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ANDREA MOTIS "Temblor"

artist ANDREA MOTIS

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

"来日のたびに新しい世界を届けてくれる。だから毎回、見逃すわけにはいかない"。そんな存在がアンドレア・モティスです。前回の公演では5人編成のバンドを率いて、エレクトリック・サウンドを大きく導入した傑作アルバム『ループホールズ』の世界を堪能させてくれましたが、今回は3人編成による新プロジェクト"Temblor"での登場。空間に音を漂わせるような、非常にニュアンスに富んだサウンドづくりで魅了します。

向かってステージの左端にはヴァイオリンとマンドリンが立てかけられており、右側にはパーカッション群が密集しています。場内が暗くなるとともにメンバーがステージに登場し、パフォーマンスを始めたのは、チェロ奏者パブロ・カザルスの演奏で世界中に知れ渡ったカタルーニャ民謡「El Cant dels Ocells(鳥の歌)」。私はアンドレアに"オープニングにリズミカルな楽曲を持ってきて、一気に観客を引き込むアーティスト"という印象を持っていたのですが、今回は異なります。非常に静謐な演唱で、オーディエンスの心を掴むのです。

夫君のクリストフ・マリンジャーは、ルーパーを存分に使いながら、"弦の魔術師"ぶりを存分に発揮します。ピチカート奏法でヴァイオリンの低音弦をベース・ラインのように弾き、それをループさせながら、さらに弓弾きで華麗なプレイを披露。結果として生み出されたのは、ベース・パートとストリングス・パートの合奏です。その分厚い響きを受けてアンドレアが歌い、トランペットを吹いて、それをゼ・ルイス・ナシメントの非常にキメ細かな打楽器演奏が鼓舞します(随所で聴かれた"足カウベル"も圧倒的でした)。ナシメントは「3 Cajones」で大きくフィーチャーされましたが、手とスティック、皮ものと金もの等を巧みに使い分けた実にドラマティックな叩きっぷりは、ロング・ソロというよりもパーカッション・シンフォニーと呼びたくなるものでした。

後半ではカーティス・メイフィールドの「Move On Up」を疾走感あふれるアレンジで聴かせ、続いて日本のファンへのサプライズとして松原みきの歌った"シティ・ポップの聖典"「真夜中のドア〜Stay With Me」がパフォーマンスされました。英語・スペイン語・カタラン語・ポルトガル語などで流暢な歌唱を聴かせてきたアンドレアが、ここでは日本語の歌詞を明瞭に歌い、客席も盛大な手拍子で演奏に参加します。さらに盛り上がったところでプレイされたのは、シューベルトの「An die Musik」。"松原みきの次にシューベルトが出てくるとは"と、すっかり驚かされましたが、同時に、こうした、時代も国籍もカテゴリーも超えた楽曲が、いま、一つのセットリストに共存し、ひとつの空間で響きあうところに、私はたまらない喜びを感じました。

公演は9日まで続きます。スペイン(カタルーニャ)出身のアンドレア・モティス、オーストリア出身のクリストフ・マリンジャー、ブラジル出身のゼ・ルイス・ナシメントが、いま、日本で繰り広げている音楽世界を、ぜひご堪能ください。

(原田 2024 6.8)

Photo by Yuka Yamaji

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【LIVE INFORMATION】

ANDREA MOTIS
"Temblor"
2024 6.7 fri., 6.8 sat., 6.9 sun. ブルーノート東京
詳細はこちら

SET LIST

2024 6.7 Fri.
1st
1. EL CANT DELS OCELLS
2. FILHO DE OXUM
3. EL PESCADOR
4. ESPERA
5. 3 CAJONES
6. DULCE ACIERTO
7. MOVE ON UP
8. AN DIE MUSIK:SCHUBERT
EC. STAY WITH ME
 
2nd
1. EL CANT DELS OCELLS
2. FILHO DE OXUM
3. EL PESCADOR
4. ESPERA
5. 3 CAJONES
6. DULCE ACIERTO
7. MOVE ON UP
8. STAY WITH ME
EC. AN DIE MUSIK:SCHUBERT

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