原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

約4年ぶりにブルーノート東京へ帰ってきて、6月23日には"ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ"公演のスペシャル・ゲストとして熱演したラリー・カールトン。昨日からついに、自身のバンドによる公演"Thru the decades"が始まりました。

場内はもちろん超満員、今か今かとギター・ヒーローの登場を待つ活気にあふれています。しかも今回は、半世紀以上に及ぶカールトンの華麗なキャリアを、その時代の代表曲と共に楽しもうという、なんともぜいたくなプログラムです。盛大な声援と拍手を受けてバンドスタンドにあがったカールトンがプレイした1曲目は、1987年作品『Discovery』からの「Minute by Minute」（ドゥービー・ブラザーズのカヴァー）、続いて'86年作品『Alone / But Never Alone』からの「Smiles and Smiles to Go」。アルバムではどちらもアコースティック・ギターで演奏されていましたが、この日はエレクトリック・ギターによるアプローチを聴かせてくれました。ドラムの名手ビリー・キルソンの巧みなバッキングを得て、カールトンは、ふくよかで伸びのあるギター・トーンを存分に響かせます。

カールトンは70年代初頭からザ・クルセイダーズのサポート・メンバーになり、'74年頃から'76年まで正式メンバーとして活動しました。彼が関わっていた頃のクルセイダーズはトロンボーン奏者のウェイン・ヘンダーソンとサックス奏者のウィルトン・フェルダーのコンビネーションが大きな"売り"でしたが、この日は、今は亡きふたりにかわり、トロンボーン奏者のバリー・グリーンとサックス奏者のマーク・ドウシットが大活躍しました。「Spiral」、「Put It Where You Want It」（1月に登場したスティーヴ・ガッド・バンドの演奏でもおなじみかと思います）など、約50年も前の楽曲が、今まさに目の前で料理され、新鮮な装いで差し出されるのは快感のひとことに尽きます。カールトンは鮮やかなアドリブ・パートはもちろん、コード・カッティング、オブリガート、メロディ提示など、あらゆるところにギターの美点を光らせながら演奏を続けました。

スティーリー・ダンが'76年に発表した「Kid Charlemagne」（この曲におけるカールトンの間奏も伝説的と言っていいでしょう）も見事、"2023年ヴァージョン"として生まれ変わり、あっという間にオーラスの「Room 335」へ。カールトンとグラミー賞受賞アルバム『TAKE YOUR PICK』を共作した松本孝弘が書いた「#1090 〜Thousand Dreams〜」を導入部におき、そこからあの、聴きなれた3音のフレーズへとつなげていきます。「Room 335」はいうまでもなくカールトンの大定番ですが、リッチなホーン・セクションを加えたアレンジで、この曲を味わうのはまた格別です。

公演は本日、26日、29日、30日と続きます。今年75歳を迎えたスーパー・ギタリストの軌跡を、ぜひライヴでお楽しみください！

(原田 2023 6.25)

Photo by Takuo Sato

⚫︎来日公演は6月30日(木)まで
LARRY CARLTON "Thru the decades"
2023 6.24 sat., 6.25 sun., 6.26 mon., 6.29 thu., 6.30 fri.
BLUE NOTE TOKYO

2023 6.28 wed.
群馬 高崎芸術劇場 スタジオシアター