2025 8.2 sat., 8.3 sun., 8.4 mon.
GARY BARTZ QUINTET
artist GARY BARTZ
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
リヴィング・レジェンド、降臨! 来たる9月26日に満85歳を迎えるアルト・サックス奏者、ゲイリー・バーツが自身のグループを率いて来日中です。しかも今年は、彼がノーマン・コナーズ率いる"ダンス・オブ・マジック"の一員として初めて日本を訪れてからちょうど50年の節目にもあたります。なんとも嬉しいタイミングでの公演です。
長いキャリアを通じて、バーツは多彩な音楽に取り組んできました。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ、マックス・ローチ・クインテット、マイルス・デイヴィス・バンド(キース・ジャレットと同僚でした)などで腕を磨き、1960年代から70年代にかけて率いた自身のグループ"NTU Troop"での名演も語り草です。モーダルなモダン・ジャズ、フリー・ジャズ的な演奏、ジャズ・ファンクやディスコ調の音楽など冒険の旅を続けてきた彼ですが、この初日ファースト・セットのプログラムも実に興味深く、おそらく10を超える、時にあっと驚かされるような楽曲が、ほぼノンストップで、メドレーのように演奏されました。
キラキラのジャケットを着て登場したバーツが、いきなりノリノリで歌い出したのはブルース・ナンバー。背後ではギタリストのポール・ボーレンバックが絶妙なスライド・プレイを繰り広げ、こちらの気分はまるで「アメリカ南部の酒場」です。そこから一転、バーツがサックスでプレイし始めたのはアース・ウィンド&ファイアーのヒット曲「Fantasy(宇宙のファンタジー)」のメロディの一部分(come to see~のところ)。このまま、この超有名ディスコ・ヒットのカヴァーを続けるのかと思いきや、実は曲調が似ている「Bu's Delight」へと突入します。前述ジャズ・メッセンジャーズのレパートリーであり(作曲はカーティス・フラー)、バーツも在籍中に何度もプレイしたに違いありません。彼の吹奏はフレーズ、音程、出音、どれもタイトで、「年齢を感じさせない」どころか瑞々しさすら感じさせるものでした。
友人のアルト・サックス奏者であるオーネット・コールマンの楽曲から「The Sphinx」などがプレイされたことに加え、バーツにとって永遠のヒーローであろうチャーリー・パーカーの「Ko Ko」がプレイされたのにも個人的には大きな喜びでした。彼はまずボーレンバックとのユニゾンでパーカーのアドリブ・フレーズをトレースし、そこから自身のアドリブに切り替えていきます。パーカー版よりゆったりしたテンポでのパフォーマンスでしたが、"バーツ流ビバップ"が客席を沸かせたことはいうまでもありません。
「私はセットリストを決めない。そのときの心のありようで楽曲を選んでいく」とバーツは語っていましたが、本日からのステージではいったいどんなナンバーを届けてくれるのか、ますます期待が高まります。エイドリアン・ヤングらとの『Jazz Is Dead』や、サンプリング・ソースとしてバーツの音楽を知ったファンにも大おすすめの公演は、明日まで開催されます。
(原田 2025 8.3)
Photo by Takuo Sato
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