BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JASMINE KARA - - report : JASMINE...

2012/06/08

JASMINE KARA - ジャスミン・カラ
JASMINE KARA - ジャスミン・カラ


公演初日リポート:
JASMINE KARA
with DJs presented by "Good Music Parlor"
6.7thu. Hiroko Otsuka
6.8fri. Shuya Okino(Kyoto Jazz Massive)
6.9sat. DJ JIN(Rhymester)
6.10sun. DJ Mitsu The Beats(GAGLE/Jazzy Sport Crew)



北欧にものすごくソウルフルな若手女性シンガーがいるらしい。

ぼくがこの話をきいたのは確か、ことしの初めだったと思います。アルバム『Blues Ain't Nothing But A Good Woman Gone Bad』を聴いて、なによりもまず驚いたのが選曲のマニアックさと“男臭さ”。チェス・レーベルゆかりの曲を中心に歌っている、というところにもたまらなく興味を惹かれました。いわゆるブラック・ミュージックの名門レーベルはたくさんありますが、正直いってチェスのサウンドはモータウンやスタックスほどには日本で浸透していないような気がします。しかし“チェスのブルースやロックがなければローリング・ストーンズやビートルズの音楽性は変わっていただろう”といわれるほど、ロック界への影響は絶大です。

ジャスミン・カラは、チェス・レーベルの伝説的プロデューサーであるマーシャル・チェスの監修で、前述アルバムを完成させました。昔から筋金入りのソウル・ミュージック好きだったという彼女にとって、マーシャルとの出会いはまさに“神イベント”だったはずです。ライヴの前半では、彼に捧げた新曲「I LOVE U」も聴くことができました。

今回の初来日公演は、『Blues Ain't Nothing But A Good Woman Gone Bad』からの曲が中心でした。大半がカヴァー・ヴァージョンです。「MY BABE」はリトル・ウォルター、「ORDINARY JOE」はテリー・キャリアー、「GRITS AIN'T GROCERIES」はリトル・ミルトンの歌で広まりました。この3人はいずれも、男気を濃厚に漂わせながら歌う芸風の持ち主です。
ジャスミンは、こうした“男歌”を、女性目線で表現します。彼女の力強い歌声、演奏することが楽しくてたまらないといった感じのバンド・サウンドに耳を傾けながら、「ははあなるほど、オリジナル・ヴァージョンのここがこういうふうになって、女性の歌になってゆくんだな」と、ぼくはひとりうなずいてしまいました。

エンディングではなんと、ダレル・バンクスのカヴァー「OPEN THE DOOR TO YOUR HEART」を聴かせてくれました。ダレルは1970年に32歳で亡くなった(警官に射殺された)男性シンガーで、Pファンク一党を組む前のジョージ・クリントンともつながりがありました。ぼくはこの「OPEN〜」の入ったアナログ盤を高校生の頃に入手し、それこそ穴があくほど聴きこんできました。「70年代にリトル・ミルトンがカヴァーしていたけれど、最近はとりあげられていないナンバーだな」と思っていたのですが、それがこの日のステージで聴けるとは!
もちろん「まだ原曲に馴染みがない」という方にも、ジャスミンのステージは思いっきり楽しんでいただけることと思います。なにしろイントロもメロディも、アレンジも本当にかっこいいのです。そして彼女には、とても華やかな存在感があります。

思いっきり高まりました。スウェーデンが生んだファンキー・レディのステージに接して、皆さんもぜひ、高まってください!!
(原田 2012 6.7)


● 6.7thu.-6.10sun.
JASMINE KARA
with DJs presented by "Good Music Parlor"
6.7thu. Hiroko Otsuka
6.8fri. Shuya Okino(Kyoto Jazz Massive)
6.9sat. DJ JIN(Rhymester)
6.10sun. DJ Mitsu The Beats(GAGLE/Jazzy Sport Crew)
☆ 参考:セットリストはこちら


JASMINE KARA - ジャスミン・カラ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JIM HALL - - report : JIM HAL...

2012/06/04

ジム・ホール - JIM HALL
ジム・ホール - JIM HALL


公演初日リポート:
JIM HALL TRIO
with SCOTT COLLEY & JOEY BARON



この日を待ち望んでいました。

パット・メセニー、ビル・フリゼール、ジョン・スコフィールド、ジョン・アバークロンビー等、数え切れないほど多くの名手たちに影響を与えている“現代ジャズ・ギターの父”、ジム・ホール久々の来日公演です。今年で82歳とのことですが、その指先にまったく衰えはみられません。美しく幻想的なハーモニー、粒立ちの良いシングル・ノート(単音)、たとえようもなく豊かな歌心。ただただ聴きほれるしかない幸せな時間を味わわせていただきました。

プログラムは“ジム・ホール傑作集”というべき内容で、「BIG BLUES」、「CAREFUL」、「BEIJA FLOR」等、熱心なファンなら冒頭の1小節を聴いただけで「ああ、あの曲だ!」と声をあげるに違いないものばかりでした。しかし同じ曲を繰り返しプレイしても、常に新鮮な印象を与えるのがホールのすごいところ。こういう存在を本物の巨匠というのです。

現在のホールはスティーヴ・ラスピナ(ベース)〜テリー・クラーク(ドラムス)か、スコット・コリー(ベース)〜ジョーイ・バロン(ドラムス)と組むことが多いのですが、今回は後者のトリオ、つまり近作『Hemispheres』と同じメンバーによるパフォーマンスです。

コリーのプレイは堅実そのもの、バロンは主にブラッシュとスティックを巧みに使いわけながら御大のギターをサポートします。短いソロも聴かせてくれましたが、これほどメロディアスにドラムを叩く奏者は、ぼくの知る限りほかに故シェリー・マンがいるぐらいです。

ホールは演奏中、ギターについているトーン・コントロール(音量を調節するつまみ)をよくいじります。そして時折エフェクターを手で操作しながら、音色を変えてゆきます。その一方で「CHELSEA BRIDGE」のようなバラードでは、徹底的にボリュームを抑えながら、まるで睡眠中の赤ちゃんをそっと抱きかかえるような優しくて繊細なプレイを披露。水を打ったように静まり返った超満員のオーディエンスの間に、微妙なニュアンスに富んだギター・ソロが響き渡ったのは本当に感動的な情景でした。

ラストは“私の生涯の盟友、ソニー・ロリンズの曲だ”というMCから「ST. THOMAS」に流れ込みました。エフェクターを通した音色はまるでパット・メセニーのギター・シンセサイザーのようです。イントロ部分では「鉄道唱歌」(今も新幹線車内などで聴くことができます)のメロディを引用し、客席を沸かせます。ホールはこの曲を‘72年の傑作『ALONE TOGETHER』でも演奏していますが、そこにこのイントロは登場しません。しかし‘76年の来日公演以降、「ST. THOMAS」をプレイする時は必ずといっていいほど「鉄道唱歌」が挿入されます(先日、ぼくがニューヨークで彼のライヴを聴いたときにも出てきました)。
親日家ジム・ホールの、さらなる長命と御活躍を願ってやみません。
(原田 2012 6.3)


● 6.3sun.-6.6wed.
JIM HALL TRIO
with SCOTT COLLEY & JOEY BARON
☆ 参考:セットリストはこちら


ジム・ホール - JIM HALL


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JAMES FARM , JOSHUA REDMAN - - report : JAMES F...

2012/05/31

ジェイムス・ファーム - JAMES FARM
ジェイムス・ファーム - JAMES FARM


公演初日リポート:
JAMES FARM
featuring JOSHUA REDMAN, AARON PARKS, MATT PENMAN & ERIC HARLAND



ジョシュア・レッドマン(テナー・サックス)、アーロン・パークス(ピアノ)、マット・ペンマン(ベース)、エリック・ハーランド(ドラムス)。それぞれがリーダー・アルバムも出している、いわば一国一城の主が結集したユニットが、このジェイムス・ファームです。

管楽器がジョシュアひとりであること、およびMCを担当していることから彼のバンドと思われがちですが、あくまでもメンバー全員が対等というポリシーが貫かれています。そしてレパートリーも、4人がそれぞれ持ち寄ったオリジナル曲に限定されています。彼らは2009年から一緒に演奏を始め(パークス以外は、それ以前からSFジャズ・コレクティヴに所属していましたが)、2010年にファースト・アルバムを吹き込みました。
それがリリースされたのは2011年のことです。ぼくも発売直後に聴きました。そのときは、正直いって「難解な内容だなあ」と思いました。ようするに自分の鑑賞能力が、彼らの音楽レベルに達していなかったということなのですが、ライヴは実にストレートでスカッとする内容でした。CDを聴いたときの「難しいなあ、とっつきにくいなあ」という意見は「よくもまあ、こんなこみいった曲を軽々と演奏できるものだ」という驚きに変わり、「複雑なフレーズの応酬」は「たまらなくスリリングな技のやりとり」という言葉におきかえられていきます。

ステージのオープニングを飾る「1981」が終わった頃には、ジェイムス・ファームの音楽がそれまでにないほど身近に感じられるようになっていました。

ジョシュアのプレイは相変らずスマートでスムーズです。細く滑らかに、ときにソプラノ・サックスを思わせるような高音も披露します。アーロン・パークスのハーモニーはあくまでも耽美的で、ソロ・フレーズは清水が流れるかのようです。そんな二人を、マットの骨太なベースが包みこみ、“反応の鬼”と化したエリックのドラムスが鼓舞します。彼がジャズ・シーンに登場してからもう10年以上が経ちますが、チャールス・ロイドとの共演以降、そのドラム・プレイには磨きがかかりっぱなしのようです。

ぼくが見た初日のファースト・セットでは、ほかに「IF BY AIR」、「CHRONOS」、「STAR CROSSED」等がプレイされました。各人の連携ぶりは憎いほどで、まるで“4つの魂を持ったひとつの巨人が、同時に4つの楽器を演奏している”と形容したくなるほど。アンコールでは、まだレコーディングされていないマットの新曲「TWO STEPS」も聴かせてくれました。

オールスター・ユニット、ジェイムス・ファームの未来は洋々です。ライヴは土曜日まで続きます。ぜひどうぞ!
(原田 2012 5.30)


● 5.30wed.-6.2sat.
JAMES FARM
featuring JOSHUA REDMAN, AARON PARKS, MATT PENMAN & ERIC HARLAND
☆ 参考:セットリストはこちら


JAMES FARM - ジェイムス・ファーム


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , EVERETTE HARP with INDRA LESMANA QUART... - - report : EVERETT...

2012/05/29

エヴェレット・ハープ - EVERETTE HARP
エヴェレット・ハープ - EVERETTE HARP


公演初日リポート:
EVERETTE HARP with INDRA LESMANA QUARTET



スムース・ジャズ〜フュージョンを代表するサックス奏者、エヴァレット・ハープがインドネシアのインドラ・レスマナ・カルテットたちと共に、ブルーノート東京のステージを飾っています。

ぼくが今から20年以上前、マーカス・ミラーのライヴで初めてエヴァレットのプレイを聴きました。ずいぶん活きのいいミュージシャンがあらわれたと思ったものです。そして現在も彼はその演奏に磨きをかけています。「ブルーノート東京には何回も出ているけれど、自分自身の音楽をプレイするのは初めてなんだ。だからとってもエキサイトしているんだよ」というMC通り、大変にエキサイティングなパフォーマンスを聴くことができました。

ところで、インドネシアはスムース・ジャズ〜フュージョンの大国でもあります。ぼくは過去2度、ジャカルタで行なわれるアジア最大級のフェスティバル「JAVA JAZZ FESTIVAL」に行ったことがありますが、とにかくプロ・アマチュア問わず、すさまじいフュージョン熱に圧倒されました。そして全員、テクニックがすごいのです。そしてインドラ・レスマナ・カルテットは恐らく、その中の最高峰でしょう。

リーダーでキーボード奏者のインドラ・レスマナ、ベースのバリー・リクマフワ(父親はインドネシア屈指のモダン・ジャズ系トロンボーン奏者、ベニー・リクマフワ)、ドラムスのサンディ・ウィナルタは昨年、LLWというユニットで来日したばかり。インドラは映画監督ミラ・レスマナを兄に持ち、インドネシアのポップス界でもプロデューサー〜ミュージシャンとして大活躍しています。その華麗なキャリアは、先日「ミュージック・マガジン」誌のインタビュー記事で紹介されたばかりですが、この日もインドラ目当てのお客さんが相当、駆けつけていたように思います。

演目はエヴァレットのオリジナル曲が中心。そこにインドラの「NO STANDING」や、マーヴィン・ゲイの「WHAT’S GOIN’ ON」といったカヴァー曲が加わります。エヴァレットはアルト・サックスだけではなくテナー・サックスやEWIも演奏。CDではだいたい、1曲を4〜5分にまとめている彼ですが、この日は時間の制約を超え、サックスを吹いて吹いて吹きまくります。このあたり、まさしくライヴの醍醐味といっていいでしょう。“ぼくの父はバプティスト教会の牧師だった。だからジャズを演奏することにはずっと反対されていた。ハイスクールの頃、友人たちがナイト・クラブで遊んでいるときでも、ぼくは家でじっとしていたものさ。その当時のことを思い出して書いた曲だ”という前置きから始まった「ALL JAZZED UP(NOWHERE TO GO)」では、客席を練り歩きながら入魂のブロウを展開しました。

ジョージ・デュークをプロデュースに迎えた近作『FIRST LOVE』も好評のエヴァレット。デイヴ・コーズ、カーク・ウェイラム、ジェラルド・オルブライト等のファンにも絶対お勧めの熱いステージ、ぜひお越しください。
(原田 2012 5.28)


● 5.28mon.-5.29tue.
EVERETTE HARP with INDRA LESMANA QUARTET
☆ 参考:セットリストはこちら


ロバート・ランドルフ - ROBERT RANDOLPH


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MOSE ALLISON - - report : MOSE AL...

2012/05/26

MOSE ALLISON - モーズ・アリソン\
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公演初日リポート:MOSE ALLISON



ついにこの日がやってきました。モーズ・アリソンの初来日公演です。

モーズは1950年代にデビューした、ピアノの弾き語りアーティストです。レコード店では「ジャズ」に分類されているのではと思われますが、その内容は多彩でブルース、フォーク、ヒルビリー等の要素も感じられます。数多くのロック・アーティストからリスペクトされていることでも知られていて、「60年代の英国でブルースをプレイする者は、誰もがモーズの影響を受けていた」(元ローリング・ストーンズのミック・テイラー)、「モーズ嫌いのミュージシャンを私は知らない。彼は音楽の壁を軽々と突き破った」(ボニー・レイット)、「モーズはジャズとブルースのミッシング・リンクなんだ」(キンクスのレイ・デイヴィス)、「最初に聴いたときから、モーズには惚れっぱなしだ。声の暖かさ、スタイル、あの独創性・・・。彼の音楽は、私の心をとろけさせてくれる」(ジョージー・フェイム)、「モーズは60年代のロックンロールに強烈な影響を与えた。当時、ブルース系のバンドを組んでいた連中は皆、モーズに熱中していた」(アル・クーパー)といった発言が残されています。もちろん黒人ブルース・ミュージシャンからもモーズの音楽は好かれていて、巨匠サニー・ボーイ・ウィリアムソン\nは「モーズ、いいぞ。その調子で続けろ!」と彼を励ましたとのことです。

そのモーズが今、初来日公演のために日本にいます。
この11月に85歳を迎えるとのことですが、足取りは軽快です。編成は、彼が最も得意とするピアノ・トリオ。ベースのフィル・スパークスは’70年代から’80年代にかけてコロラド州で活動し、現在はシアトルを拠点としているベテランです。ドラムスのピート・マガディーニはジョージ・デューク、アル・ジャロウ、ダイアナ・ロス等のサポートも務めた名手で、教則DVDを出すなど、インストラクターとしても活躍しています。

冒頭の10分ほどピアノをフィーチャーしたパフォーマンスを続けた後、いよいよ待望のヴォーカル・ナンバーが始まります。曲目は前もって決めておらず、すべてモーズの気分次第。すべてのレパートリーには通し番号がついていて、モーズは曲名ではなく、その番号をメンバーに告げます。モーズの歌唱は、決して絶唱型ではありません。ホーギー・カーマイケル、チェット・ベイカーらに通じる、

「力まず、つぶやくように歌う」感じです。しかしその歌声が、どういうわけか濃厚なブルースにピッタリと合うのです。「かっこいいなあ、粋だなあ」と思いながら、ぼくは「HELLO THERE, UNIVERSE」や「YOUR MIND IS ON VACATION」、マディ・ウォーターズのカヴァー「ROLLING STONE」等に酔いしれました。

先に紹介した面々のほかに、ヴァン・モリソン、ピート・タウンゼント、エルヴィス・コステロ等からも敬愛されているモーズですが、“御本尊”のパフォーマンスは年輪と風格が違います。偉大なるモーズの生演奏を、ぜひ間近でどうぞ。
(原田 2012 5.25)


● 5.25fri.-5.27sun.
MOSE ALLISON


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