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André 3000:New Blue Sun LIVE

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

力作『ニュー・ブルー・サン』が第67回グラミー賞の3部門にノミネート。フルート奏者として新境地を開拓するアンドレ3000の初ブルーノート東京公演、いや、あえて"儀式"という言葉を使いたくなるパフォーマンスが、絶好のタイミングで昨日から開催されています。ヒップホップ・デュオ"アウトキャスト"での活躍も語り草になっているアンドレですが、初ソロ・アルバムにあたる『ニュー・ブルー・サン』は瞑想的なインストゥルメンタル集。しかしライヴでは時に掛け声、唸り声をあげながら演奏し、あの深い声でMCを届けてくれます。

彼を囲むのは、『ニュー・ブルー・サン』のコア・メンバーといえる才人たち。アリス・コルトレーンの薫陶を受け、ミゲル・アトウッド・ファーガソンやレイクシア・ベンジャミンとも共演するスーリヤ・ボトファシーナ(キーボード)、バンド"マーズ・ヴォルタ"やミシェル・ンデゲオチェロとの共演でも超絶的なプレイを聴かせたディーントニ・パークス(パーカッション)、著名なプロデューサーであり、ロサンゼルスのクリエイティヴな音楽シーンの要に位置するひとりであろうカルロス・ニーニョ(パーカッション)という面々です。
ステージの背後には巨大なライト(ぱっと見た感じ、和太鼓のようです)が並べられ、メンバーを照らします。客席から見えるのは、逆光気味に浮かび上がった4人の男たちの姿。
アンドレはアコースティック/エレクトリック、縦/横それぞれの笛を持ち替えます。
タンギングの強さ、自由奔放なフレーズの面白さに聴き入り、自然界のさまざまな音をこの夜に持ち寄ってきたかのようなスーリヤ、ディーントニ、カルロスの呼応に心地よくなっていると、あっという間に時間が経ってゆきます。アウトキャストではジョン・コルトレーン(アリスの夫)の演奏で有名な「マイ・フェイヴァリット・シングス」を目の覚めるようなビートで解釈していましたが、現在のアンドレのステージはビートや小節数といった概念から離れ、音を空間に漂わせる感じです。
45分を過ぎた後、最初のMCがあり、完全即興によるパフォーマンスであることが伝えられます。後半部分では一定のリフが繰り返されるパートも登場し、いっそうの盛り上がりを経て、やがて潮が引いていくようなエンディングへと達しました。

アンドレも参加している2作-----シャバカ『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace(邦題:美の恵み)』やカルロス・ニーニョの『プラセンタ』のファンはもちろん、フリー・ジャズ全般や、伝説的ウッドウィンド奏者であるポール・ホーンがタージ・マハルやピラミッドで録音した一連の営みなどに惹かれている方にも、ぜひおすすめしたいステージです。アトランタ(アメリカ)、ノースシー(オランダ)、モントリオール(カナダ)などのジャズ・フェスティバルにも登場し、バンドの音を磨き上げてきた彼らのライヴをブルーノート東京で体験できることは、大変に「嬉しい事件」だと思います。

未知の世界への音楽旅行は、多くの観客を魅了しながら幕を下ろしました。その特別な夜は、ブルーノート東京に新たな歴史を刻んだと言えるでしょう。
 
(原田 2024 11.27)

Photo by Tsuneo Koga


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【LIVE INFORMATION】

André 3000:New Blue Sun LIVE
2024 11.25 mon., 11.26 tue., 11.27 wed. ブルーノート東京
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