BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 日野皓正 - - report : TERUMAS...

2012/10/09

日野皓正 - TERUMASA HINO
日野皓正 - TERUMASA HINO


公演初日リポート:
TERUMASA HINO h FACTOR


ただ前だけを向き続ける男、それが日野皓正です。半世紀に及ぶキャリアの中でその都度、時代のトレンドを吸収して、彼ならではの音楽を創りつづけてきました。約1年ぶりの「ブルーノート東京」公演となる今回は、DJ HONDAらと組ん だ“h FACTOR”での登場。目下の最新作『アフターショック』からさらに発展・前進した、アフター『アフターショック』というべき世界を楽しませてくれました。

ステージには左からピアノ、ギター、コントラバス、DJ、エレクトリック・ベース、ギターの各奏者が並びます。こういう編成のバンドは、ほかにないでしょう。そのサウンドはときには大都会のビル群を思わせ、かと思えば果てしない密林を想像させます。「うわ、ファンキーだな」と思った次の瞬間に、とんでもなく抽象的で尖った音が飛び出してくることもあります。
彼らを背にして日野皓正は奔放にトランペットを吹き、パーカッションを叩き、ときにホラ貝をブロウします。そのフレーズ、タイミングはまったく予想がつきません。

説明するでもないですが日野皓正といえば世界的なトランペッターで、ファッション面も含めて日本にジャズのかっこよさを広めた第一人者でもあります。しかしその演奏に、「セレブ感」はありません。まるで新進ミュージシャンのように懸命にプレイし、バンドを煽ります。

この日は新曲に交えて2008年のアルバム『寂光』に入っていた「FUNAKURA」も取りあげられましたが、よほど熱心なファンでも、それに気づいたひとは少ないのではないでしょうか。曲の切れ目(拍手するところ)はいくつかありましたが、ぼくにはすべてのレパートリーが、“この日、はじめて作られた壮大な組曲”に聴こえました。

日野皓正はMCで、このようなことをいいました。「古典的なジャズを楽しみにしてきたひとは、“なんだこれ”というかもしれない。でも自分も70歳。古典をコテンコテンにして、残りの人生は新しく生まれるものを追求したい」。

ニュー・アルバムは目下レコーディング中、来年の春に日野皓正自身のレーベルからリリースされるとのことです。本日は昨日のメンバーに、フライド・プライドの横田明紀男が加わります。トリプル・ギターによる、“h FACTOR”の世 界。さらにエキサイティングな一夜になることでしょう。
(原田 2012 10.8)


● 10.8mon.-10.9tue.
TERUMASA HINO h FACTOR
☆ 参考:セットリストはこちら


TERUMASA HINO - 日野皓正


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2011/07/25

TERUMASA HINO - 日野 皓正
TERUMASA HINO - 日野 皓正


公演初日リポート:日野 皓正
-AFTERSHOCK-


この公演、本当に本当に楽しみにしておりました。日野皓正のAFTERSHOCK公演です。

もちろんぼくは、ライヴに備え、最新作『AFTERSHOCK』を何度か聴いて“予習”しました。しかし、実際のライヴに接すると、“予習”が吹っ飛んでしまいます。CDに収められた楽曲が燃え上がり、昇華して、どんどんどんどん発展していくのです。音楽はナマモノ、生き物であるとは、よくいったものです。おそらく日野皓正以外、ステージ上のミュージシャンすら、演奏がどうなっていくのか、どこでエンディングにたどりつくのか、わかっていないところもあったのではないでしょうか。しかし、これが面白いのです。予定調和や安定といった言葉に真っ向から刃向かうような、アグレッシヴでエキサイティングな演奏に、ぼくは興奮しっぱなしでした。

日野皓正といえば、御存知、超大物です。紫綬褒章など、いろんな賞にも輝いています。昔のヒット曲を昔のようにやっても、お客さんを喜ばせることはできるでしょう。しかし彼は、それをしません。親子ほど歳の離れたミュージシャンたちと組んで、断崖絶壁のようなところに身をおきながら、まさしくその場その場で新しいフレーズを放ってゆきます。ぼくは、その「いちかばちか」、「見る前に跳べ」的なプレイに強くジャズの醍醐味を感じます。

いわゆるテーマ→各メンバーのアドリブ回し→テーマという構成は、ひとつもありません。全員が同時にソロをとり、メロディとリズムを一緒に奏でているようなパフォーマンスが続きます。2台のベースが、dj hondaのターンテーブルが、強烈なポリリズムを刻みます。日野はたまにパーカッションを操る以外、ほとんどトランペットを吹きっぱなしです。指示はその場で各ミュージシャンに与えられます。日野のキューがいつ、どこで飛んでくるのか、それは神のみぞ知るところ。演奏には常に緊張の糸が張り詰められています。しかし、一方で、そのサウンドにはとんでもない自由が含まれているのです。

「あまりにも自由で、ギターを弾いているという意識すら飛んでしまう」と、小沼ようすけはMCで語っていましたが、オーディエンスの皆様も、かなりの方が別世界を旅されたのではないでしょうか。ぼくも、最後の音がやんでからしばらくして、ようやく現実に戻ったような気がしました。

公演は明日までですが、ひとつとして同じ展開のステージはないはずです。キャリア50年にしてなお、「まだ誰もやっていないことをやりたい。今はまだその途中なんだ」と語るミュージシャンが、この世にいったいどのくらいいるでしょう!
(原田 2011.7.25)


● 7.25mon.-7.26tue.
日野 皓正 -AFTERSHOCK-


日野 皓正 - TERUMASA HINO