[インタビュー|OFFSTAGE]「シンガーとしての魂、 ステージにおいてきました。」和田アキ子さんにインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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[インタビュー|OFFSTAGE]「シンガーとしての魂、 ステージにおいてきました。」和田アキ子さんにインタビュー

[インタビュー|OFFSTAGE]「シンガーとしての魂、 ステージにおいてきました。」和田アキ子さんにインタビュー

シンガーとしての魂、ステージにおいてきました。

「わが心のジョージア」「ローズ」「あの鐘を鳴らすのはあなた」......。
ショーのクライマックスでは、会場全体が息をのんだ。
和田アキ子さんが7月のステージでの心情を生々しくふり返る。

取材はブルーノート東京B1ロビーフロアの〈Bar BACKYARD〉にて。今回のショウのこと、また自身の音楽感について語る口調は真剣且つトップアーティストならではの空気に包まれていた。数々のレジェンドたちとともに、和田アキ子のパフォーマンスも語り継がれていく。
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 堂々とした開演だった。シルクをあしらった白いスーツがピンスポットにキラッキラッと輝く。和田アキ子さんは1分近くをかけて花道からステージに上がると、ヘンリー・マンシーニ作曲「ピーター・ガン」のテーマを歌い上げる。サラ・ヴォーンの歌唱で知られる名曲だ。続けてジョージ・ガーシュウインの「サマータイム」を歌い、客席を見回した。

「近っ! スゴイっすね!」

 7月に2日間2公演行った和田アキ子さんのMCの、最初の言葉である。

「デビューして46年になりますけれど、こんなにお客さんに近いステージで歌ったのは初めてです」

 公演前、和田さんは2度会場の下見に訪れている。

「お客さんと同じ条件で客席からショーを体験しました。オープン前にはステージに立ってもみた。でも、実際に本番を迎えると、ステージからの風景も私の気持ちもリハーサルとはまったく別ですね」

 客席で飲食する前で歌う自分をイメージできないままステージには上がったという。

「英語で歌うジャズに限定せず"和田アキ子ショー"にしてよろしければ、引き受けます」

 店側のオファーにはそう応じた。

 だから、スタンダードナンバーだけでなく、代表曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」やデビュー後間もない頃のヒットナンバー「どしゃぶりの雨の中で」も歌った。小西康陽作の「真夏の夜の23時」や細野晴臣作の「見えない世界」など久しぶりに歌う曲も選んだ。「初めて和田アキ子を観る」というオーディエンスでも楽しめて、歌をじっくり聴いて家路につくショーにしたかったのだ。

「客席が立ち上がったらどう対応しよう」「会場のオペレーションに気が散らないようにしなくては」......不安は尽きない。しかし、どれも杞憂だった。

「みなさん最後まで着席のままで盛り上がってくれました。店のオペレーションも、いったいどうしてなんだろう─? と不思議に思うくらいに自然な動きで、ステージからはまったく気にならなかった。おかげで、思う存分歌うことができました」

live photo
和田アキ子 ─Blue Note Tokyo Special Live─
2014 7.17 thu. - 7.18 fri.
photography = Takuo Sato

 終盤に歌った「ローズ」は圧倒的だった。ロックシンガー、ベッド・ミドラーが主演した映画『ローズ』で歌った切ないバラードだ。

「ご承知のように、私のシンガーとしての原点はレイ・チャールズ。彼と初めて会ったのがニューヨークのブルーノートでした。そして、白人ではほとんど唯一好きなのがベッド・ミドラーです。彼女は1度も日本に来ていないので、ニューヨークのショーを観ました。MC、すごく下品なんですよ。でも、『ローズ』も『男が女を愛する時』も見事でした。『ローズ』は今回どうしても歌いたかった曲です」

 和田さんが「ローズ」を歌った時間帯は、その時だけ会場が静止したように感じられた。

「2日間で、あの時の私のエネルギーは使い切った」

 翌々日、和田さんはレギュラー番組『アッコにおまかせ!』で自分をもう1度立ち上げるのに苦しんだ。

「29年間もやっているものすごく大切な番組なのに、なかなかテンションが上がらなくて、出がけに自宅のトイレで何度も1人リハーサルをやったほどです。もう大変でした。シンガーとしての私の魂、ブルーノート東京にしっかりおいてきました」

photography = Hiroyuki Matsukage
text = Kazunori Kodate

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