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DIANNE REEVES

artist DIANNE REEVES

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

スタンディング・オヴェイションが巻き起こった昨年11月の公演からちょうど1年。ジャズ系ヴォーカルの頂点を極めるひとり、ダイアン・リーヴスが、今年も会心のパフォーマンスを繰り広げています。共演はホメロ・ルバンボ(アコースティック&エレクトリック・ギター)、ジョン・ビーズリー(ピアノ、キーボード)、ルーベン・ロジャース(アコースティック&エレクトリック・ベース)、テレオン・ガリー(ドラムス)という、昨年同様のメンバー。この凄腕揃いの顔ぶれを維持しているのも、さすがダイアンと言えましょう。それぞれがリーダー・クラスのミュージシャンである、この日のライヴは彼らによるインストゥルメンタル・ナンバー「Tell Me A Bedtime Story」から始まりました。アコースティック・ギターの印象が強いホメロが、エレクトリックを用いて実に流暢なソロを聴かせます。

続いてバンドがシンコペーションの利いたリズムを送り出すと、いよいよダイアンの登場です。曲は、十八番の「What's New」。いわゆるワン・コーラスAABA形式で作られていて、Bの部分で転調するのですが、メロディ・ラインはほぼ同じです。逆に言えば平坦になる可能性もたっぷりある楽曲といえましょう。しかしダイアンはこれを、バンド・メンバーのカラフルな伴奏を受けて、実にドラマティックに歌い上げます。歌詞を伴った部分はもちろんのこと、スキャットのパートがまた圧巻。いろんなシラブルを使いながら、ときに管楽器のように、時に打楽器のように歌いこみます。これが現代のスキャットなのだな、と、聴き入ってしまいました。

そのスキャット(ワードレス・ヴォーカル)の一大ショウケースとなったのが、「Minuano (Six Eight)」。ギタリストのパット・メセニーが1980年代に書いた人気曲ですが、カート・エリングもレパートリーに入れているなど、ヴォーカリストの創造心をそそるナンバーでもあるようです。ビーズリーは鍵盤ハーモニカ型のEWIとアコースティック・ピアノでめくるめくソロを展開、ガリーの低音によるバック・コーラスも効果的でした。

前回の来日でも良きアクセントとなっていたホメロのアコースティック・ギターとのデュオ・コーナーで最初に聴かせてくれたのは、1995年のアルバム『Quiet After The Storm』に入っている「Nine」。ダイアンは、先月に満69歳になったこと、年齢は単なる数字でしかないということを語ってから、この曲を歌い始めましたが、語りから歌へのスムーズな間合いはまるでミュージカルのようでした。続く「Our Love Is Here to Stay」はジョージ・ガーシュウィンの遺作としても知られるスタンダード・ナンバーですが、ダイアンはサンバ風のアレンジで歌います。このパートに限らず、近年のダイアン・バンドはサンバやボサノヴァ調の割合が多く、このあたり、ホメロ効果と言えそうです。

ダイアンのライヴのさらなる面白さとして、"伝えたいことに即興のメロディを付けて歌う"ところがあります。私が足を運んだ初日のファースト・セットでは、1987年「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル・ウィズ・ブルーノート」(この場合の"ブルーノート"はレコード会社の名前)出演時の思い出---錚々たるミュージシャンと一緒だったこと、特大の台風に見舞われたことなど---をメロディアスに歌ってくれました。

エンタテインメント性抜群のダイアンのステージ、今度は何を届けてくれるのでしょうか。公演は15日まで続きます。
(原田 2025 11.14)

Photo by Takuo Sato

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【LIVE INFORMATION】

DIANNE REEVES
2025 11.13 thu., 11.14 fri., 11.15 sat. ブルーノート東京
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