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BEN WENDEL

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

圧倒的な感銘を与えた昨年の公演から、はや1年4か月。ニーボディの一員としても活動を続けるテナー・サックス奏者、ベン・ウェンデルが再びブルーノート東京を舞台に快演を繰り広げています。ニューヨークの超老舗ジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で収録された自身のリーダー・アルバム『Understory』、スタジオで練りに練られたニーボディの『Reach』と、どちらの新作も話題を呼んでいる中、絶好のタイミングでの来日といえましょう。ニュアンスに富む音色、幅広い音域、予想を軽く超えるようなスリリングなフレーズづくり、そしてバラエティに富んだエフェクトの活用と、現在形のテナー・サックスの魅力をこれでもかと味わわせてくれるのです。

共演メンバーはテイラー・アイグスティ(ピアノ)、ハリシュ・ラガヴァン(ベース)、ジャスティン・フォークナー(ドラムス)という、非の打ちどころのない面々。ウェンデルも各ミュージシャンのことを順に"インクレディブル"、"アメイジング"、"ワンダフル"という言葉を使って紹介します。アイグスティはリーダー・アルバム『Plot Armor』(ウェンデルも参加)が今年のグラミー賞「最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞」を受賞したばかり。エクステンション付きのベース(4弦が長い)を弾くラガヴァンは昨年の公演に続く参加です。フォークナーはひょっとして2010年のブランフォード・マルサリス・カルテット以来のブルーノート東京への登場でしょうか。静謐なプレイから轟くような叩きまくりまで途方もないメリハリを持つテクニシャンで、曲によってタンバリンをハイハットの上やシンバルの上に置いてリズムに彩りを加えていきます。

初日ファースト・セットで演奏されたのは、一度聴いたら忘れられないほど可憐なメロディを持つ「Lu」、ジョン・スコフィールドに捧げた「Scosh」、セロニアス・モンク作「Evidence」にインスパイアされたという「Proof」など『Understory』収録曲を軸に、『The Seasons』からの「January」、『All One』からの「In Anima」なども織り交ぜたプログラム。ウェンデルとアイグスティのユニゾンでテーマ・メロディが提示される楽曲が割と多めである印象を持ちましたが、このふたりのタイミングというか、呼吸の合わせ方は、"テナーとピアノが混ざった音を出す何か新しい楽器"の響きに案内してくれるような見事なものでした。先に触れた「Proof」は「Evidence」をランダム再生して拡販した感じの抽象的なテーマ・メロディ→自由奔放なウェンデルのソロ→「Evidence」の基となった1929年生まれのスタンダード・ナンバー「Just You, Just Me」にオマージュを寄せたかのような小粋なアイグスティのソロへと移りゆく展開もジャズ・ファンの血を騒がせることは間違いないでしょう。

俊英たちの、胸のすくような音楽世界は本日、明日と続きます。

(原田 2025 6.15)

Photo by Takuo Sato

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【LIVE INFORMATION】

2025 6.14 sat., 6.15 sun., 6.16 mon. ブルーノート東京
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