BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ELDAR - - report : ELDAR ...

2011/07/27

エルダー - ELDAR
エルダー - ELDAR


公演初日リポート:ELDAR @COTTON CLUB


キルギス共和国が生んだ超絶技巧ピアニスト、エルダーの公演が本日から「ブルーノート東京」で始まります。ぼくはそれに先がけて「コットンクラブ」で行なわれた初日を見てまいりました。

これまでの公演では全曲トリオでパフォーマンスを繰り広げてきたエルダーですが、今回は前半がソロ・ピアノ、後半がトリオで構成されました。オープニングはスタンダード・ナンバーの「I SHOULD CARE」。セロニアス・モンク、バド・パウエル、アンドリュー・ヒルらも演奏してきたバラードですね。しかし、エルダーはこの曲を、テンポこそスローながら、奔流のような速弾きナンバーとして料理しました。1小節の中に、いったいどのくらいの音符が入っているんだろうか、と不思議になってしまうほど、彼の技巧は冴え渡っておりました。目をつぶると、何人ものピアニストが一緒に弾いているかのようです。

ソロ・コーナーのラストはブラームスの曲で締めくくられました。クラシックの猛レッスンで技術を磨きあげたエルダーにとって、こうしたナンバーを演奏することはお手のものなのでしょう。力強いピアノ・タッチ、華麗な高音、踊るような足元(サステイン・ペダルを、細かく踏み込んでおりました)・・・クラシックに的を絞ったリサイタルが行なわれるのも、そう遠い未来のことではないような気がします。

その後、アルマンド・ゴラ(ベース)、ルドウィッグ・アフォンソ(ドラムス)が加わったトリオの演奏が始まります。ルドウィッグはスパイロ・ジャイラの一員として来日したこともありますね。右利き用のドラムスを使いながら、左手でトップ・シンバルを打ち、右手でスネア・ドラムを叩くという異色のスタイルの持ち主でもあります。変拍子やキメの多いエルダーの曲には、彼のようなアンサンブルをカッチリとまとめることのできるドラマーは最適なのではないでしょうか。どの曲も技と技のぶつかりあいでしたが、客席が最も沸いたのは「MOANIN’」でした。もともと1950年代、ボビー・ティモンズというピアニストがゴスペルに着想を得て書いたナンバーですが、エルダーはオスカー・ピーターソンのヴァージョンを参考にして、それをさらにテクニカルに昇華していました。こういう「MOANIN’」が演奏できるミュージシャンは、エルダーしかいないでしょう。

ラストはしっとりと、「BESAME MUCHO」を披露。「そういえばこの曲、超絶技巧派の先輩格にあたるゴンサロ・ルバルカバも弾いていたなあ」と思い出しながら、日本デビュー当時のゴンサロ(9月にブルーノート東京でも公演あり)と現在のエルダーの指使いを重ねてしまいました。
(原田 2011.7.27)


● 7.28thu.-7.30sat. @BLUE NOTE TOKYO
ELDAR