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[スペシャル・ライブレポート]挾間美帆が見た、カート・ローゼンウィンケル『Caipi』NY公演

[スペシャル・ライブレポート]挾間美帆が見た、カート・ローゼンウィンケル『Caipi』NY公演

NYで行われた、
カート・ローゼンウィンケル"CAIPI BAND"の最新ステージ
挾間美帆によるライブレポートが到着!

制作に10年をかけたと言われる最新アルバム『Caipi』を携え、間もなく待望の来日を果たす現代ジャズ・ギターの皇帝、カート・ローゼンウィンケル。先鋭的な感性を持ち合わせたブラジル・ミナス新世代の才能を招いて制作された本作品は「ジャズの未来を切り拓く超大作」との呼び声も高く、早くも世界中から絶賛の声が寄せられている。

4月の日本公演にも参加するメンバーが勢揃いし、3月14日(火)~3月18日(土)の5日間に渡りニューヨークの老舗ジャズクラブ「バードランド」で行われた"CAIPI BAND"の最新ステージを、ニューヨーク在住の作曲家/ピアニスト、挾間美帆がレポートする。

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[3月14日(火)~3月18日(土) ニューヨーク「バードランド」にて]

 誰も、気負っていない。限りなく自然体のミュージシャンたちが、淡々と演奏しているように見える。でも彼らがその場で創り上げる音楽のドラマと音の厚みは、彼らがいかに丹精を込めてこの音楽を演奏しているのかを、静かに、しかしとても強く物語っていた。

 このほど日本公演に先がけ北米で「Caipi」CDリリース記念ツアーが始まった。最初の公演地としてカートが選んだのは、ニューヨークの老舗ジャズクラブ・バードランド。会場には熱心にステージセットの写真を撮るファンやミュージシャンの姿も見受けられた。アルバムでは大半の部分をカート自身が演奏しているため、ライブはどんなメンバーや音楽構成になっていくのか期待が高まっていた。

Kurt Rosenwinkel


 カートがツアーメンバーに選んだのは、「Caipi」で大変重要な役割を担う若干23歳のブラジル人ミュージシャン、ペドロ・マルチンスを中心とした若手音楽家たち。カートがプロデュースし今年中にリリース予定のペドロの新アルバムに参加したフレデリコ・ヘリオドロ&アントニオ・ロウレイロに、ベルリン在住の女流ピアニスト、オリヴィア・トルンマーとニューヨーク在住のドラマー、ビル・キャンベルが加わった。ドラム以外のメンバーにはヴォーカルマイクが用意され、ペドロとアントニオはマルチに楽器をあやつる。そして、ベルリンで2週間じっくりとリハーサルを行い演奏構成をかためていった彼らに、特筆すべきサウンドエンジニアが帯同する。「Caipi」の録音及びミックスも担当したイギリスを代表するエンジニア、ポール・ステイシーが、楽曲を知り尽くした耳を生かして素晴らしい音響に仕上げていくのだ。

左:Pedro Martins、右:Frederico Heliodoro


左:Bill Campbell、右:Antonio Loureiro


Olivia Trummer


 演奏曲目は、「Caipi」収録曲を中心に、途中に"リハーサル中に出来上がった"という未発表曲も組み込むサービスぶり。目を瞑り歌うペドロから少し下がったところにひっそりと立つカートの姿が印象的だが、その音は圧倒的な支配力を誇る。ヴォーカルと魔法のように溶け合い、縦横無尽にアンサンブルの役割もこなし、ソロでは自身の歌心を存分に発揮。フレデリコがぴったりと音楽に寄り添い、ペドロの若々しいサウンドがアクセントとなれば、アントニオがスパイスを加え、オリヴィアとビルがしっかり音楽を引き締めていく。ギター中心のバンドならではの、音の立ち上がりの"深み"が本当に心地よく、観客もリラックスしながらどんどん惹き込まれている様子だった。

 ライブ後に、「日本に行く頃にはもっと"バンド"として発展していると思うし、それを楽しみにしている」と話してくれたメンバー達。アルバムから飛翔したサウンドを、是非体感してほしい。

photography = Takehiko Tokiwa
text = Miho Hazama
協力:ジャズライフ

挾間美帆(はざま・みほ)
2009年、国立音楽大学作曲専攻卒業。在学中より作編曲活動を行なう。2015年、セカンド・アルバム『タイム・リヴァー』を発表し、日米でリリース・ライヴを開催。2016年、米ダウンビート誌の「ジャズの未来を担う25人」に選出される。

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