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CAUTIOUS CLAY

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

要注目のシンガー・ソングライター、コーシャス・クレイの初来日公演がついに始まりました。ビリー・アイリッシュ、ジョン・レジェンド、ジョン・メイヤーらとコラボレーションを行ない、代表曲のひとつ「Cold War」はテイラー・スウィフトの楽曲「London Boy」にサンプリング。勢いに乗る彼が、名門ブルーノート・レコーズから発表したメジャー・デビュー作『Karpeh』を携えて、ついに東京にやってきたのです。

"錚々たるポップ・スターと交流するシンガー・ソングライターが、どうしてジャズの老舗レコード会社と?"という疑問が生まれる方もいらっしゃるかもしれませんが、コーシャスは少年時代からジャズ・ファンでもあり、ジャズにも精通するフルート奏者のグレッグ・パティロに7歳の頃から師事、高校のジャズ・バンドではサックスを演奏していたそうです。『Karpeh』にはジュリアン・ラージとの感動的な合作群に加え、アンブローズ・アキンムシーレ、イマニュエル・ウィルキンス、カイ・エクハルト(個人的にはジョン・マクラフリンとの共演を思い出します)らとの共演も収められていましたが、この初来日ステージも、ニア・フェルダー(ギター)、ジョシュア・クランブリー(ベース)、ブライアン・リッチバーグ(ドラムス)と、今のジャズを推進する強力このうえないメンバーと共に行われています。ソロ/バッキング、和音/単音の境を飛び越えていくようなニアのアプローチ、『Karpeh』でも大きな役割を担っていたジョシュアがはじきだす重量感たっぷりの低音、タイトにリズムを刻むいっぽうで心憎いまでの"ずらし"も盛り込むブライアンの手足、そのどれもがスリリングです。コーシャスはファルセットも用いつつ、滑らかで優し気な歌声をたっぷり届け、そればかりか、ほとんどの曲でフルートもしくはテナー・サックスも満喫させてくれます。このあたりは『Karpeh』とは一味異なる、ライブならではの趣向といえましょう。

「Fishtown」に始まり、アルバム発表前にシングル・リリースされていた「Ohio」、ジュリアン・ラージとの合作「Another Half」等を含むセットリストは、コーシャスの現時点でのベスト・オブ・ベストといっていいはずです。センスに富む自作自演の楽曲が、背後のスクリーンに映し出される幻想的な情景と一体化したさまは、オーディエンスを見たことのないどこかへと連れ出してくれるようでもあります。途中ではなんと、カヴァー曲として、「Europa」も披露。「哀愁のヨーロッパ」という邦題を持つ、ロック・グループ"サンタナ"が大ヒットさせた、アルゼンチン出身のテナー・サックス奏者であるガトー・バルビエリの演奏も評判を集めたバラードです。コーシャスもMCパートでこの二者に言及しながら、テナーで朗々とメロディを演奏します。私は彼の、また別の一面を見たような気分になり、「これだからライブはやめられない」という気持ちを、一層強くしました。

オーラスを飾った「Wildfire」(2021年の作品『Deadpan Love』収録)まで、時の流れを文字通り一瞬に感じさせる充実のひとときでした。公演は本日、明日と、さらに充実の度を加えてゆくに違いありません。才人コーシャス・クレイの日本デビュー・ステージを、ぜひお楽しみください!
(原田 2023 11.20)

Photo by Makoto Ebi


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【LIVE INFORMATION】

CAUTIOUS CLAY
2023 11.19 sun., 11.20 mon., 11.21 tue. ブルーノート東京
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