2025 5.20 tue., 5.21 wed., 5.22 thu., 5.23 fri.
MICHEL CAMILO TRIO featuring DAFNIS PRIETO & RICKY RODRIGUEZ
artist MICHEL CAMILO
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
5月17日に、すみだトリフォニーホールでの意欲的なコンサート(ミシェル・カミロ meets 新日本フィルハーモニー交響楽団)を大成功させたばかりのミシェル・カミロが、昨日からブルーノート東京に場所を改めて白熱のパフォーマンスを繰り広げています。「すみだ」ではソロ・ピアノと、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演による自作のピアノ・コンチェルトで楽しませてくれましたが、ブルーノート東京公演の共演者はプエルトリコ出身のベース奏者であるリッキー・ロドリゲス、キューバ出身のドラマーであるダフニス・プリエト。すっかりおなじみ"黄金のカリビアン・トリオ"というべき面々によるパフォーマンスです。公演は初日のファースト・セットから、文字通りの超満員。「すみだ」コンサートからのリピーターも多そうです。
猛烈に巻き起こる拍手と声援の中、"これぞカミロ!"といいたくなるようなリズミカルな無伴奏パートが耳に飛び込んできます。そこにリッキーとダフニスがごく自然に合流して始まったのは「Mambo Inn」。ラテン・ジャズの父と称されるマリオ・バウサの楽曲で、ジャズ界でもカウント・ベイシー楽団やジョージ・ベンソンがとりあげていますが、ピアノ主体のコンボでプレイされるのは比較的珍しいのではと思います。が、カミロはピアノの全鍵盤を駆使するかのような分厚い響きで魅了、そこにダフニスのドラムスが自由自在に絡みます。1953年に作曲された古典が、見事、新鮮に生まれ変わりました。
続く「Liquid Crystal」は美麗なメロディの中に、ピアノとベースの高速ユニゾンが含まれるナンバー。リッキーの滑らかな指の動き、音程の良さが際立ちます。ラテン・グラミーの最優秀ラテン・ジャズ・アルバム賞に輝いたソロ・ピアノ作品『What's Up?』でも演奏されていた「Sandra's Serenade」(夫人に捧げた楽曲)における、間をたっぷり生かしたプレイぶりも見事。静と動のコントラストを、徹底的に感じさせてくれるのもこのトリオの魅力です。プログラム後半にはディジー・ガレスピー作のジャズ~ラテン・ジャズ名曲「A Night In Tunisia」も登場。これまたピアノ主体のコンボでプレイされるのは比較的珍しいのではと思います(バド・パウエルやエルモ・ホープの歴史的な演奏もありますが)。途中、高速4ビートになるパートも含めて、メンバー3人の音のやりとりはスリリングそのもの。名曲はこうして、その音楽家独自の趣向をこらしたアレンジによって演奏し継がれていくのでしょう。
このトリオは昨年もブルーノート東京に登場しましたが、セットリストはガラリと異なり、初日ファースト・セットで重複した楽曲は、出だしの数音で大歓声が巻き起こる大定番の「On Fire」のみ。私は、さらに多くのレパートリーをカミロ、リッキー、ダフニスの名人芸で聴くことができてとても満ち足りた気分になりました。さあ、今夜はどんな楽曲がこの3人ならではの"マジック"に彩られることでしょうか。公演は23日まで続きます。
(原田 2025 5.16)
Photo by Tsuneo Koga
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【LIVE INFORMATION】
MICHEL CAMILO TRIO
featuring DAFNIS PRIETO & RICKY RODRIGUEZ
2025 5.20 tue., 5.21 wed., 5.22 thu., 5.23 fri. ブルーノート東京
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