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公演間近、PHJBの中心人物、ベン・ジャフィにインタビュー

公演間近、PHJBの中心人物、ベン・ジャフィにインタビュー

歴史上初めての新曲集もリリース
ニューオーリンズのジャズを伝え続ける
PHJBの中心人物、ベン・ジャフィにインタビュー

 ジャズ、リズム&ブルース、ケイジャン・ミュージックの聖地。通りを歩けば四方八方からごきげんな音楽が聞こえてきて、つい体を動かさずにはいられない街。かなり湿度の高い気候ではあるけれど、人々は陽気でカラッとしていて、抜けるような青空はどこまでも鮮やか、食事もおいしくて特に魚介類が新鮮。足を運ぶとクセになる街、それがニューオリンズだ。

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 ルイ・アームストロング、ファッツ・ドミノ、プロフェッサー・ロングヘア、ジェイムズ・ブッカー、ネヴィル・ブラザーズ、ドクター・ジョン、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド、ウィントン・マルサリス、ハリー・コニックJr.、リル・ウェイン・・・数え切れないほどの才能がここで育まれ、世界を熱狂させてきた。そして7月下旬、とびきりの音楽集団が日本上陸を果たす。リーダーのチューバ/ベース奏者、ベン・ジャフィ率いるプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド(PHJB)である。

"ジャズ・バンド"といっても、内容は実に多彩。レパートリーには伝統的なジャズ・ナンバーだけではなく、キューバを代表する歌曲「南京豆売り」や英国のロック・バンド、キンクスの「コンプリケイテッド・ライフ」なども含まれる。トム・ウェイツ、マール・ハガート、アンドリュー・バード、デル・マッコリー等、他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも積極的に行ない、2012年にはカーネギー・ホールでリサイタルを開催。2013年には人気フェス"ボナルー"やニューヨークのアポロ・シアターに出演して好評を博した。最新作『ザッツ・イット!』はPHJBの歴史上初めての新曲集で、人気ロック・バンド、マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェイムスとの共同プロデュース。ベンはいう。

「PHJBは2000曲以上の古典的なジャズ・レパートリーを演奏できるんだ。だからジムの"新たに書いた曲ばかりを集めてアルバムにする"という提案には驚いた。そんなアイデア、とても僕には思いつかなかったから(笑)。僕は以前からマイ・モーニング・ジャケットのファンで、2009年から友達づきあいを続けているけれど、ジムはアルバムをプロデュースしてくれるだけではなく、ダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」の共同ライターであるポール・ウィリアムスや、元セミソニックのダン・ウィルソンにも声をかけてくれた。レコーディング中のジムは僕らを"ロック・バンドみたいに演奏してみようぜ"とはやしたてた。だからなのかな、このアルバムは伝統的なジャズ・ミュージックでありつつ、その枠を超えたところがあるように思うね」

PHJBの拠点である「プリザヴェーション・ホール」は1961年にオープンした。場所は726セイント・ピーター・ストリート。ちょっと見た感じ「ホール」というよりは「掘っ立て小屋」だが、古びた壁や色あせた装飾のひとつひとつにニューオリンズ・ジャズ・ミュージシャンの音がしみこんでいるといっても過言ではない。

「もともとは1751年に建てられたらしいんだけど、1800年代に一部が焼失してしまった。それからだね、タヴァーン(アメリカの居酒屋といえばいいか)のような外見になったのは。写真スタジオやアート・ギャラリーに使われた後、1961年に私の両親が改装して、ジャズを楽しめる場所にしたんだ」

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そして1976年、PHJBは初来日を果たす。当時5歳のベンはツアーに同行できなかったが、ニューオリンズに戻ってきた面々が日本のファンの歓待をとても嬉しそうに話していたのは覚えているという。

「僕は今回が初来日になるけれど、日本の皆さんがいかにニューオリンズの音楽に愛情を持っているかは十分に知っている。ライヴの内容については、特に何も決めていない。PHJBがセットリストを組んだことは一切ないんだ(笑)。その場のエネルギーを感じて曲目を選んでいく。だから、どのコンサートも違ったものになる。楽しみにしてほしいね。とはいっても、ニュー・アルバム『ザッツ・イット!』の中からは数多くの曲を演奏することになるだろうし、ひょっとしたら1900年代初頭、ジャズ創世期の頃のナンバーもプレイするかもしれない。いかに過去と現在をブレンドし、未来へつなげていくか。これもバンドにとっては大切な課題だからね」

グループ最年少のピアノ奏者ロネル・ジョンソンは37歳、最年長のクラリネット奏者チャーリー・ゲイブリエルはもうすぐ82歳。世代の離れたメンバーが一体となって、骨太のグルーヴを提供するPHJBの公演は、熱狂的なジャズ・ファンだけではなく、様々なポピュラー・ミュージックを愛する層にも響くことだろう。

「20世紀に生まれたどんな音楽も、根っ子にはジャズがあるんじゃないかな。そのジャズの故郷がニューオリンズだ。ここの人間にとって、ジャズは水や食べ物のようなもの。僕はロックやエレクトロニカも好きだけど、自分の音楽遍歴を考えれば考えるほど"ジャズの存在は本当に大きい"と思うんだ」

原田和典
音楽誌編集長を経て、フリーランスのライターとして新聞、雑誌、CDライナーノーツ、ウェブサイト等に寄稿を続ける。ブルーノート東京HPにライヴ・リポート連載中。

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7月23日発売決定・来日記念盤

ニューオーリンズ発、世界へ!半世紀をこえて活躍する老舗バンドの歴史的音源からベスト・セレクション

プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド
『ザ・ベスト』(録音:1962-2010年)
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)

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