BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL LEGRAND - - report : MICHEL ...

2012/10/03

ミシェル・ルグラン - MICHEL LEGRAND
ミシェル・ルグラン - MICHEL LEGRAND


公演初日リポート:
MICHEL LEGRAND Symphonic Special Night
@すみだトリフォニーホール



「シェルブールの雨傘」、「おもいでの夏」など数々の名曲を送り出し、ピアニストとしても第一級の腕前を持つマエストロ、ミシェル・ルグランがこの6日と7日、「ブルーノート東京」に登場します。今年は生誕80年、初来日から40年というアニバーサリー・イヤーにあたります。前回以上に感動的なステージが繰り広げられることでしょう。

これに先立ち、ぼくは昨日、すみだトリフォニーホールで行なわれた「ミシェル・ルグラン シンフォニック・スペシャル・ナイト」に行ってきました。第1部は彼のレギュラー・ピアノ・トリオ、そして第2部はそこに竹本泰蔵指揮の新日本フィルハーモニーとハープ奏者のキャサリン・ミシェルが加わります。

第1部は、ルグランの“ジャズ愛”が溢れ出る内容でした。映画音楽家、指揮者として他の追随を許さない位置にあるルグランですが、そのいっぽうで、彼は『ルグラン・ピアノ』、『ライヴ・アット・シェリーズ・マン・ホール』等、ベースとドラムスだけをバックにした作品もいくつか残しています。ピエール・バウサエ(ベース)、フランソワ・レゾー(ドラムス)とのコンビネーションは、まるでひとりの人間がピアノ、ベース、ドラムスを同時に演奏しているかのように絶妙でした。マイルス・デイヴィスが出演した映画のために書いた「ディンゴ・ラメント」、ビル・エヴァンスなど数多くのミュージシャンにカヴァーされている「ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング」等、次々と名曲が登場します。ラストはオスカー・ピーターソン、アート・テイタム、ジョージ・シアリング等の物まねを含む「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」。ルグランがどれだけジャズを愛し、多くのピアニストに影響を受けて現在に至っているかが、とてもよくわかるパフォーマンスでした。

第2部は映画「シェルブールの雨傘」の挿入曲メドレーで幕を開けました。ぼくはこの映画を、かなり昔、蒲田の名画座で見ました。目をつぶって音楽に耳を傾けていると、映画の印象的なシーンが次々と浮かびます。「あの名作に音楽を提供したルグラン本人が、今、ここに来て指揮している」・・・なんとぜいたくで、ありがたいことでしょう。「愛のイエントル」と「おもいでの夏」では、公私共にルグランのパートナーであるキャサリン・ミシェルのハープが大きくフィーチャーされました。「彼女ほどハープを美しくプレイできるひとは、この世の中にいない」というルグランのMCが、決して「のろけ」ではなかったことを、この日のオーディエンスは、みんな知っているはずです。

新日本フィルハーモニーの演奏もまた、素晴らしいものでした。リハーサルの時点からルグランは彼らに絶賛を惜しまなかったとのことですが、なるほど、ここまで息がぴったりなら、何もいうことはないでしょう。マエストロとの共演は、フィルハーモニーにとっても忘れられない出来事になったのではないかと思います。
とにかくルグランは今、乗りに乗っています。10月6日と7日の公演、ぜひお楽しみに。
(原田 2012 10.2)


● 10.6sat.-10.7sun. はブルーノート東京公演
MICHEL LEGRAND
"80th Birthday Celebration Japan Tour 2012"



ミシェル・ルグラン - MICHEL LEGRAND


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL LEGRAND - - report : MICHEL ...

2011/09/05

ミシェル・ルグラン - MICHEL LEGRAND
ミシェル・ルグラン - MICHEL LEGRAND


公演初日リポート:MICHEL LEGRAND TRIO

「シェルブールの雨傘」、「ロシュフォールの恋人たち」、「華麗なる賭け」、「おもいでの夏」等、数え切れないほどの名作映画の音楽を担当してきたミシェル・ルグラン。彼はまた、熱狂的なジャズ好きとしても知られています。1950年代初頭にはディジー・ガレスピーに編曲を提供、その後マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンス(ピアニスト)と親交を結び、『ルグラン・ジャズ』、『アット・シェリーズ・マン・ホール』を始めとする、いくつものジャズ・アルバムも発表しています。

今回の「ブルーノート東京」はいうなれば、ルグランの書き下ろした名曲がジャズ・フォーマットで披露されるというもの。“ルグラン・プレイズ・ルグラン”と呼ぶにふさわしい珠玉のプログラムが、クラブならではの親密な雰囲気の中、思いっきり楽しめるのです。世界中で愛されている定番を作者本人の演奏で聴くという、こんなに贅沢な機会が今後、いつ訪れるかは誰にも予想できません。会場はもちろん超満員、カップルでお越しの方もかなりいらっしゃいました。

オープニングは映画「シェルブールの雨傘」でおなじみの「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」。ルグランはこの有名なメロディに次々とヴァリエーションを加えてゆきます。「インプロヴィゼーションは本当に楽しいね。一晩中でも続けたいぐらいだよ」とMCで語っていましたが、彼の即興はジャズのアドリブというよりもクラシックでいうところの変奏に近いもので、キーやテンポを変えながら、1コーラスごとに違った「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」を聴かせてくれました。

ギル・エヴァンスやカーラ・ブレイ等を例に出すまでもなく、作編曲家のピアノ・スタイルは、どちらかというと淡々としている場合が多いように感じられます。しかしルグランは違います。次から次へとフレーズが溢れ出しては止まらない、という感じで、とにかくピアノを弾きまくるのです。大ベテラン、大巨匠の位置に君臨して久しいはずなのに、指は往時と変わらずスピーディに動き、速いパッセージにも乱れはありません。70年代のインタビューでルグランは、最も尊敬するピアニストのひとりにオスカー・ピーターソンをあげ、「彼の腕を移植してほしいぐらいだよ」と言っていますが、ルグランのピアノの芸風は確かにピーターソン流のヴァーチュオーソ・スタイルといえましょう。

また「これからの人生」では英語、「風のささやき」と「シェルブールの雨傘」ではフランス語によるヴォーカルを聴かせてくれました。マエストロの弾き語りを至近距離で聴ける・・・こんな貴重なチャンスは、なかなか体験できるものではありません。まさしく、感動のステージ。行って本当によかった、と誰もが思うはずです。
(原田 2011 9.4)



● 9.4sun.-9.5mon.
MICHEL LEGRAND TRIO


ミシェル・ルグラン - MICHEL LEGRAND