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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PHIL WOODS QUINTET - - report : PHIL WO...

2012/07/14

フィル・ウッズ - PHIL WOODS
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公演初日リポート:PHIL WOODS QUINTET
featuring BRIAN LYNCH, BILL MAYS, STEVE GILMORE & BILL GOODWIN



昨年3月、震災直後に来日し、感動的なパフォーマンスを繰り広げたフィル・ウッズ・クインテットが再び戻ってきました。

メンバーは御大ウッズ(アルト・サックス)に、ブライアン・リンチ(トランペット)、ビル・メイズ(ピアノ)、スティーヴ・ギルモア(ベース)、ビル・グッドウィン(ドラムス)という不動のラインナップ。ウッズいわく、「スティーヴやビルとは、もう38年間一緒に演奏している」とのこと。確かに1975 年の『The New Phil Woods Album』では既に、この二人の名前を見ることができます。

ウッズは今年で81歳を迎えます。しかしトーンは相変らず艶やかで、プレイにはリード・ミスひとつ見当たりません。アドリブ・ソロに入ると、他の曲のメロディを次々と引用しながら、ファンを沸かせます。オープニングの「BOHEMIA AFTER DARK」では、チャーリー・パーカーが愛奏した「WEE」や「PARKER’S MOOD」の一節が挿入されました。歌心たっぷりのフレーズと、ふとあらわれるユーモア。まさに“生涯現役”の名に恥じない存在がウッズなのです。

続く「I'M A FOOL TO WANT YOU」は、フランク・シナトラやビリー・ホリデイの絶唱で知られるナンバーです。インストゥルメンタルでは余り取りあげられていないような気がしますが、ウッズはこの曲をラテン・リズムで料理します。アレンジはブライアン・リンチが担当。秋吉敏子オーケストラ、ホレス・シルヴァー・クインテット、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ、エディ・パルミエリ・バンド等、数々の名門で腕を磨いてきた彼は今、トランペット奏者として、音楽家として絶頂を迎えているようです。中盤、ワン・ホーンで演奏されたサド・ジョーンズ作「ELUSIVE」でも、絶好調のプレイを味わうことができました。

ウッズといえばチャーリー・パーカーの熱烈な信奉者として知られていますが、同時にジョニー・ホッジス、ベニー・カーターを深く敬愛しています。特にカーターからは息子のように可愛がられ、日本でも共演コンサートを開いたことがあります。「A WALKIN' THING」は、そのカーターの隠れ名曲です。ぼくはこれをコンテンポラリー盤『Jazz Giant』というアルバムで知り、どうしてこんないい曲が殆どカヴァーされないのだろうと不思議に思っていました。が、この日に聴いたウッズの解釈は、その気持ちを吹っ飛ばすものでした。乗りに乗ったウッズは、「NATURE BOY」、「SURREY WITH THE FRINGE ON TOP」、「VOLGA BOATMEN」、「THE CONTINENTAL」等のメロディを挿入しながらアドリブを続けます。

なにしろウッズは60年に及びキャリアを持っています。その間、フリー・ジャズ風の演奏をしたこともありますし、フュージョン的なアプローチに取り組んだこともあります。でも今の彼はビ・バップに没頭し、ひたすらスイングすることに情熱を注いでいます。それがたまらなく爽快なのです。
(原田 2012 7.13)


● 7.13fri.-7.15sun.
PHIL WOODS QUINTET
featuring BRIAN LYNCH, BILL MAYS, STEVE GILMORE & BILL GOODWIN
☆ 参考:セットリストはこちら


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