2026 6.15 mon., 6.16 tue.
VERONICA SWIFT "HOME"
artist VERONICA SWIFT
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
猛烈にドライヴするジャズ・ヴォーカリスト、卓越したシンガー・ソングライター、観客を魅了してやまないフレンドリーなエンターテイナー。三拍子そろった逸材、ヴェロニカ・スウィフトが自己名義としては初めてとなるブルーノート東京公演を開催中です。かつてクリス・ボッティの公演に同行して数曲を届けてくれたこともありますが、今回は当然ながら全レパートリー、彼女が主役です。
ステージにはまず大林武司(ピアノ)、シンサカイノ(ベース)、チャールズ・グールド(ドラムス)が登場。大林に紹介されたヴェロニカが、万雷の拍手に迎えられて歌い出したのは、近日発売の新作からタイトル曲の「Home」。1950年代の大型ブロードウェイ・ミュージカルの世界がそのまま現代に舞い降りてきたような華やかな楽想を、"腹の底から声を出している"という形容がぴったりの豊かな声量と、軽やかなアクションで届けていきます。スキャットにおける多彩なシラブル、自在なシンコペーションは、ジャズ・ヴォーカル志望者にはとくに必見でしょう。
ラストの音が終わってすぐ、アルバム『Home』にも参加しているグールドが軽快なボサノヴァ・リズムを打ち出します。どこかフーガを思わせる歌声とピアノの絡みのあと、飛び出したのは「No More Blues」。1950年代にアントニオ・カルロス・ジョビンが書いた名曲を、英語の歌詞でじっくりと歌います。ここでもスキャットが飛び出しましたが、1曲目とはまるで趣の異なるアプローチで、ヴェロニカが「声で即興する」ことをいかに深く追求しているかが伝わってきます。続いてはさらに時代をさかのぼって、1927年(およそ100年前)に作曲された「Lonesome Road」へ。ピアノとベースがノスタルジックな2ビートを奏で(グールドは、ニューオリンズ・ジャズを思わせるロール奏法でプレイ)、ヴェロニカは思いっきりブルージーに歌い上げるのですが、そこから4人揃って速めのスウィング(4ビート)へ。ヴェロニカは歌詞に続いて、"最初の"スキャットをして、さらにトロンボーンのような発声に変えて、まるで管楽器そのものといえる"第2の"スキャットへと突入します。ヴェロニカとは、トランペット奏者ベニー・べナック3世のアルバム『A Lot Of Livin' To Do』でレコーディング経験のある大林のピアノはここでも躍動感たっぷりにヴォーカルを盛り立て、小粋なアドリブ・ソロを聴かせてくれました。ヘレン・メリルの歌によって日本で特に人気の高いスタンダード・ナンバー「You'd Be So Nice to Come Home To」(あえて邦題にすると「あなたのところに帰っていけたら」でしょうか)は、サカイノのベースだけをバックに歌唱されました。
父親がホッド・オブライエン、母親がステファニー・ナカシアンという"ジャズ一家"に生まれたこともあって、自身の中にジャズの血が流れていると語るヴェロニカですが、同時に「バッハもストラヴィンスキーもサム・クックもクイーンも大好き」と語る、わけへだてのない音楽人間でもあります。この日はレッド・ツェッペリンの『IV』に入っていたフォーキーな「Going to California」をジャズ・アレンジで、そしてジャズ・プロジェクトと並行しておこなっているロック~ポップ系バンド"Dame"(デイム)のレパートリーから「Sing」も届けてくれました。
ヴェロニカの公演は本日までブルーノート東京、明日はコットンクラブ(2024年以来の登場、ピアノは若井優也)を舞台に行われます。5月に来日したディー・ディー・ブリッジウォーター公演にいらっしゃった方、7月に来日予定のガブリエル・カヴァッサ公演への参加を考えておられる方、どちらにも強くお勧めできるプログラムです。いっそう、現在のジャズ・ヴォーカル・シーンの充実を立体的に楽しめることでしょう!
(原田 2026 6.16)
Photo by Yuka Yamaji
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【LIVE INFORMATION】
VERONICA SWIFT
"HOME"
2026 6.15 mon., 6.16 tue. ブルーノート東京

2026 6.17 wed. コットンクラブ

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