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AVISHAI COHEN TRIO

artist AVISHAI COHEN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

楽器を鳴らしきるテクニック、狂おしいほどのメロディ・センス、常に逸材を擁するバンド・リーダーとしての鋭い感覚。アヴィシャイ・コーエンのパフォーマンスに接するたびに、「なんて才気に富むひとなのか」と感嘆せずにはいられません。

小曽根真とのユニットThe "Amity Duet"でも話題を集めるこの鬼才ベーシストが、ピアニストのガイ・モスコヴィッチ、ドラマーのロニ・カスピとのオール・イスラエル人レギュラー・トリオで日本に戻ってきてくれました。しかも今回は5デイズ10セット公演です。私は初日ファースト・セットに足を運びましたが、目下の最新傑作『Shifting Sands』からのレパートリーはもちろん、2カ月ほど前にレコーディングが終わったという次作収録予定の新曲、さらにクラシックの名曲のジャズ化(アヴィシャイ化)も聴かせるなど、内容は実にバラエティに富んでいました。また、アヴィシャイのベース・プレイは音程が良いので、随所に登場するピアノとのユニゾン・パートに接すると、(以前にも書きましたが)ふたつの楽器の響きと奏者ふたりの呼吸が見事にとけあって、ひとつの巨大な合成楽器から音が飛び出してくるような感覚を与えます。

オープニングは『Shifting Sands』収録曲「Intertwined」。メンバーそれぞれが他のふたりの音を実に注意深く聴き、触発され、「いま、ここしかない」という瞬間に新鮮なフレーズを放っていく-------ここで早くもトリオの三位一体ぶりに唸らされ、そこから新曲の「Courage」へと移りゆきます。ガイが奏でる端麗なメロディ、アヴィシャイとロニが織りなすリズムの、なんと味わい深いことでしょう。全体の約三分の一が、ワルツのフィーリングを持つ楽曲で占められていたのもこのセットの特徴で、とくにリスト「愛の夢」のカヴァーには3人の持つ抒情的・詩的な一面が注ぎ込まれている印象を受けました。

ロニに宛て書きしたのであろう「Roni's Swing」は、いわゆる4ビートのナンバー。1990年代、キャリアのごく初期のアヴィシャイはニューヨークのモダン・ジャズ系クラブ「スモールズ」に登場するいろんなバンドで弾いていましたが、近年の彼がこうしたアプローチをとるのは珍しいといっていいのではないでしょうか。アヴィシャイはベースのネックの部分を体から離し気味にして、腕を思いっきり伸ばしながら躍動的な"ウォーキング奏法"を行ないます。後半部分でピアノとドラムが8小節ずつのソロの掛け合い(エイト・ヴァース・チェンジ)を行ない、そこからテーマ・メロディに戻っていくのですが、往年のモダン・ジャズの様式美を尊重しつつも、奏でられるフレーズは新鮮そのもの。アヴィシャイ・トリオの、さらなる一面に触れる思いがしました。

早くも10月に再来日し、すみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団との共演も行われるという朗報も届きましたが、まずその前に、「いま現在のアヴィシャイ・コーエン・トリオ」を目の当たりにして、彼らの絶好調ぶりを浴びるのが最高のプランです。超満員のオーディエンスからスタンディング・オベイションを引き出す3人組の公演は、19日まで休みなく続き、20日には高崎芸術劇場でも開催されます。
(原田 2024 4.14)

Photo by Takuo Sato

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【LIVE INFORMATION】

AVISHAI COHEN TRIO
2024 4.13 sat., 4.14 sun., 4.15 mon., 4.16 tue., 4.19 fri. ブルーノート東京
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2024 4.20 sat. 高崎芸術劇場 スタジオシアター 〜"Avishai Birthday Celebration Show 2024"
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An evening with Avishai Cohen "Two Roses"
アヴィシャイ・コーエン meets 新日本フィルハーモニー交響楽団
2024 10.5 sat. すみだトリフォニーホール 大ホール
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※4.18 thu. 10:00am より JAM SESSION会員割 発売開始

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