BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHICK COREA , CHICK COREA & JOHN McLAUGHLIN - - report : CHICK C...

2010/12/04

チック・コリア - CHICK COREA
チック・コリア - CHICK COREA


公演初日リポート:CHICK COREA TRIO
featuring CHRISTIAN McBRIDE & BRIAN BLADE



「ニュー・トリオ、ニュー・ミュージック!」
すっかりスリムになったチック・コリアが発するこの一声から、“新・黄金トリオ”によるステージが始まりました。ベースはクリスチャン・マクブライド、ドラムスはブライアン・ブレイドです。あらゆるタイプの音楽をこなす3人ですが、今回のステージはオール・アコースティック。そして猛烈にスイングするモダン・ジャズに彩られていました。

オープニングは、トランペット奏者ケニー・ドーハムの書いた「LOTUS BLOSSOM」。ぼくの記憶に間違いがなければ、ケニーは60年代後半にジョー・ヘンダーソンと双頭ビッグ・バンドを組んでいました(レコーディングは残っていません)。そこでピアノを弾いていたのがまだ20代半ばだったチックです。この曲も当時、よく演奏されていたのではないでしょうか。チックの指は鍵盤上を軽快に走り、マクブライドのベース・ラインがそれにぴったりとついてゆきます。ブレイドは先の細いスティックを使い、シンバルをあらゆる方面から叩いてサウンドにバラエティを加えます。

3人の醸し出す響きは限りなく生音に近いものでしたが、それが会場内にくまなく拡がったときの快感には言葉が見つかりません。マクブライドは“これぞウッド・ベース”というべき胴や弦の鳴りをふんだんに聴かせ、ブレイドの一打一打は空気と溶け合います。生音のしっかりしたプレイヤーが集まっているところにも、このニュー・トリオの大きな魅力があるのです。

名匠アーマッド・ジャマルに捧げた「YOU’RE MY EVERYTHING」、チックがこよなく尊敬するセロニアス・モンクの「I MEAN YOU」等、気合の入った演奏が最後まで続きます。そして本編ラストでは、チックの名を高めた初期の代表作『NOW HE SINGS、NOW HE SOBS』からタイトル曲が披露されました。この曲が作られたのは今から40年以上も前のことですが、メロディ、ハーモニー共に少しも歳月を感じさせません。マクブライドやブレイドがチックのピアノに絡みつくようなプレイを演じ、この古典に新鮮味を加えてゆきます。なるほどこれは、確かに“ニュー・ミュージック”です。

アンコールに飛び出したのは、ジョー・ヘンダーソンの書いた「ISOTOPE」。先日おこなわれたスタンリー・クラーク・トリオの公演ではオープニングで演奏されていたナンバーですが、チック・コリア・トリオが取りあげるとより渋く、ブルージーな感じになります。そこがぼくにはとても粋に感じられました。

今回のライヴもいつものチック公演と同じように、開演前後のBGMがありません。ステージ上のライトも一定です。あたかもニューヨークのライヴ・スポットにいるような気分で、ニュー・トリオのパフォーマンスを味わわせていただきました。
(原田 2010/12/4)



● 12.3fri.-12.4sat., 12.9thu.-12.12sun.
CHICK COREA TRIO
featuring CHRISTIAN McBRIDE & BRIAN BLADE


チック・コリア - CHICK COREA