BlueNote TOKYO
ARCHIVE 2012/08

2012/08/31

MINGUS BIG BAND - - report : MINGUS ...

MINGUS BIG BAND - ミンガス・ビッグ・バンド
MINGUS BIG BAND - ミンガス・ビッグ・バンド


公演初日リポート:
MINGUS BIG BAND
-Charles Mingus 90th Birthday Celebration-



この2012年は、偉大なベーシスト/作曲家であるチャールズ・ミンガスの生誕90周年にあたります。それを記念して、彼の楽曲を継承するミンガス・ビッグ・バンドの公演が昨日から行なわれています。この精鋭集団が前回、ブルーノート東京に登場したのは2005年のこと。その模様はCD『ライヴ・イン・トーキョー』にばっちり捉えられていますが、7年ぶりの来日となる今回のステージではメンバーが大幅に入れ替わり、さらにパワフルでコクのあるサウンドが生まれているように感じました。

とにかく、メンバーがすごいのです。トランペットのアヴィシャイ・コーエン(ベーシストとは別人)、ジェレミー・ペルト、トロンボーンのロビン・ユーバンクス、サックスのジェイソン・マーシャル、ウェイン・エスコフェリー、エイブラハム・バートン(今回はテナーではなくアルトに専念)、ドラムスのドナルド・エドワーズといったニューヨークきっての凄腕たち、すでに何枚もリーダー・アルバムを出している一線級のミュージシャンがずらりと集まって、ファンキーでドラマチックなミンガス・ナンバーを演奏するのですから、これが興奮せずにいられましょうか。「ああ、彼らが日本にいる間、ニューヨークのジャズ・シーンはずいぶん淋しいことになっているだろうなあ」と、ぼくは余計な心配をしてしまいました。

オープニング・ナンバーは「 HYPERLINK "http://www.metrolyrics.com/es-flat-ahs-flat-too-live-lyrics-charles-mingus.html" E'S FLAT, AH'S FLAT TOO」です。ミンガス自身は『ブルース&ルーツ』というアルバムで初演し、その後「 HYPERLINK "http://www.metrolyrics.com/hora-decubitus-lyrics-elvis-costello.html" HORA DECUBITUS」と改題して『ミンガス、ミンガス、ミンガス、ミンガス、ミンガス』というアルバムで再演しています。

しかしミンガス・ビッグ・バンドは、作者の残したレコードに入っている音を再現するわけではありません。新たにアレンジをほどこし、気鋭たちのソロを存分にフィーチャーしながら、21世紀のミンガス・サウンドを演出するのです。この曲ではジェイソン・マーシャルのバリトン・サックスが火を噴き(オリジナル・ヴァージョンのペッパー・アダムスに似せようとしていないところにも好感が持てます)、それをアレックス・シピアギンのトランペットが受け継ぎ、ヘレン・サンのピアノがクライマックスを演出し、その後ボリス・コズロフのベースとドナルド・エドワーズのドラムスが激しいチェイスを演じる、という実にホットなものでした。その後も「FABLES OF FAUBUS」、「GOODBYE PORKPIE HAT」等が次々と登場し、場内を沸かせました。

意外に思われるかもしれませんが、生前のチャールズ・ミンガスはレギュラーのビッグ・バンドを持ちませんでした(レコーディングされた大編成作品は、すべてそのために組織されたものです)。しかしミンガス・ビッグ・バンドはもう20年以上もの歴史を持っています。天国の御大は、どんな表情で彼らのサウンドに耳を傾けていることでしょう。
(原田 2012 8.30)


● 8.30thu.-9.2sun.
MINGUS BIG BAND
-Charles Mingus 90th Birthday Celebration-
☆ 参考:セットリストはこちら


MINGUS BIG BAND - ミンガス・ビッグ・バンド


2012/08/28

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PABLO CRUISE - - report : PABLO C...

パブロ・クルーズ - PABLO CRUISE
パブロ・クルーズ - PABLO CRUISE


公演初日リポート:
PABLO CRUISE


爽快なライヴでした。再び日本でプレイできることを喜ぶメンバーの気持ちと、久しぶりの来日公演を待ちわびていたファンの気持ちが、会場の中でとけあって、実に実に熱い雰囲気を生み出していました。

カリフォルニアが生んだサーフ・ロックの雄、パブロ・クルーズの再来日公演です。前回、来日したのはなんと、今から33年も前の1979年。ぼくは残念ながら“パブロ・クルーズ世代”ではありません。しかし後追いで「LOVE WILL FIND A WAY」や「WHATCHA GONNA DO ?」といったナンバーを聴き、親しみやすいメロディ・ライン、タイトなリズム、厚みのあるハーモニーに魅了されました。そして、「こういう曲を聴きながら海辺をドライヴしたり、サーフィンしたら最高の気分だろうな」と思ったものです(免許もサーフボードも持っていないのに)。

場内が暗くなり、往年の映像がスクリーンに映し出されます。パブロ・クルーズの栄光の歴史、といったところでしょうか。やがてメンバーがステージにあがり、’78年のアルバム『WORLDS AWAY』のタイトル曲を演奏します。オリジナル・メンバーのデヴィッド・ジェンキンス、コーリー・レリオス、スティーヴ・プライスが、手の届くような距離で一同に並ぶ姿は壮観です。もちろん‘70年代に比べて、ルックスは格段に渋くなっています。デヴィッドの髪の毛はかなり白くなっています。しかしメンバーのヴォーカルやハーモニーの魅力は、まったく色あせていません。演奏テクニックに関しては、往年よりもさらに良くなっているのではないかとも思いました。徹底的に磨き抜かれた“バンドの音”に、ぼくは聴きほれるばかりでした。

2010年から加入しているベースのラリー・アントニーノも、すっかりバンドにとけこんでいます。5弦ベースを縦横無尽にあやつる彼のプレイは、間違いなく現パブロ・クルーズのグルーヴ感に貢献しているといっていいでしょう。歌声も実に渋く、味があります。デヴィッド、コーリー、そしてラリーと、リード・ヴォーカルをとれるシンガーが3人も揃っているところも、今のグループの大きな魅力です。

歌よし、演奏よし、雰囲気よし。とにかく楽しいひとときを味わわせていただきました。「パブロ・クルーズ? 聞いたことがない名前だなあ」というひともいらっしゃるかもしれませんが、ぜひライヴにお越しください。「ああ、この曲、知ってる。これ、パブロ・クルーズの歌だったんだ」と、なるに違いないからです。
(原田 2012 8.27)


● 8.27mon.-8.29wed.
PABLO CRUISE
☆ 参考:セットリストはこちら


パブロ・クルーズ - PABLO CRUISE


2012/08/18

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 矢野顕子 - - report : AKIKO Y...

AKIKO YANO - 矢野顕子
AKIKO YANO - 矢野顕子


公演初日リポート:
AKIKO YANO TRIO
featuring WILL LEE & CHRIS PARKER



今年もこの季節がやってきました。ニューヨーク在住、唯一無二の音楽道を歩み続けるシンガー・ソングライター/ピアニストの矢野顕子が、ゆかいな仲間たちを引き連れて行なう「ブルーノート東京」里帰り公演です。

ベース&ヴォーカルのウィル・リー、ドラムスのクリス・パーカーとのコンビネーションは“鉄壁”のひとことに尽きます。彼女がMCをしているときに、ウィルが「どんなことをしゃべっているの?」と英語で茶々を入れていましたが、演奏を聴く限りでは、ウィルもクリスも日本語を理解して演奏しているとしか思えません。それほど彼らは矢野顕子が歌う日本語歌詞の微妙なニュアンスを捉え、これ以上ないほど絶妙なサポートを聴かせてくれるのです。「あと25年間はこの3人で演奏していたいね」とウィルは語っていましたが、それは全メンバー、全オーディエンスに共通する願いでもありましょう。

ぼくが接した初日ファースト・セットは、2002年発表のシングル「Dreaming Girl」から始まりました。続いて最新ライヴ・ベスト盤『荒野の呼び声 -東京録音-』に入っている「こんなところにいてはいけない」、20年来のレパートリーである「いいこ いいこ」と続きます。「ウィルとクリスと一緒のライヴで、こんなに日本語の曲が続いたことは珍しいのでは?」と思っていると、次に英語詞の「Full Moon Tomorrow」が飛び出しました。途中に、RCサクセションの「多摩蘭坂」(日本語)を挿入しながらの展開は、まるで組曲のようです。ヴォーカルとピアノが絡み合い、渦を巻くようなグルーヴを生み出します。

今回のライヴでは、いわゆるピアノ弾き語りのほかに、スタンド・マイクを使ったパフォーマンスも見ることができました。ブラッシュ・ワークを駆使したドラムスだけをバックに前半を歌いきった「Spring Spring Spring」、やはり前半をドラムスとのデュオで構成し、自由奔放なスキャットを繰り広げた「ポケットいっぱいの秘密」は、ただでさえ多彩なプログラムに、さらなる変化を付け加えていたと思います。

そしてアンコールでは、近年のライヴでは定番となった感のある「People Got To Be Free」と「Gasoline And Matches」を披露。ウィルと息の合ったヴォーカル・デュオを聴かせてくれました。公演は22日まで続きます(20日はオフ)。各セット、いったいどんな曲で楽しませてくれるのか。ますます期待が高まります。
(原田 2012 8.18)


● 8.18sat.-8.22wed.(8.20mon.OFF)
AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER
☆ 参考:セットリストはこちら


AKIKO YANO - 矢野顕子


2012/08/13

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOYCE - - report : JOYCE @...

ジョイス - JOYCE
ジョイス - JOYCE


公演初日リポート:
JOYCE @COTTON CLUB



ボサ・ノヴァ第二世代を代表する歌姫、ジョイスが今年も涼やかでスタイリッシュなステージを繰り広げています。メンバーは公私共にパートナーをつとめるトゥチ・モレーノ(ドラムス)、そしてエリオ・アルヴェス(ピアノ)、ロドルフォ・ストロエテール(ベース)といった気鋭たち。昨日と本日は「コットンクラブ」、明日あさっては「ブルーノート東京」への登場です。ぼくは「コットンクラブ」の初日に行きました。

「今回の公演は私にとって特別なの」と、ジョイスはMCで語りました。その理由のひとつは、最新作『トゥード』が、彼女にとって10数年ぶりのオリジナル曲集であること。そしてもうひとつは、ここからのレパートリーを中心としたライヴを披露するのが世界で初めてであること。「私たちのプレミア・パフォーマンスを見にきてくれてありがとう」といいながら、ジョイスはニュー・アルバムからの曲を快調に続けました。人懐っこいメロディ、軽快なリズム、うっとりするようなハーモニー。新曲ではあるのですが、まるでずっと昔からそばで鳴っていたかのような親しみやすさに溢れている・・・・そこが彼女の曲作りの魅力です。

ジョイスはギターを弾きながら歌いますが、いわゆるギター・ソロはとりません。間奏部分は、エリオがほぼ一手に担当します。以前にも書いたと思いますが、60年代のハービー・ハンコックを思わせる清新なピアノ・プレイは、現ジョイス・グループの大きな魅力のひとつです。彼のタッチの中には、ブラジル音楽のリズム感、そしてジャズのハーモニー感覚が絶妙に溶けあっているのです。

もちろん新曲だけではなく、これなくしてジョイスは語れないといってもいい「FEMININA」や、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「AGUAS DE MARCO」、「DESAFINADO」なども披露。年季の入ったファン、最近ジョイスを知ったばかりのリスナー双方を深く満足させるプログラミングだったと思います。それにしてもジョイスとトゥチはいつも本当に、見ていてうらやましくなるほどラブラブです。
(原田 2012 8.12)


JOYCE
● 8.12sun.- 8.13mon. @COTTON CLUB


● 8.14tue.-8.15wed. @BLUE NOTE TOKYO





'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JUJU - - report : JUJU JA...

JUJU
JUJU


公演初日リポート:
JUJU
JAZZ TOUR 2012 〜DELICIOUS〜



「奇跡を望むなら...」、「明日がくるなら」、「ただいま」など数多くのヒット曲を持つ人気シンガー、JUJU。彼女はまた、大のジャズ・ファンであり、12歳の頃には既にジャズ・シンガーを目指していたそうです。

そんな彼女が、溢れるほどのジャズ愛を盛り込んだアルバムこそ、昨年11月リリースの『DELICIOUS』でした。お気に入りのスタンダード・ナンバーを歌うJUJUのヴォーカルには、ジャズ・シンガーとしてステージに立つ喜びが満ち溢れていました。「ブルーノート東京」では“JUJUの日”(10月10日)に、アルバム発表に先駆けたライヴを開催しましたが、当日会場につめかけたオーディエンスの誰もが、JUJUの持つジャズへの情熱に心を揺さぶられたに違いありません。

彼女がブルーノート東京に登場するのは、それ以来約10ヶ月ぶり。「よくこんな売れっ子ミュージシャンを一同に集めたものだ」と驚かずにはいられない凄腕たちをバックに、前回以上にリラックスしたパフォーマンスを楽しませてくれました。『DELICIOUS』からの曲だけではなく、新たなレパートリーを味わうことができたのも嬉しかったですね。どんな曲がとりあげられたのかはライヴにいらっしゃった方のお楽しみですが、ペギー・リー、サラ・ヴォーン、ジュリー・ロンドン、ナンシー・ウィルソン等の名唱が残っているナンバーも、しっかりJUJUの個性に染め上げられているあたり、見事です。

伴奏の編成は4ホーン、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスというものでしたが、島健の卓越したアレンジは、それをビッグ・バンドのような厚さで響かせます。かと思えばピアノとアコースティック・ギターだけをバックにしっとりと歌う曲もあり、とにかく一瞬も退屈させません。

加えてJUJUのMCがまた実に面白いのです。次に歌う曲の歌詞を説明するのですが、その語り口、間合いが心憎いほど絶妙で、ぼくは「彼女はお笑いに行っても絶対に成功しただろう」と思いました。JUJUのトークを介することで、何十年も前にアメリカで作られた英語の曲が、ぐっと親しいものとなって私たちに近づいてくるのです。

公演は13日、16日にも行なわれます。今後も彼女のジャズ・ライヴが定期的に続けられることを願ってやみません。
(原田 2012 8.12)


● 8.12sun.-8.13mon., 8.16thu.
JUJU
JAZZ TOUR 2012 〜DELICIOUS〜
☆ 参考:セットリストはこちら


JUJU


2012/08/09

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , INCOGNITO - - report : INCOGNI...

インコグニート - INCOGNITO
インコグニート - INCOGNITO


公演初日リポート:
INCOGNITO with special guest LEON WARE



ブルーノート東京に欠くことのできない存在、ブルーイ率いるインコグニートが今年も最高にハッピーでファンキーなステージを届けに来てくれました。

思えば昨年3月の震災後、公演をキャンセルすることなく日本にやってきて、音楽の力で多くの人々を勇気づけたのもインコグニートでした。そしてブルーイ自ら数多くのミュージシャンに呼びかけて、チャリティ・ソング「Love Will Find A Way」を完成させました。彼の中には、常に“LOVE”というキーワードがあります。音楽に対する愛、人々に対する愛、地球に対する愛・・・その“愛”に共感する人々は今なお増える一方。立錐の余地もないほどの超満員の中、最新のインコグニート・サウンドが響き渡りました。

メインはもちろん、ニュー・アルバム『SURREAL』からのレパートリーです。まだ22歳の若さというパーカッション奏者、ジョアン・カエターノを含むバンドのノリはどこまでも磨きぬかれ、ブルーイのリズム・ギターも相変わらず冴え渡っています。モー・ブランディス、ヴァネッサ・ヘインズ、ナタリー・ウィリアムスという3人のシンガーたちはソロで歌っても、ハーモニーを聴かせても極上。あらためてブルーイのタレント・スカウト能力の高さに感心させられます。

そして、今回のライヴには、マイケル・ジャクソンやマーヴィン・ゲイに曲を提供し、ソロ・シンガーとしても数多くの名盤を発表しているリオン・ウェアがスペシャル・ゲストとして参加。ブルーイはリオンを「音楽の天才」と賞賛し、「彼と共演することがインコグニート全員の夢だった」と興奮を隠しません。そしてアンコールでは、リオンがマーヴィン・ゲイと共作した名曲中の名曲「I WANT YOU」が披露されました。リオンとインコグニートは、まるで何十年もの知り合いだったかのように、まとまりのあるアンサンブルを聴かせます。ブルーイは続けて、こう言いました。「この曲を、世界中でいろんなひとが歌い、演奏してきたと思う。だけどその作者と一緒に、しかも同じステージでプレイできるチャンスは、めったにない。夢が東京で叶ったんだ!」。

公演は11日まで続きますが、リオンは12月に再びブルーノート東京に戻ってきて音楽生活50周年記念ライヴを開催します。スペシャル・ゲストはシャンテ・ムーア。今からわくわくしてくるじゃないですか。
(原田 2012 8.9)


● 8.8wed.-8.11sat.
INCOGNITO with special guest LEON WARE
☆ 参考:セットリストはこちら


インコグニート - INCOGNITO


2012/08/06

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , COUNT BASIE ORCHESTRA , KEIKO LEE - - report : THE LEG...

カウント・ベイシー・オーケストラ - COUNT BASIE ORCHESTRA
カウント・ベイシー・オーケストラ - COUNT BASIE ORCHESTRA


公演初日リポート:
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
with special guest KEIKO LEE



ことしでなんと、結成77年目。ビッグ・バンド・ジャズの基本を形作り、今なお休むことなく活動を続けるカウント・ベイシー・オーケストラが、真夏のブルーノート東京をスインギーに彩っています。

今回のコンダクターは、テナー・サックス奏者のダグ・ミラー。ジョー・ヘンダーソンに奏法を師事し、その後バークリー音楽大学、ニューイングランド音楽院でも学びました。ベイシー・オーケストラには1989年から在籍し、そのほかジョージ・ラッセル、ライオネル・ハンプトン等のオーケストラでも演奏経験があります。これまでの歴代コンダクターはステージ中央に立って指揮をしていましたが、ダグはいつものようにサックス・セクションに陣取り、その場所から立ってメンバーに指示を与えます。またMCはトランペット奏者のスコッティ・バーンハートが一貫して担当しました。

デニス・マクレルが指揮していた頃と比べると、より1950年代のレパートリーに比重が置かれていたような気がします。伝統的なカンザス・シティ・スイングにモダン・ジャズの要素を加えた、いわゆる“新約聖書バンド”時代に立ち返ったようなサウンドを楽しむことができました。クリーヴ・ガイトンのフルートをフィーチャーした「CUTE」、バンドが一丸となって火の出るようなプレイを繰り広げる「THE KID FROM RED BANK」、サックス奏者アーニー・ウィルキンス書き下ろしの傑作「16MEN SWINGING」など、ベイシー・ファンなら誰でも知っているであろう古典が、目の前で鮮やかに再生されてゆくのは、とにかく快感というしかありません。

中盤ではスペシャル・ゲストのケイコ・リーが、万雷の拍手に迎えられて登場しました。ベイシー楽団と共演したシンガーを振り返れば、ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、フランク・シナトラ、トニー・ベネットなど錚々たる面々の名が挙がります。そこにケイコ・リーも日本代表として名を連ねたわけです。演目は「NIGHT AND DAY」を始めとするスタンダード・ナンバーばかり。「こんな素敵なバンドをバックに歌えるなんて、本当に気持ちいいだろうな」と思いました。

後半にはもちろん、おなじみの「ONE O'CLOCK JUMP」や「APRIL IN PARIS」も登場しましたが、「ONE O'CLOCK JUMP」をエンディング・テーマ扱いで数コーラスだけ演奏するのではなく、各人のアドリブをフィーチャーしながらたっぷりと聴かせてくれたのも嬉しかったですね。品質は保証つき、いつもゴキゲンなベイシー・サウンドをライヴで聴いて猛暑を吹き飛ばしましょう!
(原田 2012 8.5)


● 8.5sun.-8.7tue.
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
with special guest KEIKO LEE
☆ 参考:セットリストはこちら


カウント・ベイシー・オーケストラ - COUNT BASIE ORCHESTRA


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