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THE RON CARTER QUARTET

artist RON CARTER

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

来たる5月に89歳の誕生日を迎える巨匠、ロン・カーターのジャパン・ツアーが遂に始まりました。メンバーはロンのほか、ジミー・グリーン(テナー・サックス)、リニー・ロスネス(ピアノ)、ペイトン・クロスリー(ドラムス)。つまり『Foursight - The Complete Stockholm Tapes』と同じ顔ぶれでのライヴです。こうした編成のステージ配置ですと、サックスが前にいて、その後ろにピアノ、ベース、ドラムが並びそうなものですが、このカルテットは異なります。ピアノ、ベース、ドラムス、サックスがほぼ横並びでバンドスタンドに並ぶのです。そしてメンバーは盛んにアイコンタクトを交わしながら演奏を進めていきます。ロンが左手でさりげなく出すキュー(指示)を受けて、演奏の展開がガラリと変わったり、前の曲の響きを残したまま徐々に次の曲に移り変わっていくあたりも、実にスリルがありました。

超満員のオーディエンスの前で深々とお辞儀をした彼らは、さっそく「595」に取りかかります。アルバム『Dear Miles』や、前述のライヴ盤にも収められていたナンバーです。ピアノとベースのユニゾン・パートを含む、どこかブルース調のテーマ・メロディが終わる頃には、誰もが4人の絶妙な呼吸、チームワークに感じ入ることでしょう。なんといっても、約15年間、不動のメンバーで活動をおこなっているのです。続いて始まったのはボサノヴァ調の「Mr.Bow Tie」。やはりロンが書いたメロディアスな自作曲です。ブラッシュとスティックを持ち替えながら、ペイトン・クロスリーが陰影に富むリズムを打ち出します。そこから休みなく、4人はアップ・テンポ曲「Seven Steps to Heaven」へ突入していきます。1963年から68年にかけてのマイルス・デイヴィス・クインテット在籍中、ロンはこの曲を数えきれないほど演奏してきたはずですが、テーマ・メロディの音の伸ばし方にちょっとしたアレンジを加えながらの"2026年版セヴン・ステップス"も痛快です。とくにジミー・グリーンとロンがデュオで奏でた2コーラス分のパートは、この初日ファースト・セットのクライマックスだったのではないかと、個人的には感じました。

次もアップ・テンポでいくのかなと想像していたら、テンポは急に落ちて、バンドの音が静まり、リニー・ロスネスがきらめくようなピアノの音色で特定のフレーズを繰り返します。今度はマイルスの1959年作品『Kind of Blue』に入っていた「Flamenco Sketches」の、ロン・カーター・カルテット流の解釈です。ここではリニーとジミーに大きなスポットが当たりましたが、気がつくと演奏は再び「Mr.Bow Tie」へ。複数の楽曲を、ひとつの楽曲で包み込むという、いわゆるメドレー形式とも異なるフォーマットによる、実に興味深いひとときを味わうことができました。以降も哀感あふれるロンの自作「Seguaro」、リニーとロンのデュオ「My Funny Valentine」、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲 第1番」の一節も挿入された無伴奏ベース・ソロ「You Are My Sunshine」など多彩な選曲で魅了し、ラストの「You and the Night and the Music」では4人が一丸となって快演を繰り広げました。

このカルテットは、16日には「すみだトリフォニーホール」でも公演を行います。ロンが参加したホール・コンサートの名盤といえば、私はすぐさまマイルス・デイヴィス・クインテット在籍時の二部作『My Funny Valentine』と『'Four' & More』を思い出すのですが(場所はニューヨークのフィルハーモニック・ホール 現:デイヴィッド・ゲフィン・ホール)、ホールで聴くジャズもまた格別です。ブルーノート東京公演にいらした方、早々にソールド・アウトになったために来場をあきらめざるを得なかった方、どちらのファンにも大きな満足感を与える一夜になることでしょう。
(原田 2026 1.12)

Photo by Tsuneo Koga

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【LIVE INFORMATION】

THE RON CARTER QUARTET / Japan Tour in 2026
詳細はこちら
1.11 sun., 1.12 mon. ブルーノート東京
1.14 wed. 東海市芸術劇場
1.16 fri. すみだトリフォニーホール / 大ホール
1.17 sat. 高崎芸術劇場 / スタジオシアター
1.18 sun. 山形テルサ

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