BlueNote TOKYO
ARCHIVE 2012/05

2012/05/31

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JAMES FARM , JOSHUA REDMAN - - report : JAMES F...

ジェイムス・ファーム - JAMES FARM
ジェイムス・ファーム - JAMES FARM


公演初日リポート:
JAMES FARM
featuring JOSHUA REDMAN, AARON PARKS, MATT PENMAN & ERIC HARLAND



ジョシュア・レッドマン(テナー・サックス)、アーロン・パークス(ピアノ)、マット・ペンマン(ベース)、エリック・ハーランド(ドラムス)。それぞれがリーダー・アルバムも出している、いわば一国一城の主が結集したユニットが、このジェイムス・ファームです。

管楽器がジョシュアひとりであること、およびMCを担当していることから彼のバンドと思われがちですが、あくまでもメンバー全員が対等というポリシーが貫かれています。そしてレパートリーも、4人がそれぞれ持ち寄ったオリジナル曲に限定されています。彼らは2009年から一緒に演奏を始め(パークス以外は、それ以前からSFジャズ・コレクティヴに所属していましたが)、2010年にファースト・アルバムを吹き込みました。
それがリリースされたのは2011年のことです。ぼくも発売直後に聴きました。そのときは、正直いって「難解な内容だなあ」と思いました。ようするに自分の鑑賞能力が、彼らの音楽レベルに達していなかったということなのですが、ライヴは実にストレートでスカッとする内容でした。CDを聴いたときの「難しいなあ、とっつきにくいなあ」という意見は「よくもまあ、こんなこみいった曲を軽々と演奏できるものだ」という驚きに変わり、「複雑なフレーズの応酬」は「たまらなくスリリングな技のやりとり」という言葉におきかえられていきます。

ステージのオープニングを飾る「1981」が終わった頃には、ジェイムス・ファームの音楽がそれまでにないほど身近に感じられるようになっていました。

ジョシュアのプレイは相変らずスマートでスムーズです。細く滑らかに、ときにソプラノ・サックスを思わせるような高音も披露します。アーロン・パークスのハーモニーはあくまでも耽美的で、ソロ・フレーズは清水が流れるかのようです。そんな二人を、マットの骨太なベースが包みこみ、“反応の鬼”と化したエリックのドラムスが鼓舞します。彼がジャズ・シーンに登場してからもう10年以上が経ちますが、チャールス・ロイドとの共演以降、そのドラム・プレイには磨きがかかりっぱなしのようです。

ぼくが見た初日のファースト・セットでは、ほかに「IF BY AIR」、「CHRONOS」、「STAR CROSSED」等がプレイされました。各人の連携ぶりは憎いほどで、まるで“4つの魂を持ったひとつの巨人が、同時に4つの楽器を演奏している”と形容したくなるほど。アンコールでは、まだレコーディングされていないマットの新曲「TWO STEPS」も聴かせてくれました。

オールスター・ユニット、ジェイムス・ファームの未来は洋々です。ライヴは土曜日まで続きます。ぜひどうぞ!
(原田 2012 5.30)


● 5.30wed.-6.2sat.
JAMES FARM
featuring JOSHUA REDMAN, AARON PARKS, MATT PENMAN & ERIC HARLAND
☆ 参考:セットリストはこちら


JAMES FARM - ジェイムス・ファーム


2012/05/29

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , EVERETTE HARP with INDRA LESMANA QUART... - - report : EVERETT...

エヴェレット・ハープ - EVERETTE HARP
エヴェレット・ハープ - EVERETTE HARP


公演初日リポート:
EVERETTE HARP with INDRA LESMANA QUARTET



スムース・ジャズ〜フュージョンを代表するサックス奏者、エヴァレット・ハープがインドネシアのインドラ・レスマナ・カルテットたちと共に、ブルーノート東京のステージを飾っています。

ぼくが今から20年以上前、マーカス・ミラーのライヴで初めてエヴァレットのプレイを聴きました。ずいぶん活きのいいミュージシャンがあらわれたと思ったものです。そして現在も彼はその演奏に磨きをかけています。「ブルーノート東京には何回も出ているけれど、自分自身の音楽をプレイするのは初めてなんだ。だからとってもエキサイトしているんだよ」というMC通り、大変にエキサイティングなパフォーマンスを聴くことができました。

ところで、インドネシアはスムース・ジャズ〜フュージョンの大国でもあります。ぼくは過去2度、ジャカルタで行なわれるアジア最大級のフェスティバル「JAVA JAZZ FESTIVAL」に行ったことがありますが、とにかくプロ・アマチュア問わず、すさまじいフュージョン熱に圧倒されました。そして全員、テクニックがすごいのです。そしてインドラ・レスマナ・カルテットは恐らく、その中の最高峰でしょう。

リーダーでキーボード奏者のインドラ・レスマナ、ベースのバリー・リクマフワ(父親はインドネシア屈指のモダン・ジャズ系トロンボーン奏者、ベニー・リクマフワ)、ドラムスのサンディ・ウィナルタは昨年、LLWというユニットで来日したばかり。インドラは映画監督ミラ・レスマナを兄に持ち、インドネシアのポップス界でもプロデューサー〜ミュージシャンとして大活躍しています。その華麗なキャリアは、先日「ミュージック・マガジン」誌のインタビュー記事で紹介されたばかりですが、この日もインドラ目当てのお客さんが相当、駆けつけていたように思います。

演目はエヴァレットのオリジナル曲が中心。そこにインドラの「NO STANDING」や、マーヴィン・ゲイの「WHAT’S GOIN’ ON」といったカヴァー曲が加わります。エヴァレットはアルト・サックスだけではなくテナー・サックスやEWIも演奏。CDではだいたい、1曲を4〜5分にまとめている彼ですが、この日は時間の制約を超え、サックスを吹いて吹いて吹きまくります。このあたり、まさしくライヴの醍醐味といっていいでしょう。“ぼくの父はバプティスト教会の牧師だった。だからジャズを演奏することにはずっと反対されていた。ハイスクールの頃、友人たちがナイト・クラブで遊んでいるときでも、ぼくは家でじっとしていたものさ。その当時のことを思い出して書いた曲だ”という前置きから始まった「ALL JAZZED UP(NOWHERE TO GO)」では、客席を練り歩きながら入魂のブロウを展開しました。

ジョージ・デュークをプロデュースに迎えた近作『FIRST LOVE』も好評のエヴァレット。デイヴ・コーズ、カーク・ウェイラム、ジェラルド・オルブライト等のファンにも絶対お勧めの熱いステージ、ぜひお越しください。
(原田 2012 5.28)


● 5.28mon.-5.29tue.
EVERETTE HARP with INDRA LESMANA QUARTET
☆ 参考:セットリストはこちら


ロバート・ランドルフ - ROBERT RANDOLPH


2012/05/26

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MOSE ALLISON - - report : MOSE AL...

MOSE ALLISON - モーズ・アリソン\
mose_001.jpg

公演初日リポート:MOSE ALLISON



ついにこの日がやってきました。モーズ・アリソンの初来日公演です。

モーズは1950年代にデビューした、ピアノの弾き語りアーティストです。レコード店では「ジャズ」に分類されているのではと思われますが、その内容は多彩でブルース、フォーク、ヒルビリー等の要素も感じられます。数多くのロック・アーティストからリスペクトされていることでも知られていて、「60年代の英国でブルースをプレイする者は、誰もがモーズの影響を受けていた」(元ローリング・ストーンズのミック・テイラー)、「モーズ嫌いのミュージシャンを私は知らない。彼は音楽の壁を軽々と突き破った」(ボニー・レイット)、「モーズはジャズとブルースのミッシング・リンクなんだ」(キンクスのレイ・デイヴィス)、「最初に聴いたときから、モーズには惚れっぱなしだ。声の暖かさ、スタイル、あの独創性・・・。彼の音楽は、私の心をとろけさせてくれる」(ジョージー・フェイム)、「モーズは60年代のロックンロールに強烈な影響を与えた。当時、ブルース系のバンドを組んでいた連中は皆、モーズに熱中していた」(アル・クーパー)といった発言が残されています。もちろん黒人ブルース・ミュージシャンからもモーズの音楽は好かれていて、巨匠サニー・ボーイ・ウィリアムソン\nは「モーズ、いいぞ。その調子で続けろ!」と彼を励ましたとのことです。

そのモーズが今、初来日公演のために日本にいます。
この11月に85歳を迎えるとのことですが、足取りは軽快です。編成は、彼が最も得意とするピアノ・トリオ。ベースのフィル・スパークスは’70年代から’80年代にかけてコロラド州で活動し、現在はシアトルを拠点としているベテランです。ドラムスのピート・マガディーニはジョージ・デューク、アル・ジャロウ、ダイアナ・ロス等のサポートも務めた名手で、教則DVDを出すなど、インストラクターとしても活躍しています。

冒頭の10分ほどピアノをフィーチャーしたパフォーマンスを続けた後、いよいよ待望のヴォーカル・ナンバーが始まります。曲目は前もって決めておらず、すべてモーズの気分次第。すべてのレパートリーには通し番号がついていて、モーズは曲名ではなく、その番号をメンバーに告げます。モーズの歌唱は、決して絶唱型ではありません。ホーギー・カーマイケル、チェット・ベイカーらに通じる、

「力まず、つぶやくように歌う」感じです。しかしその歌声が、どういうわけか濃厚なブルースにピッタリと合うのです。「かっこいいなあ、粋だなあ」と思いながら、ぼくは「HELLO THERE, UNIVERSE」や「YOUR MIND IS ON VACATION」、マディ・ウォーターズのカヴァー「ROLLING STONE」等に酔いしれました。

先に紹介した面々のほかに、ヴァン・モリソン、ピート・タウンゼント、エルヴィス・コステロ等からも敬愛されているモーズですが、“御本尊”のパフォーマンスは年輪と風格が違います。偉大なるモーズの生演奏を、ぜひ間近でどうぞ。
(原田 2012 5.25)


● 5.25fri.-5.27sun.
MOSE ALLISON


mose_002.jpg



2012/05/22

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND - - report : BRIAN B...

ブライアン・ブレイド - BRIAN BLADEH
ブライアン・ブレイド - BRIAN BLADE


公演初日リポート:
BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND



あの細くてしなやかな体に、いったいどれだけの才能が詰まっているのでしょう。ドラマー、シンガー、ギタリスト、作曲家、プロデューサーとして八面六臂の活動を続けるブライアン・ブレイドが、自身の“フェロウシップ・バンド”と共にブルーノート東京に登場しました。

彼がアルバム『フェロウシップ』を発表したのは1998年のこと。もうそれから15年近くが経つわけですが、今回の来日メンバーであるジョン・カワード(ピアノ)、マイロン・ウォルデン(アルト・サックス、バス・クラリネット)、メルヴィン・バトラー(テナー・サックス、ソプラノ・サックス)、クリス・トーマス(べース)はそこにも参加していた面々です。いかにこのグループの結束が強いかがおわかりいただけることでしょう。不動のラインナップのまま、フェロウシップ・バンドはその音楽世界を拡げ、深めているのです。

ぼくが見た初日のファースト・セットでは4曲が演奏されました。3部構成の組曲「MERCY SUITE」と、2008年発表アルバムのタイトル曲である「SEASON OF CHANGES」はそれぞれ、30分は超えていたはずです。しかし“長い”という気持ちはまったく起きませんでした。それどころかぼくは、“もう終わっちゃうの? 一晩中でも演奏してくれればいいのに!”と思いました。そのくらい密度が濃く、一瞬も聴き逃せない瞬間が連続したのです。

曲ごとにMCを入れず(MCはラストに1度きり)、全プログラムがほぼ連続して演奏されたこともプラスに作用していました。「ひとつの厳粛な儀式に立ち会っているような」といえばいいのでしょうか、まさしくその場で数々の音が創造され、それが音楽として昇華されていく過程を目の当たりにしたような感じです。

自身のグループではテナー・サックスを吹くことの多いマイロンがリキの入ったアルト・プレイをタップリ聴かせ、メルヴィンはハーモニクス(倍音)奏法を取り入れた超絶ブロウを繰り広げました。クリスは弓弾きでも才能を発揮し、ジョンのピアノは無伴奏パートで異彩を放ちました(足踏みオルガンは、舞台上にセットされてはいたものの演奏しませんでした)。

そしてブライアンのドラムスは相変らず驚嘆のひとことにつきます。こんなに一打一打がキメ細かく、ダイナミクス(音量の緩急)に富んでいるドラマーを、ぼくはほかに知りません。スティック、ブラッシュ、マレット、ブラスティックを細心の配慮で持ち替え、おまけに鈴も鳴らし、パートによってはスネア・ドラムに布をかぶせながら、羽毛のようにやわらかな音から雷鳴のような大音響までを瞬時に立ち上げます。ドラムってこんなに雄弁な楽器なのか、と、ぼくは改めて深く感じ入りました。

フェロウシップ・バンドの音楽にはさまざまな要素があります。それはクラシカルでもあり、フォーキーでもあり、ファンキー、ソウルフル、スピリチュアル、グルーヴィーでもあり・・・。メンバーは、それぞれが得てきた幅広い音楽体験のすべてをここに注いでいるのでしょう。ぼくは彼らのライヴを何度か見ていますが、いつも新鮮な感動を受けています。「現代のジャズ表現」を肌で感じたい方は、ぜひ万難を廃してお越しください!
(原田 2012 5.22)


● 5.21mon.-5.23wed.
BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND
☆ 参考:セットリストはこちら


ロバート・ランドルフ - ROBERT RANDOLPH


2012/05/19

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FABRIZIO BOSSO - - report : FABRIZI...

FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\
FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\


公演初日リポート:FABRIZIO BOSSO



最新作『ニーノ・ロータに捧ぐ〜ゴッド・ファーザー』が大好評の俊英トランペッター、ファブリッツィオ・ボッソが昨日から白熱のステージを繰り広げています。

共演者はロレンツォ・トゥッチ(ドラムス)、クラウディオ・フィリッピーニ(ピアノ)、トンマーゾ・スカナピエコ(ベース)。ロレンツォの名前は、ボッソ・ファンにはすっかりおなじみだと思います。ハイ・ファイヴ等、数多くのプロジェクトで共演を重ねてきた盟友です。

クラウディオ(1982年生まれ)はCAM Jazz他にリーダー・アルバムを持ち、イタリア・ジャズ・ピアノの重鎮であるエンリコ・ピエラヌンツィから高く評価されています。トンマーゾ(1971年生まれ)はハイ・ファイヴのサックス奏者、ダニエレ・スカナピエコの実弟。兄弟バンドでも活動するほか、ロイ・ハーグローヴとの共演歴もあります。

ジャケットを着て登場することの多いボッソですが、この日はいたってラフな着こなしです(それでも伊達男ぶりは相変らずですが)。トランペットの先にはコンタクト・マイクがつけられていて、思いのほか激しく動き回りながら演奏していました。「ボッソって、こんなにワイルドだったのか」と、ぼくは嬉しい驚きを覚えました。

オープニングは、1985年頃のウィントン・マルサリス・カルテットのサウンドをボッソ風に解釈したもの、といえばいいでしょうか。いわゆるブルース・コードなのですが、テンポが頻繁に変わり、ソリストが無伴奏で演奏するパートも盛り込まれています。ウィントンをこよなく尊敬するボッソだけに、ぜひ取り組んでみたかったフォーマットなのでしょう。

続いては新作『ニーノ・ロータに捧ぐ』を中心としたコーナーです。まず飛び出したのは「IL GATTOPARDO」のメロディです。巨匠ニーノ・ロータの名旋律を、ボッソはこれ以上ないほど優しく吹きあげます。しかしアドリブはあくまでもアグレッシヴ、ハードに迫ります。リズムは3拍子なのですが、なんといったらいいのでしょう、「メンバーそれぞれが呼吸をあわせてワルツを演奏している」というよりも、「各人がワルツ・テンポを体内に秘めながら、自由奔放に他のミュージシャンに絡んでいる」という感じなのです。それがたまらなくスリリングでした。

そして「IL VOLO」ではエフェクター(ディレイ)を使った幻想的なプレイを披露。「ゴッドファーザー 愛のテーマ」という邦題で有名な「IL PADRINO」は、最初クラウディオとのデュオによるスロー・テンポで始め、やがてメンバー全員が一丸となって燃え上がる4ビートのアップ・テンポに移行する、という二部構成で楽しませてくれました。

MCでメンバーを紹介した後、鳴り止まない拍手に応えるかのように、ボッソは右手で握ったトランペットを前に突き出し、ガッツ・ポーズをとりました。いったい彼はどこまですごくなっていくのでしょう。ボッソの“炎”を、ぜひご体感ください!
(原田 2012 5.18)


● 5.18fri.-5.20sun.
FABRIZIO BOSSO
☆ 参考:セットリストはこちら

FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\



2012/05/17

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ERIC BENET - - report : ERIC BE...

ERIC BENET - エリック・ベネイ
ERIC BENET - エリック・ベネイ


公演初日リポート:
ERIC BENÉT



自身のレーベル、Jordan House Recordsから発表された最新アルバム『ザ・ワン』も大好評。現代R&B界を牽引する大エンターテイナー、エリック・ベネイが日本に戻ってきてくれました。

開演前から、場内は押すな押すなの大盛況。女性リスナーやカップルのお客様が多めなのも彼のライヴの特徴ですが、この日はいつもよりも外国人のオーディエンスがさらに多かった気がします。バンドの演奏が始まり、観客の間を縫ってエリックが登場すると、もうすでにスタンディング・オヴェイションの嵐です。ベスト・ドレッサーとしても知られる彼は、今回もスーツとネクタイでビシッとキメています。

2002年のブラック・リール賞に輝いた「LOVE DON'T LOVE ME」を歌った後、“最初のアルバムからの曲だ”といいながら「SPIRITUAL THANG」、“この曲を、とくに女性の皆様に捧げたい”と「CHOCOLATE LEGS」を熱唱。いずれもエリックのライヴでは欠かせないナンバーで、ぼくも何度かナマで聴いたことがありますが、この日の歌唱はお客さんの熱狂的な反応を受けてか、以前にも増してエネルギッシュでエモーショナルだったように感じられました。

続くMCで、エリックはこんなフレーズを口にしました。“公園を歩いていて、季節が春に変わることに気づいたとき。暗闇を歩いていて、恋人たちの仲むつまじい姿が見えたとき。そんなとき、ぼくはこんな気持ちになる。フィール・ライク・メイキン・ラヴ”。

外国人オーディエンスの間からすかさず“キャーッ!”という声があがります。ロバータ・フラックやマリーナ・ショウでおなじみ、「FEEL LIKE MAKING LOVE」のカヴァーです。10年ほど前にはディアンジェロもとりあげていましたが、エリックのヴァージョンも極上の出来。ほんとうに彼は“ラヴ”という言葉が似合います。

その後も新作からの「Harriet Jones」、「Real Love」、アース・ウィンド&ファイアー、オージェイズ、バーケイズ等の大先輩たちに敬意を表した「FEEL GOOD」、すべてのオーディエンスがコーラスで参加したといっても過言ではない「DON'T LET GO」など黄金のナンバーが続きます。“結婚式でよく歌われているんだよ”という前置きで始まった「SPEND MY LIFE WITH YOU」(1999年、R&Bチャート第1位)は、デニース・ジャネイとのツイン・ヴォーカルで聴かせてくれました。

伸びやかな地声、“本当に男性の声なのだろうか?”と不思議になってしまうほど美しく透き通ったファルセット、そしてセクシーでダンディなパフォーマンス。エリック・ベネイは今夜も、完璧なステージで「ブルーノート東京」を大いに沸かせてくれることでしょう。
(原田 2012 5.16)


● 5.16wed.-5.17thu.
ERIC BENÉT
☆ 参考:セットリストはこちら


ERIC BENET - エリック・ベネイ


2012/05/15

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RICHARD BONA - - report : RICHARD...

リチャード・ボナ - RICHARD BONA
リチャード・ボナ - RICHARD BONA


公演初日リポート:
RICHARD BONA and MANDEKAN CUBANO
with KAZUNORI KUMAGAI



ベース、ヴォーカル、曲作り・・・・あらゆる面で才能を発揮する人気者リチャード・ボナが、新ユニット“マンデカン・クバーノ”を率いて来日しています。このユニット、名前からもわかるようにキューバ音楽やサルサ寄りのユニットで、なかでもピアニストのオスマニ・パレデスには最注目株という声もあがっています(彼目当てのオーディエンスも少なくなかったようです)。

ボナはアフリカ・カメルーンに生まれ、ヨーロッパで腕を磨き、現在はニューヨークに拠点を置いています。『TIKI』というアルバムでは、さらにブラジル音楽の要素も大きく取り入れておりましたが、彼がここまで真正面から“ラテン”に取り組んだことは“マンデカン・クバーノ”までなかったのではないでしょうか。いつものボナのライヴなら必ずあるはずのキーボード、ギター、ドラムス等がなく、リズムは主にティンバレスとコンガで奏でられ、鍵盤楽器はパレデスが弾くアコースティック・ピアノしかありません。

オープニングは初期のアルバム『Reverence』に入っていた「EKWA MWATO (AFFIRMATION OF THE SPIRIT)」。いきなりデニス・エルナンデスのトランペットが鮮やかなハイノート(超高音)を繰り出します。ふたりのパーカッション奏者のプレイが絶妙に絡み合い、ボナの5弦ベースが唸りをあげると、この曲がまるで大昔からのラテン・スタンダード・ナンバーのように聴こえてきます。そして今回のステージの大きな特徴は、全曲でボナのヴォーカルが聴けたことです。「BOLERO」ではベースから手を離して椅子に座り、ピアノとのデュオで絶品のバラードを聴かせてくれました。

ボナ最大の人気曲といっていい「O SEN SEN SEN」が途中まで奏でられた後、ボナのMCに導かれてスペシャル・ゲストの熊谷和徳が登場します。赤いコスチュームは、この夜の情熱的なサウンドにぴったりです。超絶的なフレーズを、バンドのメンバーと共に鮮やかなユニゾンでキメていく熊谷のタップ技に改めて脱帽させられました。プログラム後半では、ボナと熊谷によるまったくの即興パフォーマンスも楽しむことができました。「以前から互いに関心を持っていた」という両者が、この共演によって真の友人関係を築いたことは間違いのないところでしょう。

公演は本日も行なわれます。この公演でラテン音楽〜サルサにハマった方には、9月に開催されるエディ・パルミエリ・サルサ・オーケストラの公演もぜひお勧めいたします。
(原田 2012 5.14)


● 5.14mon.-5.15tue.
RICHARD BONA and MANDEKAN CUBANO
with KAZUNORI KUMAGAI
☆ 参考:セットリストはこちら


RICHARD BONA - リチャード・ボナ


12