BlueNote TOKYO
ARCHIVE 2012/04

2012/04/28

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BUGGE - - report : BUGGE '...

ブッゲ - BUGGE
ブッゲ - BUGGE


公演リポート:
BUGGE 'n FRIENDS
featuring ERIK TRUFFAZ, ILHAN ERSAHIN & JOAQUIN "JOE" CLAUSSELL


「1990年代、私はノルウェーでジャズとエレクトロニクスの融合を始めた。そして世界中に、同じようなことを考えているミュージシャンが数多くいることを知った。そんな彼らと、今日は演奏したいと思う」。

このような前置きを経て、鬼才ブッゲ・ヴェッセルトフトのライヴが始まりました。エリック・トラファズはフランス出身、イタリアの音楽院で学んだトランペッター。テナー・サックスのイルハン・エルシャヒンはスウェーデン生まれのトルコ育ちで、現在はニューヨークを拠点に活動しています。卓越したDJであり、パーカッションも演奏するホアキン・ジョー・クラウゼルはプエルトリコの血を引き、ブルックリンで生まれました。今回のライヴに参加したベースの右近雅人、パーカッションのMasaharu "Pretty" Uemuraは京都のバンド“SOFT”での活躍でも知られていることでしょう。「音楽に国境はない」とは、よくいわれるフレーズですが、それを音楽そのもので感じさせてくれるミュージシャンは決して多くありません。しかしブッゲは、その数少ない例外です。彼のサウンドにパスポートは必要ないのです。

譜面を見て演奏するシーンもありましたが、かなりの部分が即興にゆだねられているという印象を受けました。ブッゲが全体の枠組みを設定し、あとは各ミュージシャンの自由に任せるという感じでしょうか。エリックにしてもイルハンにしてもホアキンにしても大変な個性派で、普段はそれぞれ自身のプロジェクトに力を入れています。そんな彼らが奔放にプレイしたこの日のライヴは、ジャム・セッションとしても楽しいものでした。さまざまなエフェクターを使ってカラフルな音を出すエリック、大きなからだを揺さぶりながら豪快なブロウを展開したイルハン、どちらのソロにも強い魅力がありましたし、ホアキンとUemuraのパーカッション・バトルにも興奮させられました。またラスト2曲には、かつてブッゲがアルバムをプロデュースしたことがあるakikoが登場し、歌いました。ブッゲの“友達の輪”は、さらにさらに大きく広がっていくことでしょう。
(原田 2012 4.27)


● 4.27fri.-4.29sun.
BUGGE 'n FRIENDS featuring ERIK TRUFFAZ, ILHAN ERSAHIN & JOAQUIN "JOE" CLAUSSELL
☆ 参考:セットリストはこちら


ブッゲ - BUGGE



2012/04/22

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RONNY JORDAN - - report : THE RON...

RONNY JORDAN - ロニー・ジョーダン
RONNY JORDAN - ロニー・ジョーダン


公演リポート:
THE RONNY JORDAN TRIO & GROUP
 1st: Ronny Jordan Organ Trio
 2nd: Ronny Jordan Group featuring DJ Krush


‘90年代初頭、彗星のように音楽シーンに飛び出したギタリストがロニー・ジョーダンです。彼の演奏する「SO WHAT」(マイルス・デイヴィスのカヴァー)は当時、一日に何度もFMで流れたものです。卓越したギター・テクニックだけではなく、まるで黒豹のような精悍なルックスも魅力的でした。それから約20年が経った現在、彼のギター・プレイにはさらに豊かさと光沢が増しています。「コットンクラブ」には出演したことがありますが、「ブルーノート東京」へは今回が初登場。ファースト・セットはオルガンをフィーチャーしたソウル・ジャズ仕様のパフォーマンス、そしてセカンド・セットはDJ KRUSHとのコラボレーションを含むアシッド・ジャズ/ヒップホップ的なアプローチで迫ります。両セット見れば、ロニーの過去・現在、そして未来までもがわかるのです。

ファースト・セットにあらわれたのはフル・アコースティック・タイプのエレクトリック・ギターを大事に抱えたロニー、そしてオルガンのメル(メルヴィン)・デイヴィス、ドラムスのブランドン・テイラーです。3人とも椅子に座って演奏するので視覚的には地味になるのかなと思っていたのですが、全然そんなことはありません。ロニーとメルはほとんど向かい合って演奏し、お互いのプレイに大喜びしながら演奏を続けました。そしてブランドンもニッコリしながら、粘りのあるサポートでソリストのアドリブを盛りたてます。1曲目の「BLUES FOR G.B.」(ジョージ・ベンソンに捧げたナンバー)から、3人のボルテージは最高潮のようです。ロニーのプレイは、まさしく‘60年代、ジャック・マクダフやジミー・スミスと一緒に演奏していた頃のベンソンに通じるもの。彼のことを“アシッド・ジャズの人気者”としてしか知らないひとにもぜひ聴かせたい、真正面を行くオーソドックスなプレイが聴けました。

続いて登場したのは、サックス奏者スタンリー・タレンティン作の「SUGAR」。スタンリーが他界した現在、ほとんど演奏されることがなくなってしまったような気がしますが、ギターとオルガンのユニゾンで聴くこの曲もまた、趣があります。その後は近作『The Rough and The Smooth』から、オリジナル・ナンバーの数々が演奏されます。なかでも、ロニーの日本での売り出しに大きく貢献したディレクター、故・柳田一彦さんに捧げた「REMEMBER WHEN」のメロディの美しさは絶品でした。柳田さんが亡くなってもう13年になりますが、ロニーがいかにその思い出を大切にしているかが伝わってくるような、とてもあたたかなパフォーマンスでした。

セカンド・セットは、この3人にベーシスト、キーボード奏者、ヴォーカリスト、そしてDJ KRUSHを加えた面々がステージに立ちます。レパートリーは一切、ファースト・セットとダブりなし。初期の代表曲も、近年の会心作もタップリ聴かせてくれます。ぜひ2セットとも見ていただき、ロニーの魅力を“コンプリート”してください!
(原田 2012 4.22)


● 4.22sun.-4.25wed.
THE RONNY JORDAN TRIO & GROUP
 1st: Ronny Jordan Organ Trio
 2nd: Ronny Jordan Group featuring DJ Krush


☆ 参考:セットリストはこちら


RONNY JORDAN - ロニー・ジョーダン


2012/04/19

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NILE RODGERS & CHIC - - report : NILE RO...

ナイル・ロジャース - NILE RODGERS
ナイル・ロジャース - NILE RODGERS


公演初日リポート:
NILE RODGERS & CHIC



今年も、桜の季節にナイル・ロジャース&シックが戻ってきてくれました。

ナイルがなぜこの時期に来日するのか? 話は今から16年前にさかのぼります。
1996年4月、ナイルは「JTスーパー・プロデューサーズ」というタイトルの来日コンサートを開きました。そこにはもちろんシックのメンバーもハウス・バンドとして参加しました。しかしその最終日にあたる武道館公演の直後、ベーシストのバーナード・エドワーズが急逝してしまったのです。それ以来ナイルは、可能な限りこの時期に日本を訪れ、バーナードの思い出を我が国のファンと一緒に偲んでいるのです。

しかしステージには一切、しめっぽさはありません。「こっちはこんなに賑やかなパーティをやってるよ、そっちも盛りあがってるかい?」とバーナードに呼びかけるかのようなファンキーでダンサブルなプレイが延々と続くのです。オープニングでは、バンド・メンバーに先駆けて、まずナイルが登場。客席からの握手攻めに応えた彼が、ようやくバンドスタンドに上ると、それだけでオーディエンスは総立ちです。「じゃあ、シックのメンバーを紹介しよう!」というナイルのMCに導かれ、各メンバーが控え室から演奏しながら出てきます。ファンの声援と拍手はさらに高まります。

あとはもう、「EVERYBODY DANCE」を筆頭にヒット・チューンが次から次へと出ます。プログラム中盤の“他人に提供したナンバー集コーナー”では、ダイアナ・ロスに提供した「I'M COMING OUT」、マドンナに提供した「LIKE A VIRGIN」、デヴィッド・ボウイに提供した「LET'S DANCE」、デュラン・デュランに提供した「NOTORIOUS」等が歌われました。“でも私たちはヒット曲のカヴァー・バンドじゃないよ。だってこれらの曲は、すべて私が書いたかプロデュースしたものなんだからね”と語るナイル。ビッグ・ヒットの数々を、そのヒットを生んだ張本人のステージで聴けるのは快感のひとことにつきます。

シックのライヴはいつも超満員です。その理由の一つは、リピーターがとても多いこと。つまり一度でも彼らのステージに接すると、あまりの楽しさにクセになってしまい、それから来日するたびに聴きにいかなければ気持ちが収まらない、という一種の“中毒症状”が起きるのです。そしてもうひとつ、新たに彼らのライヴを体験しに来るファンもとても多いのです。「おしゃれフリーク(LE FREAK)」にしても、「LIKE A VIRGIN」にしても、聴きつがれ、今なおラジオやテレビで流れています。その原作者のプレイをナマで見ることができるとあっては、誰だってライヴ会場に駆けつけたくなるはずです。

ナイル&シックは年末年始にも「ブルーノート東京」に再登場するそうです。ダンス・ミュージックのマエストロはますます元気、ますますファンキーです。
(原田 2012 4.18)


● 4.18wed.-4.21sat.
NILE RODGERS & CHIC
☆ 参考:セットリストはこちら


NILE RODGERS - ナイル・ロジャース


2012/04/14

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SATORU SHIONOYA - - report : 塩谷哲 ...

塩谷哲 - SATORU SHIONOYA
塩谷哲 - SATORU SHIONOYA


公演初日リポート:
塩谷哲 with SUPER SALT BAND



先日、チキンシャックのリユニオン・ライヴが行なわれたばかりの「ブルーノート東京」で、またしても黄金ユニットの復活祭が開催されました。

ピアニストの塩谷哲ひきいるSALT BANDがSUPER SALT BANDとして生まれ変わり、約10年ぶりに活動を再開したのです。メンバーは塩谷のほか、田中義人(ギター)松原秀樹(ベース)、山木秀夫(ドラムス)、大儀見元(パーカッション)。ジャズもロックもラテンもJポップも何でもござれの凄腕たち、まさに“SUPER”と呼ぶにふさわしい面々です。

演目はすべて、これまで発表された作品の中から選ばれました。2002年リリースのライヴ盤『LIVE!LIVE!LIVE!』でも演奏されていた「ARE WE SMOKIN' YET」、「IN SEARCH OF YOU」、「あこがれのリオデジャネイロ」はもちろん、“今までほとんどライヴでやったことがない”という「HOME-BOUND TRAIN」(アルバム『88+∞』収録)までもが演奏されました。

それにしても、オーディエンスの皆さんはさすがです。「HOME-BOUND TRAIN」のメロディが流れるや否や、客席がドッと沸きます。「まさかこの曲がナマで聴けるなんて!」という、驚きと感激が入り混じったような声援がバンドに送られました。

ファンを笑いの渦に巻き込む塩谷のMCは今回も健在です。“以前よりはMCを短めにした”とのことですが、しゃべるときの間の取り方、オチのつけ方は実に見事で、それをステージ上で聞いているバンド・メンバーも楽器を抱えて笑い出すほどです。しゃべりは面白く、ピアノ・タッチは美しく、曲はメロディアスでダンサブル。ぼくは塩谷哲のライヴを何度も見ていますが、その都度、本当に爽快なエンターテイナーだなあと痛感させられます。彼のブルーノート東京公演ではオリジナル・カクテルの提供が恒例化していますが、今回の名前は「スーパー甘酒か?」。日本酒、ヨーグルト、塩キャラメルがミックスされた逸品で、ネーミングは大儀見元が担当したとのことです。

2013年、塩谷哲はソロ・デビュー20周年を迎えます。それに向けて、SUPER SALT BANDの新曲制作、新作レコーディングも計画されているとのこと。今後の彼らの活躍が、さらに楽しみになってきました。
(原田 2012 4.13)


● 4.13fri.-4.15sun.
SATORU SHIONOYA with SUPER SALT BAND
☆ 参考:セットリストはこちら


塩谷哲 - SATORU SHIONOYA


2012/04/10

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , IVAN LINS , JANE MONHEIT - - report : JANE MO...

ジェーン・モンハイト - JANE MONHEIT
ジェーン・モンハイト - JANE MONHEIT


公演初日リポート:
JANE MONHEIT with IVAN LINS



「イヴァンの音楽を聴いて私の人生は変わった。デビューの頃から彼の曲を歌い続けているわ。そんなイヴァンと一緒のステージに立てるなんて、今も信じられないの」とジェーン・モンハイトは語り、「ニューヨーク・ブルーノートに出演していたときのことだ。ほぼ毎日、毎セットのように聴きにくる女性がいたんだね。最終日のラスト・セットのとき、“彼女は本当に私の音楽のファンなんだなあ”と思ったけど、それがジェーンだったんだ」とイヴァン・リンスは話しかけます。

現代のジャズ・ヴォーカル・シーンを牽引する歌姫のひとりであるジェーン・モンハイトと、ブラジル屈指のメロディ・メイカーである超大物イヴァン・リンスが日本初共演を果たしました。

互いに敬意を持って接しあうふたりのコンビネーションは、見ても聴いても実に気持ちいいものです。こうした「スペシャル・ゲスト」を呼ぶ公演は、たいていの場合、そのゲストがプログラム後半に登場するのが当たり前です。しかしこの日のステージは違いました。冒頭2曲こそジェーンとバック・バンドのパフォーマンスだったものの、3曲目からイヴァンが登場し、それからアンコールまでふたりの共演が続いたのです。

ふたりはジェーンのアルバム『イン・ザ・サン』、『サレンダー』で顔を合わせていますが、ここまでたっぷりとセッションをしたのは前例がないのではと思います。イヴァンの定番といえる「RIO DE MAIO」、「COMECAR DE NOVO」はもちろんのこと、イヴァンがセルジオ・メンデスの大ヒット・アルバム『ブラジレイロ』に提供した「LUA SOBERANA」(沖縄民謡風のリフレインが、やけに耳に残ります)、さらにアントニオ・カルロス・ジョビンの「SAMBA DO AVIAO」までもが、ふたりのコラボレーションで楽しめるのですから、これはもう、絶対クラブに足を運ぶに限ります。

アンコールではさらに、スタンダード・ナンバーの「I'VE GOT YOU UNDER MY SKIN」を披露。ボサ・ノヴァ風に解釈されることも多いナンバーですが、ジェーンとイヴァンはあくまでもジャジーに、4ビートに乗せてデュオを繰り広げます。英語でスイングするイヴァン、ぼくは初めて聴きました。公演は12日まで続きます。
(原田 2012 4.9)


● 4.9mon.-4.12thu.
JANE MONHEIT with IVAN LINS
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JANE MONHEIT - ジェーン・モンハイト


2012/04/06

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOHN OATES - - report : JOHN OA...

JOHN OATES - ジョン・オーツ
JOHN OATES - ジョン・オーツ


公演初日リポート:
JOHN OATES



世界で最も成功を収めた男性デュオのひとつ、“ホール&オーツ”のジョン・オーツが、ソロ・アーティストして「ブルーノート東京」に初めて登場しました。それまでスタジアム・クラスの会場か大ホールでしか見ることのできなかったといっても過言ではなかったオーツを、手の届くような距離で味わえる。これは本当にうれしいことです。

「昔の曲も今の曲もやるし、もちろんホール&オーツの曲もプレイするよ」と事前に語っていた通り、この日のプログラムは盛りだくさんでした。「オーツって、こんなに幅の広いミュージシャンだったのか」と改めて驚いたのは、ぼくだけではないでしょう。そして彼は本当に話好きです。1曲1曲の間に、必ずといっていいほどMCが入ります。そして観客に盛んに話しかけ、コミュニケーションをとろうとします。たしかにこれは、大ホールやスタジアムでは、なかなかできることではありません。オーディエンスの顔がはっきり見えるクラブで演奏することを、オーツは心から楽しんでいるのでしょう。

選曲は公演ごとに変化するとのことですが、昨日のステージで歌われたホール&オーツのナンバーは「LADY RAIN」、「MANEATER」等。シンセサイザーによる打ち込みのサウンドを用いて‘80年代に大ヒットした「OUT OF TOUCH」が、アコースティックな響きを重視したバンド・サウンドで生まれ変わったのも新鮮でした。本編ラストでは、“この曲を歌わないと、ショウを終わることはできないね”と「SHE’S GONE」を熱唱しました。

いっぽう、「DIFFERENT KIND OF GROOVE」は、つい2〜3週間前に書き上げたばかりという新曲。まだレコーディングもしていなく、ライヴで歌うのもこの日が初めてだったそうです。この曲を聴いても思うのですが、オーツの音作りにはブルース、カントリー、ソウル・ミュージック、ロックンロール等が本当にいいバランスで配合されています。彼自ら「全米最高のミュージシャンを集めたんだ」と豪語するだけあって、バンド・メンバーも皆、達人ばかりです。

カヴァー曲では故ジョン・デンバーの「LEAVING ON A JET PLANE」が見事でした。オーツは1968年にコロラドでデンバーのライヴを聴いて感激し、現在も多大なリスペクトを寄せています。オーツは決してオリジナル・ヴァージョンのコピーはしません。バンドともども、徹底的にアレンジを練り直し、自身の歌として昇華しています。ぼくはそこに彼の音楽家としての良心を感じました。ほかにもエルヴィス・プレスリーの「ALL SHOOK UP」、コースターズの「SEARCHIN’」、パーシー・メイフィールドの「PLEASE SEND ME SOMEONE TO LOVE」といった名曲を、次々とオーツ流に再生してくれました。

ソロ曲、カヴァー、そしてホール&オーツの定番。どれを楽しみにしても満足できる、大サービスのステージでした。
(原田 2012 4.5)


● 4.5thu.-4.8sun.
JOHN OATES
☆ 参考:セットリストはこちら


JOHN OATES - ジョン・オーツ


JOHN OATES - test

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