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CÉCILE McLORIN SALVANT QUARTET with SULLIVAN FORTNER, YASUSHI NAKAMURA & KYLE POOLE

artist CÉCILE McLORIN SALVANT

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

グラミー賞「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞」の常連であり、9月にはニューアルバム『Oh Snap』の発表も予定されているセシル・マクロリン・サルヴァントが、約7年半ぶりにブルーノート東京に帰ってきてくれました。共演メンバーはサリヴァン・フォートナー(ピアノ)、中村恭士(ベース)、そして2018年の公演にも参加していたカイル・プール(ドラムス)。『Oh Snap』の基本メンバーが勢ぞろいした形です。

セシルは事前にセットリストを組まず、ある意味即興的にステージを構成していきます。「では、次はこの曲を歌いましょうか」という感じの彼女の語りに即座に反応し、イマジネーションに富んだプレイを始めるミュージシャンたちの対応力の凄さにも驚かされるばかりです。初日のファースト・セットは、アーヴィング・バーリンが1936年に書いたスタンダード・ナンバー「Let's Face the Music and Dance」から始まりました。セシルはベティ・カーターを彷彿とさせる"歌詞を伴った即興"を繰り広げ、サリヴァン、中村、カイルはそこに絡むようなアプローチで演奏を進めていきます。歌と伴奏の境目は、ここにはありません。4人のクリエイターが、一丸となって今・この時にしか描けない音楽世界を表現していくのです。まさにセシル・マクロリン・サルヴァント・"カルテット"です。

セシルの歌う楽曲は時代もジャンルも軽々と越えていきます。クルト・ヴァイルが作曲を担当した戯曲「三文オペラ(The Threepenny Opera)」からの「Barbara Song」では語りも交えつつシアトリカルなパフォーマンスを繰り広げ、ハウリン・ウルフやクリーム(エリック・クラプトンが在籍したグループ)のプレイでも知られるブルース「Spoonful」では、カイルの実にメロディアスなドラムスと対話するような歌唱を聴かせてくれました。そしてこの日、最も長尺の演唱となったのが、アビー・リンカーンの書いたスローバラード「Down Here Below」。柔らかで伸びのある声、澄み切ったロング・トーン、口とマイクの距離を細かく変えながらのコントロール、リズムの切れ味などなど、なぜセシルが現代ジャズ・ヴォーカリストの最高峰に数えられるのか、改めて実演で示した感じです。そういえば、今月上旬にブルーノート東京に登場したテリ・リン・キャリントンとクリスティ・ダシールの公演"WE INSIST 2025!"もアビー・リンカーンへの捧げものでした。月に2回も、偉大なるアビー(今年、没後15年にあたります)に思いを馳せる機会が訪れようとは、個人的には「ありがとうございました」という気分でいっぱいです。

カルテットの公演は22日まで続きます。いったいどんな楽曲が、この4人の精鋭による解釈で鳴り響くのか、期待をいっぱいにしてお越しください!

(原田 2025 8.21)

Photo by Tsuneo Koga

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【LIVE INFORMATION】

2025 8.19 tue. コットンクラブ
Sullivan Fortner -piano solo-
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2025 8.20 wed., 8.21 thu., 8.22 fri. ブルーノート東京
CÉCILE McLORIN SALVANT QUARTET
with SULLIVAN FORTNER, YASUSHI NAKAMURA & KYLE POOLE
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SET LIST

2025 8.20 WED.
1st
1. LET’S FACE THE MUSIC AND DANCE
2. LOVER MAN (OH WHERE CAN YOU BE)
3. OBSESSION
4. SPOONFUL
5. BARBARA SONG
6. THE BEST THING FOY YOU (WOULD BE ME)
7. DOWN HERE BELOW
8. RIDIN’ HIGH
EC. LEFT OVER
 
2nd
1. SOME PEOPLE
2. IF MOMMA WAS MARRIED
3. CHANGEABLE DADDY OF MINE
4. BY MYSELF
5. PRELUDE TO A KISS
6. WIVES AND LOVERS
7. OBLIGATION
8. UNTIL
9. OBJET DONT LES CHARMES SI DOUX 
10. MISTA
EC. GUYS & DOLLS

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