BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL CAMILO , TOMATITO - - report : MICHEL ...

2012/11/19

ミシェル・カミロ - MICHEL CAMILO
ミシェル・カミロ - MICHEL CAMILO


公演初日リポート:
MICHEL CAMILO & TOMATITO



ラテン・グラミー賞に輝く黄金コンビ、ミシェル・カミロ&トマティートが帰ってきました。このところ「スペイン・フォーエヴァー」というタイトルで各地をツアーしているふたり。ジュネーブ、マドリッド、バルセロナ、名古屋、川崎をへて、待望の「ブルーノート東京」公演です。

初のデュオ・アルバム『スペイン』から12年。共演第2作『スペイン・アゲイン』からも6年が経ちます。ぼくは長い間、新作を待ち望んでいるのですが、今回のライヴでは新しいレパートリーもたっぷり盛り込みながら、さらに進化したソロとアンサンブルで魅了してくれました。「これは、近いうちにニュー・アルバムが出ることは間違いなしだな」と、ぼくはすっかり嬉しくなりました。

オープニングはアルバム未収録曲、チック・コリア作「ARMANDO’S RHUMBA」です。ちょっと長めの幻想的なイントロが終わるやいなや、なだれこむように情熱的なテーマ・メロディが始まります。場内はもちろん拍手喝采の嵐です。カミロはスタインウェイの大型ピアノをバリバリと弾きまくり、トマティートもアコースティック・ギターを自分の身体の一部のように自由自在に操ります。まさしく天才的な超絶技巧のぶつかりあい。しかしそのサウンドには息苦しいところはまったくなく、どこまでも暖かでハッピーです。彼らは楽器に関する最高峰のテクニシャンである以上に、卓越したエンターテイナーでもあるのです。

続く「OUR SPANISH LOVE SONG」はベース奏者、チャーリー・ヘイデンの作。前曲とは一転、ため息が漏れるようなスロー・バラードの世界が展開されます。通常、ソリストがいる場合、他のメンバーはバッキングに徹します。しかしカミロとトマティートのコンビには、どちらかがソリスト/伴奏という明確な区別は存在しません。両者のプレイが絡み合いながら、スケールの大きな世界をつくりあげていくのです。

トマティート作の「LAS DOS LORETTAS」はファンキーなナンバー。“スパニッシュ・ブルース”と形容したくなるようなプレイが展開されました。ギターの高音とピアノの低音が魅力的なユニゾンを演じ、やがてふたりが同時即興を繰り広げます。互いに実力を認め合った者だけに可能な、とんでもなくエキサイティングな“音の会話”といったところでしょうか。

ライヴ後半ではエリック・サティやアストル・ピアソラの曲も演奏されました。彼らの手にかかると、どんな旋律も100%“カミロ&トマティート・サウンド”に生まれ変わります。このデュオにマンネリという言葉は存在しません。公演は本日までです。発展を続けるふたりのパフォーマンスを、ぜひ実際にご覧ください!
(原田 2012 11.18)


● 11.18sun.-11.19mon.
MICHEL CAMILO & TOMATITO
☆ 参考:セットリストはこちら


ミシェル・カミロ - MICHEL CAMILO


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL CAMILO , TOMATITO - - report : MICHEL ...

2011/11/09

MICHEL CAMILO -ミシェル・カミロ
MICHEL CAMILO -ミシェル・カミロ


公演初日リポート:MICHEL CAMILO & TOMATITO



名盤『スペイン』、『スペイン・アゲイン』を生んだラテン・グラミー賞コンビ、ミシェル・カミロ&トマティートが白熱のライヴを行なっています。

ぼくは初日のファースト・セットに駆けつけましたが、「いきなりこんなに盛り上げるのか」と驚いてしまうほどのパフォーマンスでした。アコースティック・ピアノとアコースティック・ギターの組み合わせだけで、ここまで起伏に富んだ演奏を行ない、観客を熱狂させることのできるミュージシャンは本当に稀だと思います。

オープニングはアストル・ピアソラの「LIBERTANGO」。いきなりおいしいところがファンの前に届けられた、という印象を受けました。聴こえてくる音はピアノとギターなのに、ぼくは確かにバンドネオンの響きを感じました。トマティートは上半身をほとんど動かさずに弾きます。ただ指だけが楽器の上を舞うのです。

ステージではその他、カミロのオリジナル曲「TWILIGHT GLOW」、ビル・エヴァンスの「WALTZ FOR DEBBY」とジャズのスタンダード曲「STELLA BY STARLIGHT」のメドレー、「FUGA Y MISTERIO」(フーガと神秘)などが次々と登場しました。カミロのピアノは尋常ではない強弱のニュアンスに富み、この楽器が“ピアノフォルテ”という名称であったことを思い起こさせてくれます。

トマティートは右手のすべての指を駆使して、ナイロン弦のギターから歌うようなフレーズを紡ぎ出します。基本的にカミロのほうを見て弾いているので、殆どの観客は彼の正面ではなく横顔を見ることになるのですが、この横顔がまた、なんとも絵になるのです。俳優としても活動しているという話をきくと「なるほど」とうなずけます。「トマトちゃん」というかわいい芸名と、卓越した演奏、そして渋みのあるルックスのコントラストもまた、彼の魅力といっていいでしょう。

本編ラストでは、チック・コリアの大定番「LA FIESTA」が登場。過去、多くのミュージシャンがとりあげてきたナンバーですが、なにしろ作者自身のヴァージョンが偉大すぎるため、意外と独創的な解釈は少ないような気がします。しかし、このふたりの演奏は例外です。「これが俺たちのラ・フィエスタなんだ」という声が聞こえてきそうな、入魂のプレイでした。思えばカミロとトマティートのコンビは発足当時、チックとパコ・デ・ルシアのそれに比べられたこともありました。しかし今の彼らは、もうどのピアノ〜ギター・コンビとも比較できないほどワン&オンリーの世界を確立しています。

ブルーノート東京のホームページを見ると、この日のセカンド・セットではまったくといっていいほど別の曲が演奏されたことがわかります。なにしろ幅広いレパートリーを持つカミロとトマティートです。本日以降のステージでは、いったい何が飛び出すのか。わくわくしながらライヴを楽しもうではありませんか。
(原田 201111.9)


●11.8tue.-11.12sat.
MICHEL CAMILO & TOMATITO


ミシェル・カミロ - MICHEL CAMILO