2025 7.28 mon., 7.29 tue. @Cotton Club / 2025 7.30 wed., 7.31 thu. @Blue Note Tokyo
ULYSSES OWENS JR. & GENERATION Y @COTTON CLUB
artist ULYSSES OWENS JR.
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
カート・エリング、グレゴリー・ポーター、クリスチャン・マクブライドらと共演。演奏活動と共に後進の育成にも情熱を傾けるドラマーのユリシス・オーエンス・ジュニアが自身のユニット"ジェネレーション Y"を率いて東京4デイズに臨んでいます。昨日と本日はコットンクラブで公演、30日と31日にはブルーノート東京に登場しますが、ここではコットンクラブでの初日ファースト・ショウの模様をご紹介いたしましょう。
自身のビッグバンドも率いているユリシスですが、"ジェネレーション Y"はコンボ編成です。"アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ"など往年のモダン・ジャズの代表的バンドが持っていたドライヴ感を継承しつつ、参加者のオリジナル曲に加え、近年あまりカヴァーされなくなったジャズメンの通好みの自作曲も取り上げるという、盛りだくさんのプログラムで楽しませてくれました。
共演メンバーは、アンソニー・ハーヴィー(トランペット)、寺久保エレナ(アルト・サックス)、タイラー・ブロック(ピアノ)、中村恭士(ベース)。ユリシス同様、ジュリアード音楽院とゆかりの深い面々が揃っています。2010年代半ばに活動したニュー・センチュリー・ジャズ・クインテットの同僚であった中村の参加は、個人的に特に嬉しかったところです。彼の骨太で堅実なプレイと、ロイ・ヘインズばりのパチパチした音で歯切れ良い切り込みを入れるユリシスとの呼吸の合い方は本当に見事で、このリズムを受けたら、どんなミュージシャンもベストを尽くさずにはいられないことでしょう。寺久保のサックスの音色は逞しく、アンソニーのトランペットは息の長いフレーズを文字通り流れるように届けてくれます。タイラーのピアノはブロック・コード、四度重ね、オクターヴ奏法なども盛り込んだもので、彼がいかにジャズ・ピアノの歴史を学んでいるかを示しているかのようでした。
どこかエディ・ハリスの作風を思わせる寺久保作のファンキーな「Little Girl Power」から、"ジェネレーション Y"は一丸となって躍動します。続いて演奏されたのがディジー・ガレスピーが1940年代半ばに書いた「Be Bop」だったので、思わず私は身を乗り出しました。というのもこの曲をライヴで聴くのは、おそらく自分にとって初めてだからです。ガレスピー関連者による実演は相当見てきたつもりですが、演奏者にとって敷居が高いところがあるのか「Be Bop」の生演奏に出会う機会はありませんでした。が、ステージ上の5人は見事に「Be Bop」を操ります。ただアップテンポにのせてアドリブを競うのではなく、ソリストごとにバックのリズム・パターンを変化させての、なんというか、実に現代の風が吹く解釈です。
さらにこのファースト・ショウでは、作曲者である中村の迫真のソロが光った「Morning Prayer」、メッセンジャーズのソングブックから80年代の「New York」、50年代後半のリー・モーガンがいた頃に演奏されていた「Chicken An' Dumplings」などが次々と登場しました。さあ、次の公演ではどんな名曲を届けてくれることでしょうか。管楽器入りアコースティック・ジャズの真髄をお楽しみください。
(原田 2025 7.29)
Photo by Tsuneo Koga
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【LIVE INFORMATION】
ULYSSES OWENS JR. & GENERATION Y
2025 7.28 mon., 7.29 tue. コットンクラブ
2025 7.30 wed., 7.31 thu. ブルーノート東京