンリーの世界を確立しています。

ブルーノート東京のホームページを見ると、この日のセカンド・セットではまったくといっていいほど別の曲が演奏されたことがわかります。なにしろ幅広いレパートリーを持つカミロとトマティートです。本日以降のステージでは、いったい何が飛び出すのか。わくわくしながらライヴを楽しもうではありませんか。
(原田 201111.9)


●11.8tue.-11.12sat.
MICHEL CAMILO & TOMATITO


ミシェル・カミロ - MICHEL CAMILO


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ERNEST RANGLIN , JAMAICA JAZZ , MONTY ALEXANDER , SLY & ROBBIE - JAMAICA JAZZ featu...

2011/11/04

アーネスト・ラングリン - ERNEST RANGLIN
アーネスト・ラングリン - ERNEST RANGLIN


公演初日リポート:JAMAICA JAZZ
featuring ERNEST RANGLIN, MONTY ALEXANDER and SLY & ROBBIE
@COTTON CLUB



アーネスト・ラングリン、モンティ・アレキサンダー、スライ・ダンバー、ロビー・シェイクスピア。

名前を見るだけで体が動きだしてくる、というファンも多いことでしょう。彼らがジャマイカ・ジャズという名前のユニットを組んで来日中です。昨日と本日は「コットンクラブ」、5日から7日までは「ブルーノート東京」で公演します。モンティはスライ&ロビーと共演アルバムを残していますし、ラングリンとのレコーディングも数え切れません。しかしこの4人が揃って同じ舞台に立つことは世界的にも珍しく、しかもそれが東京のクラブで実現するとは、はっきりいって「奇跡」です。よくぞ全員のスケジュールが合ったものだと思います。

モンティはピアノのほか、鍵盤ハーモニカやキーボードも演奏します。フランク・シナトラに「まるで火薬庫のようなピアノ」と呼ばれたプレイは今も健在で、タッチの力強さ、音の切れ味の鋭さには感嘆させられるばかりでした。いわゆるストレートなジャズを演奏するときは、クラシックからの影響も強く感じさせることのあるモンティですが、この日のステージではひとりのジャマイカン・ボーイに戻ってセッションを楽しんでいたようです。

アーネストはスカ草創期から活動するギタリスト。ただそこにいるだけで皆を笑顔にすることができる素敵なキャラクターの持ち主です。ジミー・クリフの歴史的な初来日公演にも同行していますが、今回はジャマイカ風ジャズ・ギターの真髄を味わわせてくれました。ユーモラスなアドリブも最高ですが、さらに圧巻なのは、リズムの刻みです。カタカナにするとンッチャッ、ンッチャッ、という感じですが、その文字と文字の間に、絶対に文字化不可能なグルーヴがつまっているのです。

そして、彼らの即興演奏を支えるのが、レゲエ界のボスというべきスライ&ロビーのリズム・チームです。地を這うようなロビーのベース、スネア・ドラムの上でスティックを転がすように演奏しながらソリストを盛り上げるスライ。彼らの鉄壁のサポートがあったからこそ、モンティもアーネストも、あそこまで奔放なアドリブを繰り広げることができるのでしょう。レパートリーもスカタライツ縁の曲からラムゼイ・ルイスの大ヒット「THE IN CROWD」まで、もりだくさん。ジャム・セッション的な乗りもたっぷりあって、エンディングは殆どメンバーのアイ・コンタクトで決まっていたようです。

百戦錬磨の4人がおくる、飛び切りエキサイティングなセッションにぜひお越しください!
(原田 2011 11.3)


● 11.5sat.-11.7mon. @BLUE NOTE TOKYO
JAMAICA JAZZ
featuring ERNEST RANGLIN, MONTY ALEXANDER and SLY & ROBBIE


●11.3thu.-11.4fri. はコットンクラブにて公演



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