2025 5.28 wed., 5.29 thu., 5.30 fri.
BÉLA FLECK, EDMAR CASTAÑEDA, ANTONIO SÁNCHEZ TRIO
artist ANTONIO SANCHEZ , BÉLA FLECK , EDMAR CASTANEDA
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
2024年に発足した超絶ユニット:ベラ・フレック、エドマール・カスタネーダ、アントニオ・サンチェスのトリオによる公演が昨日から開催中です。
来日の日程がアナウンスされてからというもの、私はこのライヴを本当に心待ちにしていました。その理由はずばり、自分の音楽人生の中でバンジョー+(コロンビアン・)ハープ+ドラムスという組み合わせによる生演奏を聴いたことがなかったからです。それ以前に、そのような楽器編成によるバンドができるなど想像もしなかった、というのが正直なところだった、といっていいかもしれません。いったいどんな世界を届けてくれるのか、徹底的にわくわくさせてくれるじゃないですか。
3人は5月16日に発売されたばかりのアルバム『BEATrio』(それぞれの名前の頭文字にちなんでいます)でも息の合ったところを聴かせていますが、ライヴでは観客の熱い反応を得て、さらなるエキサイトメントが加わります。エドマールのハープは3つの楽器の中で最も幅広い音域を担っているといっていいでしょう。硬質で張りのある高音によるアドリブと、自在に動く低音のベース・ラインの同時演奏は、もちろんこのユニットでも際立っています。いっぽう、ベラのバンジョー・プレイはバンド・サウンドのど真ん中に位置しているように感じられました。ソロをとるときの輝かしさはもちろん、ハープのソロの背後でつまびかれるコンピング(伴奏)も実にリズミカルで快いものでした。アントニオは、ベラとエドマールのプレイを鼓舞しつつ、トリオ全体の土台をキープする役割でしょうか。しかも今回は、ハープとバンジョーという(アンプリファイドされているとはいえ)音量的にセンシティヴな楽器との共演です。いかに彼のドラムが「押し」と「引き」を心得たものであるか、再認識させられました。
プログラムは「Countryside」、シングルとしてもリリースされている「Archipelago」をはじめ、すべてが『BEATrio』からのもの。「Three is Not a Crowd」ではアントニオの、「Walnut and Western」ではベラの、「Hooligan Harbor」ではエドマールの流麗な無伴奏イントロダクションも聴くことができました(ベラのそれには「Rhapsody in Blue」が大きく引用され、ひときわ会場を沸かせました)。"僕はタンゴを想定して書いたけれど、エドマールはチャチャだというし、アントニオはダンソンだという。ブルーノート・ニューヨークで演奏した時にはオーディエンスから「素敵なサンバですね」といわれたよ"というベラのMCの後にプレイされた「Cloak and Dagger」は、踊りだしたくなるようなリズムと哀感のこもったメロディが融合したナンバー。今後、ライヴを重ねるごとに人気レパートリーとして定着していくであろう、かっこよく親しみやすい曲想です。
アメリカ、コロンビア、メキシコ生まれのコスモポリタン3名によるできたての音楽を、東京にいながらにして味わえる喜び。エキサイティング&ハッピーな公演は明日まで行われます。
(原田 2025 5.29)
Photo by Tsuneo Koga
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【LIVE INFORMATION】
BÉLA FLECK, EDMAR CASTAÑEDA, ANTONIO SÁNCHEZ TRIO
2025 5.28 wed., 5.29 thu., 5.30 fri. ブルーノート東京
coming soon