BlueNote TOKYO
ARCHIVE 2012/12

2012/12/29

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NILE RODGERS & CHIC - - report : NILE RO...

ナイル・ロジャース - NILE RODGERS
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公演初日リポート:NILE RODGERS & CHIC



2012年も楽しいこと、面白いこと、つらかったことなどなど、たくさんの出来事がありました。楽しさ、面白さを何倍にも増幅して、つらさや悲しさを吹き飛ばしてくれるライヴが、「ブルーノート東京」の年末年始を飾ります。ナイル・ロジャース&シックのステージです。

このところずっと、桜の季節に来日していた彼らですが、その時のMCでナイルは「今度は年末年始に帰ってくるよ!」と力強く宣言しました。そして今、彼は東京で、完全燃焼を繰り返しています。さすが有言実行の男、ナイルです。

「今日の曲はすべて私が書いて、プロデュースしたビッグ・ヒットばかりなんだ」というトークは、いまや定番といっていいでしょうが、もちろんその言葉に偽りはありません。世界的というか地球的というか、とにかく一世を風靡したナンバーが出るわ出るわ・・・。マドンナに提供した「LIKE A VIRGIN」、ダイアナ・ロスに提供した「I’M COMING OUT」、 デュラン・デュランに提供した「NOTOROIUS」、シックを象徴する「LE FREAK」、「GOOD TIMES」等、有名曲が次から次へと、惜しげもなく飛び出します。

ひょうきんなキャラクターを持ったドラマーのラルフ・ロールがコクのある歌声を聴かせるデヴィッド・ボウイのカヴァー「LET’S DANCE」における場内の盛り上がりも、ハンパではありません。もちろんナイルのファンキーなギター・カッティングは「常に」といっていいほど炸裂を続け、そこにラルフの強靭なドラムス、ジェリー・バーンズの骨太なスラッピング・ベースが絡み合ったときの快感は、とうてい言葉にすることができません。

厚みのあるホーン・セクション、けっして前面に出ることはないものの、サウンドの要をしっかり押さえているキーボード。そしてどんなタイプの曲も歌いこなしてしまう女性シンガーたち。ナイルは本当に良いバンドを率いているなあと、いつもながら思います。あまりのボルテージの高さに、ぼくは「初日からこんなに飛ばしちゃっていいのか」と圧倒されてしましたが、来たるカウントダウン、ニューイヤーに向けて、ナイル・ロジャース&シックのパフォーマンスはさらに熱を帯びていくことでしょう。

彼らのファンキー・サウンドに体を揺らしながら、2012年を笑顔で見送り、2013年を思いっきりポジティヴに迎えようではないですか!
(原田 2012 12.28)


● 12.28fri.-2013 1.2wed.(1.1tue.OFF)
NILE RODGERS & CHIC
☆ 参考:セットリストはこちら


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2012/12/25

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RITA COOLIDGE - - report : RITA CO...

リタ・クーリッジ - RITA COOLIDGE
リタ・クーリッジ - RITA COOLIDGE


公演初日リポート:
RITA COOLIDGE



クリスマスを飾る円熟の歌声。2度のグラミー賞に輝くリタ・クーリッジが今、ここブルーノート東京で、飛び切りのステージを繰り広げています。

「WE'RE ALL ALONE」や「YOUR LOVE HAS LIFTED ME HIGHER AND HIGHER」など数多くのヒットを持つ彼女は同時に、全米チャートのポップ部門、カントリー部門、ジャズ部門、アダルト・コンテンポラリー部門に登場したことのある稀有な存在です。どんなタイプの曲もリタ節で歌いこなしてしまう、文字通りの“ザ・シンガー”といえましょうか。そんな彼女の最新作は『RITA COOLIDGE CHRISTMAS』 というクリスマス・アルバム。そこからのレパートリーも含むライヴを、目の前で届けてくれるのですから、本当に朗報です。

“ザ・デルタ・レディ、リタ・クーリッジ!”というMCに導かれて登場したリタはまず、ジャズのスタンダード曲「COME RAIN OR COME SHINE」から歌い始めました。声質はまったく違いま すが、あえてフラット気味の音を出して、そこからグリッサンド風にその音の位置に声をもっていくあたりや、繊細なマイク・コントロールに、ぼくはなぜかヘレン・メリルを思いだしました。続いては、お待ちかねの「SUPERSTAR」。カーペンターズのカヴァー・ヴァージョンでも有名ですが、もともとはリタが歌って人気を博したナンバーです。3曲目からはクリスマス・ナンバーも次々に登場します。「SANTA CLAUS IS COMING TO TOWN」はなんと、ニューオリンズ・ファンク風のリズムで解釈。“クリスマス=冬=寒い=しんみり”というイメージを裏切る、熱いパフォーマンスでした。

かつて公私共にパートナーであったクリス・クリストファーソン絡みのナンバーでは、「LATE AGAIN (GETTIN' OVER YOU)」が光りました。音楽監督も兼ねるジョン・マク ダフィーのギターも冴え渡っています。また、ドラムスのリン・コールターは「BABY IT'S COLD OUTSIDE」でドラムの席から離れ、スタンド・マイクでリタとデュエットを聴かせてくれました。「彼は素晴らしいシンガーなの」とリタが紹介した通り、かすれ気味の、実に渋くていい声をしています。リンはまた、曲によっては片手に2本のスティックを持ったり、スティックとマラカスを同時に持ったり、左手でボンゴを叩き右手でドラムスを叩く等、いろんな技でバンドを盛りあげていました。

クライマックスはもちろん、「WE'RE ALL ALONE」と「YOUR LOVE HAS LIFTED ME HIGHER AND HIGHER」。「往年のヒット曲を歌うことに飽きてしまった」というシンガーも少なくない中、今もリタは、このレパートリーを大切に歌い、待ちわびていたオーディエンスに感銘を与えています。これは本当に素晴らしいことだと思うのです。
(原田 2012 12.24)


● 12.24mon.-12.26wed.
RITA COOLIDGE
☆ 参考:セットリストはこちら


RITA COOLIDGE - リタ・クーリッジ


2012/12/22

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOHN PIZZARELLI - - report : JOHN PI...

ジョン・ピザレリ
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公演初日リポート:JOHN PIZZARELLI



クリスマス・シーズンにふさわしい、心も体もホンワカと暖まるライヴが開催されています。イタリア系の伊達男、ジョン・ピザレリ(本人は「ピッツァレーリ」と発音)のステージです。

メンバー全員、スーツ姿がビシッと決まっています。CDではどちらかというとヴォーカリストとしての面が強調されているところもなくはないジョンですが、生演奏ではギター・プレイも満喫させてくれます。7弦ギターを縦横無尽に弾きまくり、コード奏法も、オクターヴ奏法も、ハーモニクス奏法も思いのまま。長い指、大きな手で、ドライヴ感あふれるフレーズを易々と弾きこなします。彼の父親は伝説の名ギタリスト、バッキー・ピザレリ。子供の頃から音楽漬けだったジョンにとって、ギターはもう、身体の一部なのでしょう。

ジョンは「声量豊かに朗々と歌いあげる」というよりは、「目の前のひとに語りかけるように、サラリと粋に歌う」タイプです。だから共通する芸風であるボビー・トゥループの持ち歌「LEMON TWIST」あたりとは、120%の相 性の良さを示します。かと思えば、フランク・シナトラの人気曲「RING-A-DING DING!」も見事、ジョン・ピザレリ流に料理。もちろん威風堂々たるシナトラ・ヴァージョンも素晴らしいですが、ギターとスキャットのユニゾンで疾走するジョンの解釈も絶妙です。ピアノの後ろで聴かせるリズム・ギターも、さすがの歯切れよさでしたし、弟マーティン・ピザレリのベースも相変わらず、いい音を出しています。

中盤ではデューク・エリントン作の「IN A MELLOW TONE」と「SATIN DOLL」を快演。前者は最近、リバイバルしているのでしょうか、マッコイ・タイナーや山中千尋も「ブルーノート東京」公演でプレイしていましたね。ジョンは前半、ヴォーカル+ベース+ドラムスという編成でこなし、途中からピアノとギターが入るというユニークなアレンジで楽しませてくれました。

また後半では、ファンからのリクエストに応えて「I LIKE JERSEY BEST」を披露。“もしこの曲をザ・フーやボブ・ディランやザ・ポ リスが歌ったら”というギャグでは、場内が大爆笑。ジョンは本当に愉快なキャラクターの持ち主です。かと思えば、続く「WHITE CHRISTMAS」や、アンコールにソロで演じた「POLKA DOTS AND MOONBEAMS」ではしっとりとジェントルに、二枚目路線を貫きました。ギターも歌もうまくて、ひょうきんで、しかもハンサム。天はジョン・ピザレリに二物以上のものを与えたのです。
(原田 2012 12.21)


● 12.21fri.-12.23sun.
JOHN PIZZARELLI
☆ 参考:セットリストはこちら


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2012/12/18

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA - - report : IMARIA ...

マリア・シュナイダー - MARIA SCHNEIDER
マリア・シュナイダー - MARIA SCHNEIDER


公演初日リポート:
MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA



このメンバーなしに現代のジャズ・アンサンブル界は語れません。マリア・シュナイダー・オーケストラが遂に初来日を果たしました!

進行形のニューヨーク・ジャズの感動と興奮を届けるこのアンサンブルがライヴで聴けることを、どれほど多くのファンが待ち望んでいたことでしょう。場内はもちろん超満員。著名な日本人ミュージシャンの姿も何人か見受けられました。それに加えてぼくが嬉しかったのは、幅広い年齢層のオーディエンスで客席が埋め尽くされていたことです。マリアのサウンドの持つ風通しの良さが、“良い音楽”を求めるあらゆる世代にアピールしたのだと思います。

今回の公演に際し、マリアは全セット異なるレパートリーを用意しているともききました。彼女の曲は、聴いている分には実に詩的で美しく、時の経過を忘れさせてくれます。しかし演奏する側にとっては、それなりに緊張の連続ではありましょう。サックス奏者はクラリネット、フルート、ピッコロ等を持ち替え、トランペッターは各種ミュートをつけたり外したり、フリューゲルホーンも吹きます。マリアの指示よりも、そのタイミングが少しでもずれたら、あの微妙な音の綴れおりは成立しないに違いありません。かつてのジャズによくあった、テーマ→アドリブ→テーマというパターンを必ずしも踏襲しているわけでもありません。1曲1曲がそれぞれ異なるシンフォニーである、と呼びたくなるほどマリアの作編曲は練り上げられています。それを各セット、すべて違う演目でプレイするのは演奏家にとっても並大抵のチャレンジではないはずです。通常の演奏家なら譜面を追うだけでも精一杯かもしれませんが、オーケストラのメンバーはいともやすやすと、実に楽しそうな表情を浮かべながら、一丸となって美しい響きを創り出していくのです。

ぼくが見た初日セカンド・セットはファースト・アルバム『エヴァネッセンス』、グラミー賞に輝いた『コンサート・イン・ザ・ガーデン』、2度目のグラミーを獲った『スカイ・ブルー』からの曲を中心に構成されていました。ソリストのアドリブ部分に使われていたコードはごくシンプルなものに聴こえましたが、その背後で鳴るアンサンブル、変幻自在のリズムはどこまでもニュアンスに富んでいます。ラーゲ・ルンドのギターをハーモニーの隠し味に使い、響きに一層のふくらみを与えているあたりも心憎く、ゲイリー・ヴァセイスのアコーディオンも大いに存在感をアピールしていました。彼はピアニストやオルガン奏者としても大活躍している気鋭ですが、その才能はアコーディオンでも鮮やかに発揮されていました。

ライヴのクライマックスを飾ったのは、グラミー・ウィナーの名曲「CERULEAN SKIES」。マリアがタイトルをMCで告げるだけで、場内から大歓声が巻き起こります。彼女自身も余りの反応にびっくりしたようで、満面の笑顔で「アイ・ラヴ・ユー、本当に日本に来て良かったわ」と言っていました。マリアの大好きな鳥をテーマにした20分超の大作で、ソリストはダニー・マキャズリン(テナー・サックス)、ヴァセイス(アコーディオン)、チャールズ・ピロウ(アルト・サックス)。マリアやイングリッド・ジェンセンはバード・コール(鳥の鳴き声のような音を出す笛)も吹きます。消え入るような弱音から、いまにも張り裂けそうなクレッシェンドまで。「なんと緩急に富んだサウンドなのだろう」と、ぼくは呆然とするばかりでしたが、いついかなる音が、どんな大きさで鳴らされようと、そこに優しさや暖かみが感じられるのもまた、マリア・シュナイダー・オーケストラの魅力です。

練り上げられたスコア(譜面)と、自由の歓びを歌いあげるかのようなアドリブ。このふたつを、とんでもなく高い次元で両立させたマリア・シュナイダー・オーケストラの未来は限りなく明るいといえましょう。公演は20日まで。全身全霊でお勧めいたします!!!
(原田 2012 12.17)


● 12.17mon.-12.20thu.
MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA
☆ 参考:セットリストはこちら


● 12.19wed. MARIA SCHNEIDER's Jazz Orchestra Clinic



マリア・シュナイダー - MARIA SCHNEIDER


2012/12/15

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 山中千尋 - - report : CHIHIRO...

山中千尋 - CHIHIRO YAMANAKA
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公演初日リポート:CHIHIRO YAMANAKA TRIO



“満を持して”という言葉が、これほどピッタリ来るステージは他にありません。人気ピアニスト、山中千尋がついに登場しました。これまでニューヨークやミラノのブルーノートでは演奏したことがあるそうですが、「ブルーノート東京」での公演は正真正銘、これは初めて。超満員のファンは、歴史的な瞬間を目撃した、といっていいでしょう。

山中千尋は昨年、アルバム・デビュー10周年を迎えました。ということは、ぼくが彼女のライヴを最初に見たのはさらにその数年前ということになります。渋谷のクラブで、菊地成孔、水谷浩章、外山明とグループを組んで演奏していました。今なら数秒でソールド・アウトになるであろう、とんでもなく豪華な顔ぶれですが、なにしろ20世紀の話です。ぼくが見たときはかなり空席もあって、お客さんの沸き方も熱狂的というところまではいかず、山中千尋のMCも今日とは異なってずいぶんたどたどしかった記憶があります。

しかし2001年にファースト・アルバムを発表以来、彼女の人気はうなぎのぼり。あれよあれよという間に、スターの座を獲得してしまいました。そのパフォーマンスは自信と活気にあふれ、MCのボキャブラリーも増え、CDも次々とベスト・セラーを記録しています。

この日は、彼女が「家族のようなトリオ」と語るマウロ・ガルガーノ(ベース)、ミケーレ・サルガレッロ(ドラムス)との演奏。約5年間、山中は彼らと共演を繰り返し、グループの音を磨きこんできました。オープニングは、近作のアルバム・タイトルでもある「BECAUSE」。ビートルズの『アビー・ロード』に収められていたナンバーですが、山中はまずベートーベンの「月光」的なイントロダクションからはじめ、しだいに「BECAUSE」のメロディを前面に出しながらも、アドリブ部分になると速いサンバ風リズムに乗せて、ミシェル・ペトルチアーニ「LOOKING UP」を思わせる展開へと もつれこみます。1曲の中で、さまざまな物語を味わわせてくれるのです。

続いてはポール・デスモンド作、デイヴ・ブルーベックの演奏でヒットした「TAKE FIVE」。もちろん山中千尋の解釈は一筋縄ではいきません。ベース・ソロが始まるあたりから、ブルーベック作「IN YOUR OWN SWEET WAY」に通じるコード進行に沿って演奏が進みます。

いっぽう、デューク・エリントン作「IN A MELLOW TONE」は、テンポを思いっきり落として解釈。先日もマッコイ・タイナーが「ブルーノート東京」でとりあげたナンバーですが、そのときは弾むようなテンポで演奏していました。エリントンの自作自演と山中千尋のヴァージョンを続けて聴けば、「アレンジしだいでこんなに曲の印象が変わるのか」と誰もが驚かれることでしょう。いっぽう、「JUST ONE OF THOSE THINGS」では山中流ビ・バップというべき世界を展開。イントロとエンディングに使われたフレーズは、’80年代後半にハービー・ハンコックがこの曲をとりあげるときに用いていたものである、と断言できましょう。彼女がいかにいろんなミュージシャンを聴き、勉強し、吸収してきたかを物語るようです。

ラストはもちろん、“この曲なくして山中千尋のライヴは成立しない”といわれるほどの大定番「八木節」。常に全力のライヴを聴かせてくれる彼女ですが、「八木節」にはその全力モードをさらに加速させるパワーが備わっています。3人一丸となっての熱い音のせめぎあいは、まさしくバトルと呼ぶにふさわしいものでした。山中千尋が行なってきたライヴの数だけ、ジャズにアレンジされた「八木節」がこの世に存在しているはずですが、常に最新の「八木節」が最高である、という状態をキープすることは、並大抵のことではありません。

今夜も彼女は、「八木節」の最高記録を更新してくれるはずです。公演は本日限りですが、近い将来必ず「ブルーノート東京」で長期公演を行なってくれることでしょう。
(原田 2012 12.14)


● 12.14fri.-12.15sat.
※12.15sat. 2nd Showでは『アフター・アワーズ2』リリース・パーティー(主催:ユニバーサル ミュージック)が行われます。
詳しい情報、チケットの購入は
http://store.universal-music.co.jp/fs/artist/c/jazzstoreから
お問い合わせ:
ユニバーサル ミュージック カスタマーサービス・センター
TEL 045-330-7213

CHIHIRO YAMANAKA TRIO
☆ 参考:セットリストはこちら


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2012/12/11

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RON CARTER - - report : RON CAR...

ロン・カーター - RON CARTER
ロン・カーター - RON CARTER


公演初日リポート:
RON CARTER BIG BAND



ロン・カーターは、半世紀以上にわたってジャズ界に君臨しているベーシストです。華麗なプレイによってベース=地味、というイメージを崩したひとりである、といっても過言ではないでしょう。リーダー・アルバムも、ベース奏者としては異例なほど多く出ています。いわゆるジャズ・コンボによる作品のほかにも、無伴奏ソロからバッハ集、弦楽四重奏との共演などなど、その幅広さは他の追随を許しません。

しかしロンにはまだ、チャレンジしていないことがありました。それはビッグ・バンドによるリーダー作を作ることです。2010年、彼はニューヨークの気鋭ミュージシャンを集め、最も信頼するアレンジャーのひとりであるボブ・フリードマンに編曲を依頼して『ロン・カーター・グレイト・ビッグ・バンド』を完成させました。かつてギル・エヴァンス『クールからの脱出』、マイケル・マントラー『ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ』、ベニー・カーター『セントラル・シティ・スケッチズ』等のオーケストラ作品に参加してきたロンですが、自身でビッグ・バンドを率いる喜びは格別のようです。

今回の来日公演でも、プレイにMCに、彼の張り切りようが大いにうかがえました。クールでスタイリッシュなイメージのある彼が笑顔でジョークを飛ばし、ステージを去るときには大きく手を振って観客の声援に応えるのです。

オープニングはファンにはおなじみ、「LOOSE CHANGE」。タイトルは“小銭”という意味ですね。自身のコンボでは何度も演奏しているナンバーですが、聴き慣れたメロディがビッグ・バンドで表現されると、一段と新鮮味が生まれます。ソプラノ・サックスがリードするサックス・セクションの響きが、ちょっと往年のサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラみたいだな、と思ったら、ソプラノを吹いているのはサド=メルの重鎮メンバーだったジェリー・ダジオンではないですか。テナー・サックスのスコット・ロビンソンもサド=メル人脈だし、やはりテナーのウェイン・エスコフェリーはミンガス・ビッグ・バンドでも演奏経験があります。

トランペットのグレッグ・ギズバートも現在のジャズ・ビッグ・バンド界に欠かせない存在、しかもトロンボーン・セクションにはヴァンガード・ジャズ・オーケストラの中心人物であるダグラス・パーヴァイアンスの姿も見られるのですから、これはもう、フルバン好きなら一瞬のまばたきも惜しくなるほどのラインナップといえましょう。

現在のロンはビッグ・バンドのほか、ピアノ+ギター+ベースというトリオ編成にも意欲を注いでいます。今回のライヴではトリオによる「MY FUNNY VALENTINE」もフィーチャーされました。ギター はラッセル・マローン、ピアノは新星ドナルド・ヴェガです。ニカラグアに生まれ、14歳でアメリカに移住。ケニー・バロンにジャズ・ピアノを師事し、2008年にソロ・デビューを果たしました。自身のアルバムではラテン・ジャズ寄りのプレイを聴かせてくれましたが、ロンとの共演ではクラシックのバックグラウンドを感じさせるフレーズ作りが印象に残ります。

ロン・カーター・ビッグ・バンドのブルーノート東京公演は13日まで続き、14日と15日は「コットンクラブ」でトリオによるライヴが行なわれます。巨匠ベーシストの円熟の極致を、ぜひどうぞ。
(原田 2012 12.10)


● 12.10mon.-12.13thu.
RON CARTER BIG BAND
☆ 参考:セットリストはこちら


インコグニート - INCOGNITO


2012/12/09

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , LEON WARE - - report : LEON WA...

リオン・ウェア - LEON WARE
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公演初日リポート:LEON WARE & Friends
"Celebrating Mr. Ware's 50th anniversary year in music biz!"
featuring CHANTÉ MOORE & AMP FIDDLER




祝、音楽生活50周年!
マーヴィン・ゲイとコラボレーションをおこない、マイケル・ジャクソンやマックスウェルに曲を提供し、ソロ活動でも数多くの名作を世に放つ“ザ・レジェンド”、リオン・ウェアが「ブルーノート東京」をソウルフルに染め上げています。しかも今回は、彼を敬愛してやまない鬼才キーボード奏者=アンプ・フィドラーと、歌姫シャンテ・ムーアも同行するという、豪華このうえないプログラムです。

まずはフィドラーのプレイとヴォーカルがフィーチャーされます。バッチリ決まった髪形とサングラス、スーツの着こなしがおしゃれです。先日もジョージ・デュークがショルダー・シンセサイザーを弾いていましたが、フィドラーのそれはより小型です。キーボードと歌をユニゾンさせ、「2004年以来の登場なんだ。みんなにまた会えて嬉しいよ」と観客に語りかけながら、クラブ内の熱気を高めていきます。

つづいてはシャンテ・ムーアが登場。数年前にはピーボ・ブライソンとの共演ステージでも楽しませてくれた彼女ですが、今回も伸びやかな歌声、小鳥がさえずるような超高音でファンを魅了します。その超高音のバックで、野太い低音のバスドラを入れるのは名手リッキー・ローソン。イエロージャケッツの初期メンバーで、マイケル・ジャクソン、フィル・コリンズ等の歌伴もこなしたドラマーです。ドラムがいいと、歌も演奏も一層引き締まる。リッキーの存在は、それを改めて証明してくれます。

「あとはもう、主役を待つのみ」となったタイミングを見計らうかのように、巨星リオン・ウェアが登場しました。音楽生活50周年ということは、相当、高齢なはずです。しかしその歌声や動きの艶っぽいこと。ソウルフルとエロチックを共存させながら、「I WANNA BE WHERE YOU ARE」、「IF I EVER LOSE THS HEAVEN」、「AFTER THE DANCE」、「MUSICAL MASSAGE」、「I WANT YOU」等を立て続けに聴かせてくれました。作者本人が目の前で、次々と名曲を自作自演してくれるのです。その場にたちあえるぼくらファンは、なんてラッキーなのでしょう。フィドラーのキーボード、リオンの歌にハーモニーをつけたニッキー・グリアーも大きな存在感を放っていました。

心の底から暖まるメロウな夜をありがとう。ぼくは、そんな気持ちでいっぱいです。公演は本日まで。ぜひどうぞ!
(原田 2012 12.8)


● 12.8sat.-12.9sun.
LEON WARE & Friends
"Celebrating Mr. Ware's 50th anniversary year in music biz!"
featuring CHANTÉ MOORE & AMP FIDDLER
☆ 参考:セットリストはこちら


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