ジャズドラムの巨人が、その真髄を見せつけた | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ジャズドラムの巨人が、その真髄を見せつけた

ジャズドラムの巨人が、その真髄を見せつけた

「現代最高のジャズ・ドラマー」と称される
ジャック・ディジョネットの渾身のプレイ。
スタートと同時に全ての観客が釘付けとなったことは
言うまでもなく、凄腕メンバーたちとともに魅せた
そのステージは、全てが新しくクリエイトされる
ジャズそのものだった。

 前方に二つの小さなシンバルが見える。音色の異なるシンバルがいくつも並ぶ特殊なセッティングのドラムセットに座ったジャック・ディジョネットがスティックを握って叩き始めた瞬間に、70歳を越えるこのジャズドラムの巨人の衰えなさに、全ての観客が驚いたと同時に、その打音と残響のコントロールに誰もが釘付けになったことだろう。

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ディジョネットが多彩な音色で、様々なリズムを提示し、それに呼応するように、ラヴィ・コルトレーンはテナーとソプラニーノ(ソプラノサックスよりも高音が出る。渡辺貞夫さんの使用で有名!)を持ち替える。ラヴィは近年、様々な作品にひっぱりだこだが、その理由を計るには充分の圧巻のパフォーマンス。力強く柔軟、そしてどんな曲でも自身の"ヴォイス"を響かせる。マシュー・ギャリソンは多弁な二人の音の隙間を縫うように、テクニックよりも、その耳で二人の音に反応しながら、的確に慎重にトリオのサウンドを支え、その実力を見せ付ける。後半では、マイルス・デイビスの名曲〈Sketches Of Spain〉をディジョネットのピアノでリリカルに。〈I Love You Porgy〉のテーマをさらっと忍ばせたりと、ピアノアルバムをリリースするほどの腕前もドラム同様衰えていない。

 この日は、コルトレーン由来の楽曲多めの選曲だったが、曲はあくまでも素材として、新たな解釈に書き換えていく。それはまるで演奏者の色が、楽曲のイメージを鮮やかに塗り替えていくかのよう。つまり、ジャズの真髄を見せつけられた。そんな一夜だったのかもしれない。

LIVE1
JACK DeJOHNETTE TRIO featuring RAVI COLTRANE & MATTHEW GARRISON
ジャック・ディジョネット・トリオ featuring ラヴィ・コルトレーン&マシュー・ギャリソン
2014.5.20 tue. - 5.22 thu.
Jack DeJohnette (ds,p), Ravi Coltrane (sax), Matthew Garrison (b)

SET LIST
1st
1.ATMOSPHERE/2.7th D/3.WISE ONE/4.FLAMENCO SKETCHES/5.SEGMENT/EC.BLUES CONNOTATION
2nd
1.ATMOSPHERE/2.COUNTDOWN/3.ONE ON ONE/4.LYDIA/5.AFTER THE RAIN/6.SEGMENT
柳樂光隆(なぎら・みつたか)
1979年生まれ。ジャズ評論家。ジャズを解放する2000年以降のジャズガイドブック「JAZZ The New Chapter〜ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平」を監修・執筆。

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