自然とジャズを調和させるギタリスト、 小沼ようすけが語る"グォッカ"の魅力 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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自然とジャズを調和させるギタリスト、 小沼ようすけが語る"グォッカ"の魅力

自然とジャズを調和させるギタリスト、 小沼ようすけが語る"グォッカ"の魅力

いまパリで台頭するクレオール・ジャズ
"Jam Ka"はその動きと現在進行形でリンクする
日本発のプロジェクト

ジャズギタリストとして世界を旅する小沼ようすけは、同時にサーフィンというもうひとつのフィルターを通して世界を見つめてきた。湘南、インドネシア、バリ、オーストラリア、カリフォルニア、パプアニューギニア、カリブ... 海から見える自然の風景、波のシェイプ、うねり、日射し、風、雨... 様々に変化する自然に身を置きながら、そのフィーリングをどうしたら自己の言語としてのジャズに結びつけて表現できるか... 模索して創り出した回答が、Jam Kaである。

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(c) Yasuma Miura



現在のパリでは、"クレオール"と呼ばれるカリブ生まれのフランス人のミュージシャンによる"クレオール・ジャズ"が活性化している。クレオール・ジャズは、フランス海外県グアドゥループに伝わる民族音楽"グォッカ"のシンプルで高揚感のあるグルーヴに代表されるカリブのエッセンスを織り込んだ、フランス特有のスタイリッシュなジャズである。以前から存在はしていたものの、この10年ほどの間にクレオール・ジャズ・ムーブメントを押し上げたのはジャック・シュワルツバルト、グレゴリー・プリヴァ、ソニー・トルーペなど、Jam Kaを取り巻くクレオールたちである。もし今クレオール・ジャズの人脈図を描いたら、2010年の「Jam Ka」からコミットしてきた小沼も、主要人物の一人として描き込まれるに違いない。そんなクレオールたちとパリで録音した「Jam Ka Deux」を携え、「なぜ、日本人ジャズギタリストがクレオール・ジャズなのか?」というパリ市民の興味に音で応えるべく、小沼は今年の2月、初のパリ公演に臨んだ。

この夜のライヴはパリのジャズラジオ局で生放送オンエアが決定していた。別の日には国営テレビ局での放映用に制作中というクレオールミュージックの今と昔を探るドキュメンタリー番組の取材も受けていた。興味津々のパリのオーディエンスでいっぱいになった会場で、小沼と仲間たちは時にメロウに、時にエキサイティングに、自然とジャズの調和を、日本人的感性のメロディとグォッカ独特のプリミティヴなグルーヴの融合した"ジャズ"として表現した。パリの観衆の熱狂と喝采は映像に記録されている通りだ。

小沼のブルーノート東京でのリーダー公演は、前作「Jam Ka」(2010)のリリース・コンサート以来となる。「Jam Ka Deux」メンバーとの来日公演は必ずブルーノートでと決めていた小沼がこのライヴに寄せる意気込みは大きい。前回も一緒だったアーノウ・ドルメン(ka, drums)、オリヴィエ・ジュスト(ka)という2人のグォッカマスターたちと、RHファクターやスティーヴ・コールマン・ファイブエレメンツのメンバーとして常に時代の最先端ジャズを支えてきたレジー・ワシントン(b)に加えて、今回は新鋭ピアニストのグレゴリー・プリヴァが参加することも注目だ。マルティニーク出身のこの美麗ピアニストの繊細なタッチに息を飲むことだろう。小沼とグレゴリーはブルーノート公演前日のJazz Auditoriaにもデュエットで出演する。お互いの持つ美しい音を純度高く調和させた演奏になることは間違いない。





(c) Lionel Baunot



text = Seiichiro Matsunaga

松永誠一郎(まつなが・せいいちろう)
音楽プロデューサー、プロモーター、評論家。デトロイト・ジャズ・フェスティバル+横濱Jazz Promenade交流事業、ヨーロッパのジャズフェスに日本人アーティストを派遣するなど国際的に幅広く活動。

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