BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , EDDIE PALMIERI - - report : EDDIE P...

2012/09/08

エディ・パルミエリ - EDDIE PALMIERI
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公演初日リポート:EDDIE PALMIERI SALSA ORCHESTRA



残暑を吹き飛ばす爽快なプログラムが、絶賛開催中です。

50年以上のキャリアを誇る“鉄人”、エディ・パルミエリの公演が始まっているのです。これまで、いろんな編成のバンドでファンを楽しませてきた彼ですが、今回は“サルサ・オルケスタ”を率いてのステージ。トランペットはチャーリー・セプルベダ(エディのいとこです)とマイケル・ロドリゲス(ゴンサロ・ルバルカバやチャーリー・ヘイデンとも共演)が担当し、昨年“ナインティ・マイルズ”で来日したベースのルケス・カーティス(アンディ・ゴンサレスの弟子)にも大きくソロ・パートが与えられていました。トレス(小型ギターというべき複弦楽器)の名手ネルソン・ゴンサレス、類稀な美声の持ち主であるエルマン・オリベラも健在。長身のエルマンに寄り添うようにして、小柄なネルソンがトレスを弾きまくる姿に、会場は沸きました。

誰もが超一級の一枚看板です。しかしエディは、その数段上をいく貫禄とカリスマ性でバンドの音をまとめていきます。決して大きなジェスチャーで指揮をするわけではありませんが、ちょっと指を動かしたり、目線を変えるだけで、サウンドが引き締まり、新たな局面に突入していくのです。今回のエディはアコースティック・ピアノではなく、ヤマハCPという電子ピアノを使っています。

しかし「ああ、エディだ!」と、すぐにわかるタッチは相変らずです。それぞれの曲の前に、彼は長めの無伴奏ソロを演じます。それがまた、大きな聴きものなのですが、「美しい音色だな、ハーモニーだな」と、うっとりしていると、突然、はっと驚くような不協和音を挿入したり、リズムのアクセントを意図的にずらしたりと、その展開は予想を快く裏切ります。こうしたスリルも、ぼくがエディの演奏を何十年にわたって愛聴し続けている理由のひとつです。本人いわく、「永遠の26歳」。エディの音楽的青春がずっとこれからも続くことを願ってやみません。公演は10日まで行なわれます。
(原田 2012 9.7)


● 9.7fri.-9.10mon.
EDDIE PALMIERI SALSA ORCHESTRA


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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BOB JAMES - - report : BOB JAM...

2012/09/04

ボブ・ジェームス - BOB JAMES
ボブ・ジェームス - BOB JAMES


公演初日リポート:
BOB JAMES QUINTET
featuring STEVE GADD, WILL LEE, DAVE McMURRAY & PERRY HUGHES "CTI YEARS"



毎回、バラエティに富んだプログラムで楽しませてくれるボブ・ジェームスですが、今回はなんと、彼が大きく飛躍するきっかけとなったCTI/KUDUレーベル在籍時代(1970年代初頭〜半ば)のレパートリーを中心に演奏するという、ファン垂涎の内容です。しかもドラムスには旧友スティーヴ・ガッドが参加。もちろん客席は超満員、開演前からものすごい熱気でした。

オープニングは「MISTER MAGIC」。サックス奏者、故グローヴァー・ワシントンJr.の代表曲ですが、ボブはその収録アルバム『ミスター・マジック』でキーボードとアレンジを担当していました。この日はデイヴ・マクマレイのテナー・サックスが大きくフィーチャーされ、ボブはアンサンブル部分でフェンダー・ローズ、ソロ部分でアコースティック・ピアノと、楽器を使い分けながら快演を聴かせてくれました。

続いては、渋めのナンバーが登場します。故エリック・ゲイルのアルバム『フォアキャスト』からの「WHITE MOTH」です。この作品にも、ボブはプレイとアレンジで貢献していました。ギタリストのペリー・ヒューズは、ゲイルというよりはジョージ・ベンソンを思わせるプレイで、この隠れ名曲を鮮やかに蘇らせました。

「AUTUMN LEAVES」(枯葉)が登場したのにも驚かされましたが、考えてみればボブとガッドはチェット・ベイカーのアルバム『枯葉』で、この曲を演奏しています。この日のアレンジも基本的にはチェットのヴァージョンを踏襲していましたが、「4ビートでソリストを煽るガッド」、「それに乗ってジャジーなフレーズを弾きまくるボブ」というシーンは、日頃なかなか見られないレアなものだと思います。

ウィル・リー書き下ろしのバラード「A SIMPLE WAY TO SAY, "I LOVE YOU"」を経て、後半はボブ自身のCTI盤からのレパートリーが続きます。「いろんなひとにサンプリングされて潤ったよ。ASCAP(米国作曲家作詞家出版者協会)に感謝しなくちゃね」というMCの後に始まった「NAUTILUS」(’74年の『ボブ・ジェームス・ワン』より)、説明不要の「WESTCHESTER LADY」(’76年の『ボブ・ジェームス・スリー』より)、そしてアンコールでは、ビゼーの「アルルの女」をアレンジした「FARANDOLE」が飛び出しました。’75年の『ボブ・ジェームス・トゥー』収録ヴァージョンはブラス・セクションが大きくフィーチャーされ、ヒューバート・ロウズのフルート・ソロも挿入されていましたが、この日はデイヴ・マクマレイがサックスとフルートを持ち替えながら大活躍。ガッドのドラム・ソロも飛び出して、よりワイルドな「FARANDOLE」へと進化していました。
(原田 2012 9.3)


● 9.3mon.-9.5wed.
BOB JAMES QUINTET
featuring STEVE GADD, WILL LEE, DAVE McMURRAY & PERRY HUGHES "CTI YEARS"
☆ 参考:セットリストはこちら


ボブ・ジェームス - BOB JAMES


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PABLO CRUISE - - report : PABLO C...

2012/08/28

パブロ・クルーズ - PABLO CRUISE
パブロ・クルーズ - PABLO CRUISE


公演初日リポート:
PABLO CRUISE


爽快なライヴでした。再び日本でプレイできることを喜ぶメンバーの気持ちと、久しぶりの来日公演を待ちわびていたファンの気持ちが、会場の中でとけあって、実に実に熱い雰囲気を生み出していました。

カリフォルニアが生んだサーフ・ロックの雄、パブロ・クルーズの再来日公演です。前回、来日したのはなんと、今から33年も前の1979年。ぼくは残念ながら“パブロ・クルーズ世代”ではありません。しかし後追いで「LOVE WILL FIND A WAY」や「WHATCHA GONNA DO ?」といったナンバーを聴き、親しみやすいメロディ・ライン、タイトなリズム、厚みのあるハーモニーに魅了されました。そして、「こういう曲を聴きながら海辺をドライヴしたり、サーフィンしたら最高の気分だろうな」と思ったものです(免許もサーフボードも持っていないのに)。

場内が暗くなり、往年の映像がスクリーンに映し出されます。パブロ・クルーズの栄光の歴史、といったところでしょうか。やがてメンバーがステージにあがり、’78年のアルバム『WORLDS AWAY』のタイトル曲を演奏します。オリジナル・メンバーのデヴィッド・ジェンキンス、コーリー・レリオス、スティーヴ・プライスが、手の届くような距離で一同に並ぶ姿は壮観です。もちろん‘70年代に比べて、ルックスは格段に渋くなっています。デヴィッドの髪の毛はかなり白くなっています。しかしメンバーのヴォーカルやハーモニーの魅力は、まったく色あせていません。演奏テクニックに関しては、往年よりもさらに良くなっているのではないかとも思いました。徹底的に磨き抜かれた“バンドの音”に、ぼくは聴きほれるばかりでした。

2010年から加入しているベースのラリー・アントニーノも、すっかりバンドにとけこんでいます。5弦ベースを縦横無尽にあやつる彼のプレイは、間違いなく現パブロ・クルーズのグルーヴ感に貢献しているといっていいでしょう。歌声も実に渋く、味があります。デヴィッド、コーリー、そしてラリーと、リード・ヴォーカルをとれるシンガーが3人も揃っているところも、今のグループの大きな魅力です。

歌よし、演奏よし、雰囲気よし。とにかく楽しいひとときを味わわせていただきました。「パブロ・クルーズ? 聞いたことがない名前だなあ」というひともいらっしゃるかもしれませんが、ぜひライヴにお越しください。「ああ、この曲、知ってる。これ、パブロ・クルーズの歌だったんだ」と、なるに違いないからです。
(原田 2012 8.27)


● 8.27mon.-8.29wed.
PABLO CRUISE
☆ 参考:セットリストはこちら


パブロ・クルーズ - PABLO CRUISE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 矢野顕子 - - report : AKIKO Y...

2012/08/18

AKIKO YANO - 矢野顕子
AKIKO YANO - 矢野顕子


公演初日リポート:
AKIKO YANO TRIO
featuring WILL LEE & CHRIS PARKER



今年もこの季節がやってきました。ニューヨーク在住、唯一無二の音楽道を歩み続けるシンガー・ソングライター/ピアニストの矢野顕子が、ゆかいな仲間たちを引き連れて行なう「ブルーノート東京」里帰り公演です。

ベース&ヴォーカルのウィル・リー、ドラムスのクリス・パーカーとのコンビネーションは“鉄壁”のひとことに尽きます。彼女がMCをしているときに、ウィルが「どんなことをしゃべっているの?」と英語で茶々を入れていましたが、演奏を聴く限りでは、ウィルもクリスも日本語を理解して演奏しているとしか思えません。それほど彼らは矢野顕子が歌う日本語歌詞の微妙なニュアンスを捉え、これ以上ないほど絶妙なサポートを聴かせてくれるのです。「あと25年間はこの3人で演奏していたいね」とウィルは語っていましたが、それは全メンバー、全オーディエンスに共通する願いでもありましょう。

ぼくが接した初日ファースト・セットは、2002年発表のシングル「Dreaming Girl」から始まりました。続いて最新ライヴ・ベスト盤『荒野の呼び声 -東京録音-』に入っている「こんなところにいてはいけない」、20年来のレパートリーである「いいこ いいこ」と続きます。「ウィルとクリスと一緒のライヴで、こんなに日本語の曲が続いたことは珍しいのでは?」と思っていると、次に英語詞の「Full Moon Tomorrow」が飛び出しました。途中に、RCサクセションの「多摩蘭坂」(日本語)を挿入しながらの展開は、まるで組曲のようです。ヴォーカルとピアノが絡み合い、渦を巻くようなグルーヴを生み出します。

今回のライヴでは、いわゆるピアノ弾き語りのほかに、スタンド・マイクを使ったパフォーマンスも見ることができました。ブラッシュ・ワークを駆使したドラムスだけをバックに前半を歌いきった「Spring Spring Spring」、やはり前半をドラムスとのデュオで構成し、自由奔放なスキャットを繰り広げた「ポケットいっぱいの秘密」は、ただでさえ多彩なプログラムに、さらなる変化を付け加えていたと思います。

そしてアンコールでは、近年のライヴでは定番となった感のある「People Got To Be Free」と「Gasoline And Matches」を披露。ウィルと息の合ったヴォーカル・デュオを聴かせてくれました。公演は22日まで続きます(20日はオフ)。各セット、いったいどんな曲で楽しませてくれるのか。ますます期待が高まります。
(原田 2012 8.18)


● 8.18sat.-8.22wed.(8.20mon.OFF)
AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER
☆ 参考:セットリストはこちら


AKIKO YANO - 矢野顕子


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOYCE - - report : JOYCE @...

2012/08/13

ジョイス - JOYCE
ジョイス - JOYCE


公演初日リポート:
JOYCE @COTTON CLUB



ボサ・ノヴァ第二世代を代表する歌姫、ジョイスが今年も涼やかでスタイリッシュなステージを繰り広げています。メンバーは公私共にパートナーをつとめるトゥチ・モレーノ(ドラムス)、そしてエリオ・アルヴェス(ピアノ)、ロドルフォ・ストロエテール(ベース)といった気鋭たち。昨日と本日は「コットンクラブ」、明日あさっては「ブルーノート東京」への登場です。ぼくは「コットンクラブ」の初日に行きました。

「今回の公演は私にとって特別なの」と、ジョイスはMCで語りました。その理由のひとつは、最新作『トゥード』が、彼女にとって10数年ぶりのオリジナル曲集であること。そしてもうひとつは、ここからのレパートリーを中心としたライヴを披露するのが世界で初めてであること。「私たちのプレミア・パフォーマンスを見にきてくれてありがとう」といいながら、ジョイスはニュー・アルバムからの曲を快調に続けました。人懐っこいメロディ、軽快なリズム、うっとりするようなハーモニー。新曲ではあるのですが、まるでずっと昔からそばで鳴っていたかのような親しみやすさに溢れている・・・・そこが彼女の曲作りの魅力です。

ジョイスはギターを弾きながら歌いますが、いわゆるギター・ソロはとりません。間奏部分は、エリオがほぼ一手に担当します。以前にも書いたと思いますが、60年代のハービー・ハンコックを思わせる清新なピアノ・プレイは、現ジョイス・グループの大きな魅力のひとつです。彼のタッチの中には、ブラジル音楽のリズム感、そしてジャズのハーモニー感覚が絶妙に溶けあっているのです。

もちろん新曲だけではなく、これなくしてジョイスは語れないといってもいい「FEMININA」や、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「AGUAS DE MARCO」、「DESAFINADO」なども披露。年季の入ったファン、最近ジョイスを知ったばかりのリスナー双方を深く満足させるプログラミングだったと思います。それにしてもジョイスとトゥチはいつも本当に、見ていてうらやましくなるほどラブラブです。
(原田 2012 8.12)


JOYCE
● 8.12sun.- 8.13mon. @COTTON CLUB


● 8.14tue.-8.15wed. @BLUE NOTE TOKYO





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