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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FIVE CORNERS QUINTET - - report : THE FIV...

2012/02/24

ファイヴ・コーナーズ・クインテット - THE FIVE CORNERS QUINTET
ファイヴ・コーナーズ・クインテット - THE FIVE CORNERS QUINTET


公演初日リポート:
THE FIVE CORNERS QUINTET
DJ : TATSUO SUNAGA



まるでファッション雑誌から抜け出てきたようなルックス、50〜60年代のモダン・ジャズへの敬愛を感じさせるサウンド。人気ユニット、ファイヴ・コーナーズ・クインテットが2年ぶりに再結成され、ブルーノート東京に登場しています。

ライヴ盤『ジャズヒート ボンゴビート!』のリスナーならばおわかりかと思いますが、彼らのステージは、とにかく熱狂的です。1曲あたりの演奏時間は軽く10〜15分に及び、各人が完全燃焼するまでアドリブを続けます。整然としたスタジオ録音とは一味違う、ワイルドでパワフルな一面がライヴでは味わえるのです。全員が大変なテクニシャンであるということもあるのでしょう、即興パートは一瞬も飽きさせず、アドリブの途中でテンポを替えたり、手のあいている奏者がリフ(短いフレーズ)を入れたり、パーカッションを手に彩りを添えたりして、常にサウンドに変化を付け加えているのです。確かに長時間のプレイなのに、それが一瞬に感じられます。

MCはドラマーのテッポ・マキネンが担当しました。特にリーダーをおかないファイヴ・コーナーズ・クインテットですが、バンドの機動力となっているのは間違いなく彼でしょう。今回も得意のリム・ショット(ドラムスの縁を叩くこと)をたっぷり聴かせてくれました。テッポのドラムスは、とにかくダイナミクス(音の強弱)に富んでいます。「本当に叩いているのだろうか?」と思えるほど静かな音から、なだれのようなビッグ・サウンドまで。いかに彼が多くの先輩ドラマーを研究し、トレーニングを積み重ねてきたかが、よくわかります。

そしてこのバンドの管楽器奏者は、ふたりともマルチフォニックス(重音奏法)の達人です。管楽器は基本的に単音楽器なので1つの音しか出ないのが当たり前なのですが、そのときに同時に出る倍音を唇や息遣いでコントロールすることによって、同時にいくつもの音が鳴っているような効果を出すことができます。テナー・サックスのティモ・ラッシーも、トランペットのユッカ・エスコラも、この技法が抜群なのです。とくにエスコラのマルチフォニックス奏法には心底驚かされました(ここまでこれを駆使できるトランペット奏者は、ほかにウィントン・マルサリスぐらいでしょう)。華奢で細身のエスコラですが、唇のまわりはすごい筋肉です。

ゆったりした3拍子で演奏される「THREE CORNERS」がやがてフリー・ジャズ的な展開になり、ティモが無伴奏で吹きまくっていると思ったら、そこにタンバリンのリズムが入ってきて、だんだんとニューオリンズ・ファンク風の「SKINNY DIPPING」へ移り変わってゆく・・・。このあたりの構成のうまさにも感銘を受けました。演奏がかっこよく、曲がキャッチーで、ルックスがいい。ファイヴ・コーナーズ・クインテットはやはり、大変なバンドです。そして、ライヴ前の須永辰緒氏の1枚5万円とか10万円とか、あるいはもっとするような滅多に聞けないプレミア・レコードの数々による究極の選曲が、このライヴ空間を格別なものとしてくれてます。是非、早めに来店して身を委ねてみてください!
(原田 2012 2.23)


● 2.23thu.-2.25sat.
THE FIVE CORNERS QUINTET
DJ : TATSUO SUNAGA
☆ 参考:セットリストはこちら


ファイヴ・コーナーズ・クインテット - THE FIVE CORNERS QUINTET