原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

選りすぐりの楽曲、輝かしい歌声、卓越したエンターテイメント性が一体となって、とびきりのひと時を届けてくれます。パティ・オースティンのブルーノート東京公演が昨日から始まりました。

MC部分でオーディエンスを驚かせていた通り、パティは今年8月に75歳の誕生日を迎えました。4歳の頃からステージに立っているといいますから、芸歴は70年を超えますが、ますます歌うのが楽しくてたまらない、観客からのレスポンスが嬉しくてたまらないという感じのパフォーマンスは、いつ見ても、いつ聴いても新鮮です。

オープニングは、インストゥルメンタル曲の「Maputo」。マーカス・ミラーが書き、デヴィッド・サンボーンとボブ・ジェームスの共作アルバム『Double Vision』に収録され、その後、サンボーン、ボブ、マーカスが各自のライヴで演奏して、すっかりスタンダード・ナンバーとして定着した一曲です。が、この日はキム・ハンセンのキーボードがメインとなり、そこにもうひとりのキーボード奏者であるノリコ・ライトがハーモニーをつけていく展開。こうした編成で聴く「Maputo」は実に新鮮です。続く「Put It Where You Want It」ではカーライル・バリトーのギターがフィーチャーされました。

場内の熱気が増したところで、いよいよ本日の主役であるパティ・オースティンの登場です。オープニングは、「Stomp」「Give Me the Night」など数々のナンバーを盛り込んだ「Quincy/Temperton Medley」。いきなり、ファンキー＆ダンサブルに歌いこんでいきます。パティは幼少の頃からクインシー・ジョーンズに才能を高く評価され、1960年頃には歴史的な"Free and Easy"ツアーにも参加、交流は彼が他界するまで続きました。そのクインシーと作曲家のロッド・テンパートンが送り出した楽曲を盛り込んだのが、このメドレーです。続いてやはりクインシー＆テンパートン・コンビが関わったパティ自身の全米No.1シングル「Baby, Come to Me」を届け、さらに前回の来日時に"こんど歌ってほしい"とリクエストされたという「Ai No Corrida」も鮮やかな"パティ節"で聴かせてくれました。

17歳の時に書いた「Say You Love Me」でシンガーソングライターとしての魅力を発揮した後は、ホリデイ・ソングのコーナーへ。「Winter Wonderland」ではドラマーのチャド・ライトが小気味よいシャッフル・ビートを奏で、「Have Yourself a Merry Little Christmas」でのパティは歌詞の一言一言を語りかけるようなアプローチでファンを魅了しました。やはり"クインシー・ファミリー"といっていいであろうグレッグ・フィリンゲインズがファンキーな編曲を施した「They Can't Take That Away From Me」を歌い続けているのも嬉しいですし、"憎しみを包み込むことができるのは愛です"と語った後に、"誰だって頼れる誰かを求めている。抱えきれないほどの重荷があるのなら、私を呼び出して、頼ってほしい"というような歌詞を持つビル・ウィザーズの「Lean on Me」につなげていく展開にも胸が熱くなりました。

バンドの伴奏でヒット曲、名曲をたっぷり届ける公演は17日まで行われます。また22日にはパティが再登場し、結成90年を迎える超名門のカウント・ベイシー・オーケストラと共に、エラ・フィッツジェラルドに捧げるプレミアム公演が開催される予定です。歌姫、パティ・オースティンの魅力をライヴで満喫できる最高の時期が訪れていると言えましょう。
(原田 2025 12.15)

Photo by Tsuneo Koga

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【LIVE INFORMATION】

PATTI AUSTIN
2025 12.14 sun., 12.15 mon., 12.16 tue., 12.17 wed.　ブルーノート東京

The 90th Anniversary Residency
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
directed by SCOTTY BARNHART
with special guest PATTI AUSTIN sings ELLA FITZGERALD
2025 12.20 sat.　高崎芸術劇場 / 大劇場

2025 12.22 mon.　ブルーノート東京