BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 矢野顕子 - - report : AKIKO Y...

2012/08/18

AKIKO YANO - 矢野顕子
AKIKO YANO - 矢野顕子


公演初日リポート:
AKIKO YANO TRIO
featuring WILL LEE & CHRIS PARKER



今年もこの季節がやってきました。ニューヨーク在住、唯一無二の音楽道を歩み続けるシンガー・ソングライター/ピアニストの矢野顕子が、ゆかいな仲間たちを引き連れて行なう「ブルーノート東京」里帰り公演です。

ベース&ヴォーカルのウィル・リー、ドラムスのクリス・パーカーとのコンビネーションは“鉄壁”のひとことに尽きます。彼女がMCをしているときに、ウィルが「どんなことをしゃべっているの?」と英語で茶々を入れていましたが、演奏を聴く限りでは、ウィルもクリスも日本語を理解して演奏しているとしか思えません。それほど彼らは矢野顕子が歌う日本語歌詞の微妙なニュアンスを捉え、これ以上ないほど絶妙なサポートを聴かせてくれるのです。「あと25年間はこの3人で演奏していたいね」とウィルは語っていましたが、それは全メンバー、全オーディエンスに共通する願いでもありましょう。

ぼくが接した初日ファースト・セットは、2002年発表のシングル「Dreaming Girl」から始まりました。続いて最新ライヴ・ベスト盤『荒野の呼び声 -東京録音-』に入っている「こんなところにいてはいけない」、20年来のレパートリーである「いいこ いいこ」と続きます。「ウィルとクリスと一緒のライヴで、こんなに日本語の曲が続いたことは珍しいのでは?」と思っていると、次に英語詞の「Full Moon Tomorrow」が飛び出しました。途中に、RCサクセションの「多摩蘭坂」(日本語)を挿入しながらの展開は、まるで組曲のようです。ヴォーカルとピアノが絡み合い、渦を巻くようなグルーヴを生み出します。

今回のライヴでは、いわゆるピアノ弾き語りのほかに、スタンド・マイクを使ったパフォーマンスも見ることができました。ブラッシュ・ワークを駆使したドラムスだけをバックに前半を歌いきった「Spring Spring Spring」、やはり前半をドラムスとのデュオで構成し、自由奔放なスキャットを繰り広げた「ポケットいっぱいの秘密」は、ただでさえ多彩なプログラムに、さらなる変化を付け加えていたと思います。

そしてアンコールでは、近年のライヴでは定番となった感のある「People Got To Be Free」と「Gasoline And Matches」を披露。ウィルと息の合ったヴォーカル・デュオを聴かせてくれました。公演は22日まで続きます(20日はオフ)。各セット、いったいどんな曲で楽しませてくれるのか。ますます期待が高まります。
(原田 2012 8.18)


● 8.18sat.-8.22wed.(8.20mon.OFF)
AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER
☆ 参考:セットリストはこちら


AKIKO YANO - 矢野顕子


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2011/08/17

矢野顕子 - AKIKO YANO
矢野顕子 - AKIKO YANO


公演初日リポート:矢野顕子トリオ・フィーチャリング・ウィル・リー&クリス・パーカー



矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカーの“最強トリオ”が、今年も戻ってきてくれました。

ウィルとクリスといえば、常に数多くの才人から共演を望まれている最高峰のセッション・ミュージシャン。彼らを引き連れてツアーする(アメリカ国外に連れ出す)というだけでもすごいのに、それを何年も継続している矢野顕子には本当に恐れ入ります。そしてウィルとクリスも、彼女との演奏を存分に楽しみ、まるで鼎談するように音を出していることが、ステージを見ていると強く伝わってきます。

「いったいどう展開するんだろう」というスリル、「ああなるほど、こうくるのか」という納得が、トリオがプレイするどの曲にも感じられます。「いいこ いいこ」は7拍子となり、「変わるし」にはどこのジャズ・ナンバーなのだろうと思えるほどアドリブが満載されていました。皆、とにかく臨機応変です。とんでもなく高度なことを、サラッと、笑顔でやる。そこがなんとも、かっこいいではありませんか。

カヴァー曲がまた、面白いのです。どちらかというとオルタナティヴ・カントリー畑のシンガーとして知られるルシンダ・ウィリアムス(エルヴィス・コステロが「彼女は5本の指に入るシンガー・ソングライターだ」と賞賛しました)の「JOY」は、アヴァンギャルドすれすれです。ライヴの本編ラストでは、ギター・リフが命であるはずの、キンクス「YOU REALLY GOT ME」を取りあげ、完全な矢野トリオ・サウンドに衣替えしていたのにも驚かされました。

クリスはスティックのほか、ブラッシュも使って妙技を披露。ウィルはバック・コーラスはもちろん、ハーモニカも吹き、「Happiness」ではベースについているピックアップ・フェンス(金属製のカバー)を叩いてパーカッションのような音も出していました。おそらくこのトリオには、「いいサウンドにつながるのであれば、なにをやってもいい」というルールがあるのでしょう。
公演は20日まで続きます(18日はオフ)。
(原田 2011 8.16)


● 8.16tue.-8.20sat. (8.18thu. OFF)
矢野顕子トリオ・フィーチャリング・ウィル・リー&クリス・パーカー


AKIKO YANO - 矢野顕子


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2010/08/18

矢野顕子 - AKIKO YANO
矢野顕子 - AKIKO YANO


公演初日リポート:AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカー。この“黄金トリオ”の公演が、昨日から始まっています。去年に続いて「ブルーノート東京」のステージに立った3人ですが、今回も本当に興味をそそりまくる、聴き応えが波のように押し寄せてくるようなサウンドで楽しませてくれます。

メロディとメロディの間からまた別のメロディが浮かび上がり、ハーモニーとハーモニーの間をまた別のハーモニーが漂う感じといえばいいでしょうか。硬軟も伸縮も自在のトリオ・ミュージックが味わえるのです。オープニングの「A BEAUTIFUL MORNING」は、この9月に「ブルーノート」初登場を果たすラスカルズのレパートリー。これを100%矢野顕子トリオのカラーに染めて、オーディエンスの心をわしづかみにします。

続いてボックス・トップスの「THE LETTER」(あの娘のレター)、沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」、ベンチャーズ歌謡の「京都慕情」などを、ワン&オンリーに解釈。間奏に入ると、彼らの持っている“即興魂”が一気に噴出します。矢野のアドリブ・フレーズにすかさずウィルが反応し、クリスが鋭い一打を入れる・・・・国籍、言語、ジャンル、すべて飛び越えた響きは、ただただ爽快です。

ヴォーカリストとしても高い評価を集めるウィル・リーは、ラルフ・マクドナルドが作曲し、グローヴァー・ワシントンJr.とビル・ウィザースのコンビで大ヒットした「JUST THE TWO OF US」でベースの弾き語りを披露。6月にライアン・ショウが「ブルーノート東京」で歌ったことも記憶に新しいナンバーですが、まさかこれをウィルの渋い歌声で聴くことになろうとは思いませんでした。「ウィル・リーのリード・ヴォーカルにバック・コーラスをつける矢野顕子」が味わえるなんて、なんと贅沢でレアな体験なのでしょう。

後半では再びラスカルズの「PEOPLE GOT BE FREE」が演奏され、ラストの「ROSE GARDEN」では3人とも“これでもか、これでもか”というほど超絶フレーズのてんこ盛りでした。実力者同士だからこそ織り成すことのできる、ユーモアたっぷりの真剣勝負は21日まで続きます(19日はオフ)。

(原田 2010 /8/17)

● 8.17tue.-8.21sat.(8.19thu.OFF)
AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

矢野顕子 - AKIKO YANO


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2009/08/20

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矢野顕子トリオ-AKIKO YANO TRIO


● 公演初日リポート:矢野顕子トリオ



矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカー。

名前を書き連ねるだけで、カラフルな音の応酬が聴こえてきそうです。と同時に、ぼくにとってこのメンバーは、“猫に縁のある方々”でもあります。

矢野顕子のアルバム『Oui Oui』のパッケージには、かごに入った2匹の猫が登場しています。クリス・パーカー率いる“Toph-E & The Pussycats”のファースト・アルバム『Live In Detroit』のジャケットにも猫があしらわれていました。ウィル・リーは、この“子猫バンド”にも参加しています。
3人とも相当の猫好きに違いない。ぼくはそう確信しながら、凄腕たちが紡ぐ技のじゃれあい、なつきあいに聴き入ったのでした。

矢野顕子がトリオ編成で「ブルーノート東京」に登場するのは2年ぶりです。そのときはアンソニー・ジャクソン、クリフ・アーモンドとの共演でした。どこへ連れて行かれるかわからないような、とてもスリリングなひとときだったのを覚えています。が、今回はなんというのでしょう、ライヴならではのスリルはそのままながら、よりファンキーな、弾力性を増したサウンドを楽しむことができました。
シンガーとしても著名なウィルが参加したことで、ハモリをフィーチャーした曲が増えたことも今年度の特徴です。「NEVER MY LOVE」(アソシエイションのカヴァー)、ニューオリンズ・ファンク風に料理された「THE LETTER」(ボックス・トップスのカヴァー。邦題「あの娘のレター」)等、’60年代のアメリカン・ヒッツが、“いまの表現”として蘇ってゆきます。ウィルのベース・プレイは、至芸のかたまりというべきもの。16分音符を駆使したバッキングも最高ですが、スロー・ナンバーにおけるロング・トーンの美しさにも心底しびれました。チェロの合奏団を、まるでエレクトリック・ベース1本で表現しているかのようです。

もちろんクリス・パーカーのドラムスも絶品でした。「ごはんができたよ」では前半をタムの連打で(ハイハットでリズムをキープしながら)、後半をシンバル中心で盛り上げていきます。5枚のシンバル、2個のスネアを駆使した彼のドラミングは、とにかくよく歌います。クリスは’70年代、伝説のグループ“スタッフ”に在籍して、スティーヴ・ガッドとツイン・ドラム編成で演奏していました。ガッドの持ち味を引き立て、同時に自分の魅力も存分にアピールするクリスは本当に見事でした。その懐の深さは、今なお光り輝いています。クリスほどチーム・プレイの見事なドラマーを、ぼくはほかに思いつきません。

曲目は本番直前に決まったとのことですが、「BAKABON」、「ROSE GARDEN」、先に触れた「ごはんができたよ」など、おなじみの曲もたっぷり聴くことができました(セカンド・セットでは、忌野清志郎に捧げた「きよしちゃん」も披露されました)。なにしろ矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカーです。この3人がライヴで顔を合わせるのは本公演が初めてです。一体なにが飛び出すか、どんな曲がどんな装いで現れるか。最終日のラスト・セットまで、一瞬も気の抜けない世界が繰り広げられることでしょう。
(原田 2009/8/19)


● AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER


矢野顕子トリオ-AKIKO YANO TRIO