BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND - - report : BRIAN B...

2012/05/22

ブライアン・ブレイド - BRIAN BLADEH
ブライアン・ブレイド - BRIAN BLADE


公演初日リポート:
BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND



あの細くてしなやかな体に、いったいどれだけの才能が詰まっているのでしょう。ドラマー、シンガー、ギタリスト、作曲家、プロデューサーとして八面六臂の活動を続けるブライアン・ブレイドが、自身の“フェロウシップ・バンド”と共にブルーノート東京に登場しました。

彼がアルバム『フェロウシップ』を発表したのは1998年のこと。もうそれから15年近くが経つわけですが、今回の来日メンバーであるジョン・カワード(ピアノ)、マイロン・ウォルデン(アルト・サックス、バス・クラリネット)、メルヴィン・バトラー(テナー・サックス、ソプラノ・サックス)、クリス・トーマス(べース)はそこにも参加していた面々です。いかにこのグループの結束が強いかがおわかりいただけることでしょう。不動のラインナップのまま、フェロウシップ・バンドはその音楽世界を拡げ、深めているのです。

ぼくが見た初日のファースト・セットでは4曲が演奏されました。3部構成の組曲「MERCY SUITE」と、2008年発表アルバムのタイトル曲である「SEASON OF CHANGES」はそれぞれ、30分は超えていたはずです。しかし“長い”という気持ちはまったく起きませんでした。それどころかぼくは、“もう終わっちゃうの? 一晩中でも演奏してくれればいいのに!”と思いました。そのくらい密度が濃く、一瞬も聴き逃せない瞬間が連続したのです。

曲ごとにMCを入れず(MCはラストに1度きり)、全プログラムがほぼ連続して演奏されたこともプラスに作用していました。「ひとつの厳粛な儀式に立ち会っているような」といえばいいのでしょうか、まさしくその場で数々の音が創造され、それが音楽として昇華されていく過程を目の当たりにしたような感じです。

自身のグループではテナー・サックスを吹くことの多いマイロンがリキの入ったアルト・プレイをタップリ聴かせ、メルヴィンはハーモニクス(倍音)奏法を取り入れた超絶ブロウを繰り広げました。クリスは弓弾きでも才能を発揮し、ジョンのピアノは無伴奏パートで異彩を放ちました(足踏みオルガンは、舞台上にセットされてはいたものの演奏しませんでした)。

そしてブライアンのドラムスは相変らず驚嘆のひとことにつきます。こんなに一打一打がキメ細かく、ダイナミクス(音量の緩急)に富んでいるドラマーを、ぼくはほかに知りません。スティック、ブラッシュ、マレット、ブラスティックを細心の配慮で持ち替え、おまけに鈴も鳴らし、パートによってはスネア・ドラムに布をかぶせながら、羽毛のようにやわらかな音から雷鳴のような大音響までを瞬時に立ち上げます。ドラムってこんなに雄弁な楽器なのか、と、ぼくは改めて深く感じ入りました。

フェロウシップ・バンドの音楽にはさまざまな要素があります。それはクラシカルでもあり、フォーキーでもあり、ファンキー、ソウルフル、スピリチュアル、グルーヴィーでもあり・・・。メンバーは、それぞれが得てきた幅広い音楽体験のすべてをここに注いでいるのでしょう。ぼくは彼らのライヴを何度か見ていますが、いつも新鮮な感動を受けています。「現代のジャズ表現」を肌で感じたい方は、ぜひ万難を廃してお越しください!
(原田 2012 5.22)


● 5.21mon.-5.23wed.
BRIAN BLADE & THE FELLOWSHIP BAND
☆ 参考:セットリストはこちら


ロバート・ランドルフ - ROBERT RANDOLPH


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FABRIZIO BOSSO - - report : FABRIZI...

2012/05/19

FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\
FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\


公演初日リポート:FABRIZIO BOSSO



最新作『ニーノ・ロータに捧ぐ〜ゴッド・ファーザー』が大好評の俊英トランペッター、ファブリッツィオ・ボッソが昨日から白熱のステージを繰り広げています。

共演者はロレンツォ・トゥッチ(ドラムス)、クラウディオ・フィリッピーニ(ピアノ)、トンマーゾ・スカナピエコ(ベース)。ロレンツォの名前は、ボッソ・ファンにはすっかりおなじみだと思います。ハイ・ファイヴ等、数多くのプロジェクトで共演を重ねてきた盟友です。

クラウディオ(1982年生まれ)はCAM Jazz他にリーダー・アルバムを持ち、イタリア・ジャズ・ピアノの重鎮であるエンリコ・ピエラヌンツィから高く評価されています。トンマーゾ(1971年生まれ)はハイ・ファイヴのサックス奏者、ダニエレ・スカナピエコの実弟。兄弟バンドでも活動するほか、ロイ・ハーグローヴとの共演歴もあります。

ジャケットを着て登場することの多いボッソですが、この日はいたってラフな着こなしです(それでも伊達男ぶりは相変らずですが)。トランペットの先にはコンタクト・マイクがつけられていて、思いのほか激しく動き回りながら演奏していました。「ボッソって、こんなにワイルドだったのか」と、ぼくは嬉しい驚きを覚えました。

オープニングは、1985年頃のウィントン・マルサリス・カルテットのサウンドをボッソ風に解釈したもの、といえばいいでしょうか。いわゆるブルース・コードなのですが、テンポが頻繁に変わり、ソリストが無伴奏で演奏するパートも盛り込まれています。ウィントンをこよなく尊敬するボッソだけに、ぜひ取り組んでみたかったフォーマットなのでしょう。

続いては新作『ニーノ・ロータに捧ぐ』を中心としたコーナーです。まず飛び出したのは「IL GATTOPARDO」のメロディです。巨匠ニーノ・ロータの名旋律を、ボッソはこれ以上ないほど優しく吹きあげます。しかしアドリブはあくまでもアグレッシヴ、ハードに迫ります。リズムは3拍子なのですが、なんといったらいいのでしょう、「メンバーそれぞれが呼吸をあわせてワルツを演奏している」というよりも、「各人がワルツ・テンポを体内に秘めながら、自由奔放に他のミュージシャンに絡んでいる」という感じなのです。それがたまらなくスリリングでした。

そして「IL VOLO」ではエフェクター(ディレイ)を使った幻想的なプレイを披露。「ゴッドファーザー 愛のテーマ」という邦題で有名な「IL PADRINO」は、最初クラウディオとのデュオによるスロー・テンポで始め、やがてメンバー全員が一丸となって燃え上がる4ビートのアップ・テンポに移行する、という二部構成で楽しませてくれました。

MCでメンバーを紹介した後、鳴り止まない拍手に応えるかのように、ボッソは右手で握ったトランペットを前に突き出し、ガッツ・ポーズをとりました。いったい彼はどこまですごくなっていくのでしょう。ボッソの“炎”を、ぜひご体感ください!
(原田 2012 5.18)


● 5.18fri.-5.20sun.
FABRIZIO BOSSO
☆ 参考:セットリストはこちら

FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ERIC BENET - - report : ERIC BE...

2012/05/17

ERIC BENET - エリック・ベネイ
ERIC BENET - エリック・ベネイ


公演初日リポート:
ERIC BENÉT



自身のレーベル、Jordan House Recordsから発表された最新アルバム『ザ・ワン』も大好評。現代R&B界を牽引する大エンターテイナー、エリック・ベネイが日本に戻ってきてくれました。

開演前から、場内は押すな押すなの大盛況。女性リスナーやカップルのお客様が多めなのも彼のライヴの特徴ですが、この日はいつもよりも外国人のオーディエンスがさらに多かった気がします。バンドの演奏が始まり、観客の間を縫ってエリックが登場すると、もうすでにスタンディング・オヴェイションの嵐です。ベスト・ドレッサーとしても知られる彼は、今回もスーツとネクタイでビシッとキメています。

2002年のブラック・リール賞に輝いた「LOVE DON'T LOVE ME」を歌った後、“最初のアルバムからの曲だ”といいながら「SPIRITUAL THANG」、“この曲を、とくに女性の皆様に捧げたい”と「CHOCOLATE LEGS」を熱唱。いずれもエリックのライヴでは欠かせないナンバーで、ぼくも何度かナマで聴いたことがありますが、この日の歌唱はお客さんの熱狂的な反応を受けてか、以前にも増してエネルギッシュでエモーショナルだったように感じられました。

続くMCで、エリックはこんなフレーズを口にしました。“公園を歩いていて、季節が春に変わることに気づいたとき。暗闇を歩いていて、恋人たちの仲むつまじい姿が見えたとき。そんなとき、ぼくはこんな気持ちになる。フィール・ライク・メイキン・ラヴ”。

外国人オーディエンスの間からすかさず“キャーッ!”という声があがります。ロバータ・フラックやマリーナ・ショウでおなじみ、「FEEL LIKE MAKING LOVE」のカヴァーです。10年ほど前にはディアンジェロもとりあげていましたが、エリックのヴァージョンも極上の出来。ほんとうに彼は“ラヴ”という言葉が似合います。

その後も新作からの「Harriet Jones」、「Real Love」、アース・ウィンド&ファイアー、オージェイズ、バーケイズ等の大先輩たちに敬意を表した「FEEL GOOD」、すべてのオーディエンスがコーラスで参加したといっても過言ではない「DON'T LET GO」など黄金のナンバーが続きます。“結婚式でよく歌われているんだよ”という前置きで始まった「SPEND MY LIFE WITH YOU」(1999年、R&Bチャート第1位)は、デニース・ジャネイとのツイン・ヴォーカルで聴かせてくれました。

伸びやかな地声、“本当に男性の声なのだろうか?”と不思議になってしまうほど美しく透き通ったファルセット、そしてセクシーでダンディなパフォーマンス。エリック・ベネイは今夜も、完璧なステージで「ブルーノート東京」を大いに沸かせてくれることでしょう。
(原田 2012 5.16)


● 5.16wed.-5.17thu.
ERIC BENÉT
☆ 参考:セットリストはこちら


ERIC BENET - エリック・ベネイ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RICHARD BONA - - report : RICHARD...

2012/05/15

リチャード・ボナ - RICHARD BONA
リチャード・ボナ - RICHARD BONA


公演初日リポート:
RICHARD BONA and MANDEKAN CUBANO
with KAZUNORI KUMAGAI



ベース、ヴォーカル、曲作り・・・・あらゆる面で才能を発揮する人気者リチャード・ボナが、新ユニット“マンデカン・クバーノ”を率いて来日しています。このユニット、名前からもわかるようにキューバ音楽やサルサ寄りのユニットで、なかでもピアニストのオスマニ・パレデスには最注目株という声もあがっています(彼目当てのオーディエンスも少なくなかったようです)。

ボナはアフリカ・カメルーンに生まれ、ヨーロッパで腕を磨き、現在はニューヨークに拠点を置いています。『TIKI』というアルバムでは、さらにブラジル音楽の要素も大きく取り入れておりましたが、彼がここまで真正面から“ラテン”に取り組んだことは“マンデカン・クバーノ”までなかったのではないでしょうか。いつものボナのライヴなら必ずあるはずのキーボード、ギター、ドラムス等がなく、リズムは主にティンバレスとコンガで奏でられ、鍵盤楽器はパレデスが弾くアコースティック・ピアノしかありません。

オープニングは初期のアルバム『Reverence』に入っていた「EKWA MWATO (AFFIRMATION OF THE SPIRIT)」。いきなりデニス・エルナンデスのトランペットが鮮やかなハイノート(超高音)を繰り出します。ふたりのパーカッション奏者のプレイが絶妙に絡み合い、ボナの5弦ベースが唸りをあげると、この曲がまるで大昔からのラテン・スタンダード・ナンバーのように聴こえてきます。そして今回のステージの大きな特徴は、全曲でボナのヴォーカルが聴けたことです。「BOLERO」ではベースから手を離して椅子に座り、ピアノとのデュオで絶品のバラードを聴かせてくれました。

ボナ最大の人気曲といっていい「O SEN SEN SEN」が途中まで奏でられた後、ボナのMCに導かれてスペシャル・ゲストの熊谷和徳が登場します。赤いコスチュームは、この夜の情熱的なサウンドにぴったりです。超絶的なフレーズを、バンドのメンバーと共に鮮やかなユニゾンでキメていく熊谷のタップ技に改めて脱帽させられました。プログラム後半では、ボナと熊谷によるまったくの即興パフォーマンスも楽しむことができました。「以前から互いに関心を持っていた」という両者が、この共演によって真の友人関係を築いたことは間違いのないところでしょう。

公演は本日も行なわれます。この公演でラテン音楽〜サルサにハマった方には、9月に開催されるエディ・パルミエリ・サルサ・オーケストラの公演もぜひお勧めいたします。
(原田 2012 5.14)


● 5.14mon.-5.15tue.
RICHARD BONA and MANDEKAN CUBANO
with KAZUNORI KUMAGAI
☆ 参考:セットリストはこちら


RICHARD BONA - リチャード・ボナ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , STAX! featuring STEVE CROPPER,DONALD"D... - - report : STAX! f...

2012/05/09

STAX! featuring STEVE CROPPER,DONALD
STAX! スティーヴ・クロッパー、ドナルド“ダック”ダン&エディ・フロイド - STAX! STEVE CROPPER,DONALD


公演初日リポート:
STAX!
featuring STEVE CROPPER,
DONALD"DUCK"DUNN & EDDIE FLOYD
@COTTON CLUB


ギターのスティーヴ・クロッパー、ベースのドナルド・ダック・ダン、そしてヴォーカルのエディ・フロイド。1960〜70年代に一時代を築き、世界中の音楽シーンに影響を与えたといっても過言ではない名門、スタックス・レコードの中心人物が今、東京にいます。プロジェクト名はずばり、「STAX!」。本当は昨年、来日する予定だったのですが、震災の影響で流れたので、ちょうど1年ぶりのリベンジ公演ということになります。

ぼくは「コットンクラブ」で行なわれた初日のファースト・セットに足を運びました。メンバーが通路を通ってステージに近寄ってくるだけで、われるような歓声が起こります。この1年間、ぼくらファンは彼らが来るのを本当に待ち焦がれていました。スティーヴもダック・ダンも、60年代当時の写真と比べるとずいぶん横幅が増しています。しかしワン&オンリーのサウンド、グルーヴ感は今もまぶしいほど光り輝いています。またダック・ダンは指をネック側ではなく、ブリッジ側においてベースを弾きます。ふつうブリッジ側に近づいてプレイすればするほど、太い音色は得られるものの細部のコントロールは難しい、といわれています。しかしダック・ダンは、素晴らしい楽器コントロールと、太くてクリアな音を併せ持った“これぞソウルフル・ベース”というべきプレイを聴かせてくれました。前半は二人が在籍したブッカーT&ジ・MGズがらみのナンバー(「TIME IS TIGHT」、「GREEN ONNIONS」、「HIP-HUG-HER」)が続きますが、アイザック・ヘイズのバンドで長く活動したレスター・スネルのオルガンは無論ブッカー・T・ジョーンズの代役という域を超えた巨大な存在感を示し、ダック・ダンに“(MGズのオリジナル・ドラマーである)アル・ジャクソンJr.の再来”と賞賛されたスティーヴ・ポッツのドラムスも的確なビートでソリストを盛りたてます。天国のジャクソンも彼の健闘に目を細めたに違いありません。

後半にはいよいよお待ちかね、エディ・フロイドが登場します。あの「KNOCK ON WOOD」を大ヒットさせた伝説のシンガーですね。髪の毛はすっかり白くなりましたが、ソウルとパッションは60年代当時のままという印象を受けました。スタックス時代の仲間であるオーティス・レディングの「DOCK OF THE BAY」、スタックス専属ではありませんでしたがMGズと親交のあったウィルソン・ピケットに提供した「634−5789」(作詞・作曲はエディとクロッパー)等を交えたステージは、さしずめ“ソウル・ミュージック永遠の名曲集”といったところ。オーティスは若くして亡くなり、ピケットも今やこの世の人ではありません。しかしエディは健在で、こうして名曲をナマで届けてくれるのです。なんとありがたいことでしょう。本編ラストは、もちろん「KNOCK ON WOOD」。このオリジナル・レコーディングに参加したフロイド、クロッパー、ダック・ダンが目の前で一緒にこの曲を演奏している・・・気が遠くなりそうな一瞬でした。

公演は本日まで「コットンクラブ」、明日から12日まで「ブルーノート東京」で行われます。皆様、ぜひこの公演に足をお運びいただき、「気が遠くなりそう」になってください!
(原田 2012 5.8)


● 5.10thu.-5.12sat. @BLUE NOTE TOKYO
STAX!
featuring STEVE CROPPER,
DONALD"DUCK"DUNN & EDDIE FLOYD
STAX! featuring STEVE CROPPER,DONALD "DUCK" DUNN & EDDIE FLOYD




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