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KENNY BARRON TRIO "80th Birthday Celebration"

artist KENNY BARRON

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ピアニスト、バンド・リーダー、作曲家、教育者として、ますます精力的な活動を続ける真の"ジャズ・マスター"、ケニー・バロンの来日公演が昨日から始まりました。会場は超満員、年齢層も幅広く、どれほど多くのオーディエンスが彼の来日を待ちわびていたかがわかります。

10代の頃からジェイムズ・ムーディやディジー・ガレスピーと演奏し、その後もユセフ・ラティーフ(彼も教育者でした)、バディ・リッチ、ロン・カーター、スタン・ゲッツ等のバンドで目の覚めるようなプレイを聴かせてきたバロンも、今年でついに80歳。'80年代からは自身のトリオによる活動も軌道に乗せ、バスター・ウィリアムスやレイ・ドラモンド等のベーシスト、ベン・ライリーやヴィクター・ルイス等のドラマーが去来してきました。北川潔(ベース)、ジョナサン・ブレイク(ドラムス。"Pentad"という超強力バンドを率いてもいます)との現トリオは歴代ラインナップ中、疑いなしに最長を誇るもので、私の記憶では2007年頃から続いているのではないかと思います。この3人ならではの阿吽の呼吸によって、数々のオリジナル・ナンバーや定評ある楽曲の数々が、目の前で次々と繰り広げられてゆくのは、まさに圧巻です。

数えきれないほどのレパートリーを有するバロンですが、彼はまた、セロニアス・モンクが遺した作品を解釈するエキスパートでもあります。初日ファースト・セットのオープニングでは、「Shuffle Boil」を聴かせてくれました。'50年代に活躍したサックス奏者ジジ・グライスのアルバムで初演された(モンクはサイドマンとして参加)隠れ名曲ですが、バロン・トリオはここに独自の装いを施します。テーマ・メロディの、いわゆるAABA形式のAの部分ではブレイクがアディショナル・スネアを活用しながらヒップホップのブレイクビーツのようなサウンドを生み出してサウンドに刺激を加え、Bの部分ではトリオ一体の4ビートでドライヴします。このセットではバロン作の「Calypso」、ブラジルのカリスマ的シンガーソングライターであるカエターノ・ヴェローゾが書き、ガル・コスタも歌った「Aquele Frevo Axé」等も演奏され、サンバやラテン・リズムの要素もたっぷり。バロンの先輩格であるアーマッド・ジャマルやウィントン・ケリーもレコーディングを残しているスタンダード・ナンバー「The Surrey With the Fringe on Top」は火の出るような熱演で、バロンのフレーズは尽きない泉のよう。そこにブレイクの軽やかな音色による煽りが加わり、北川はサポートのほか、無伴奏のソロ部分でも輝きを放ちました。単音と重音を織り交ぜたパートから、しだいにウォーキング・ベース奏法に移行し、やがてバロンのピアノが入ってデュオ状態になり、ブレイクのシンバル・レガートをきっかけに再び3人でスウィングし始める瞬間の、なんと鮮烈だったことでしょう。

伝統的なジャズ・ファンはもちろん、最近ジャズを好きになったファンをも満足させるに違いないケニー・バロン・トリオの公演。最高のテンションとドライヴを維持しながら、本日と明日の東京公演、金曜の高崎公演と快演が続くこと間違いなし!
(原田 2023 9.5)

Photo by Takuo Sato

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【LIVE INFORMATION】

KENNY BARRON TRIO
"80th Birthday Celebration"
2023 9.4 mon., 9.5 tue., 9.6 wed. ブルーノート東京
詳細はこちら
2023 9.8 fri. 高崎芸術劇場 スタジオシアター
詳細はこちら

SET LIST

2023 9.4 Mon.
1st
1. SHUFFLE BOIL
2. FOR HEAVEN’S SAKE
3. MAGIC DANCE
4. THE SURREY WITH A FRINGE ON THE TOP
5. THE VERY THOUGHT OF YOU
6. AQUELE FREVO AXÉ
7. CALYPSO
 
2nd
1. HOW DEEP IS THE OCEAN
2. TEO
3. ISFAHAN
4. WELL, YOU NEEDN’T
5. EMBRACEABLE YOU
6. COOK’S BAY
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