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ANTONIO SANCHEZ "BAD HOMBRE"

artist ANTONIO SANCHEZ

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

「ブルーノート東京」への登場は、パット・メセニーのプロジェクト以来、ちょうど7年ぶり。4度のグラミー賞に輝くドラマー、アントニオ・サンチェスが自身のグループ"バッド・オンブレ"を率いて公演中です。メセニーに限らずマイケル・ブレッカー、ゲイリー・バートン、チック・コリアら数多くのレジェンドたちのバンドでも活動した経験を持ち、自己名義のアルバムも、猛烈にドライヴする伝統的なアコースティック・ジャズ作品から時代を開拓するようなものまで実に多彩。まさに隙なし、才能と敏捷性のかたまりのようなアントニオが、2021年から続くタナ・アレクサ、BIGYUKI、レックス・サドラーとの"バッド・オンブレ"で、「これがピープル・ミュージックの現在地だ」と呼びたくなるほど生き生きとした、暖かく、しかも猛烈にスタイリッシュな音世界を繰り広げているのです。

レパートリーはすべて、話題の最新作『SHIFT (Bad Hombre, Vol.Ⅱ)』から選ばれています。この、トレント・レズナーとアッティカス・ロス(ナイン・インチ・ネイルズ)、デイヴ・マシューズ、ミシェル・ンデゲオチェロ、ベッカ・スティーブンス、ロドリゴ・イ・ガブリエラ、先ごろ亡くなった伝説的俳優でアントニオの祖父であるイグナシオ・ロペス・タルソら、アントニオが心より愛するストーリーテラーを迎えたコラボレーション・アルバムからの楽曲が"バッド・オンブレ"色にリアレンジされた上、オーディエンスの前に差し出され、発展していくさまには「これこそライヴの醍醐味!」と興奮せずにはいられないスリルがあります。アルバムのキラー・チューンであろう「Doyenne」はもちろん、「Bucket」、「Mi Palabra」などが次々と飛び出すセットリストは、どう控えめに言っても最上にして最高。キック(バスドラ)に3つのペダルをおき、さらに小型のシンバルをいくつも設置した独特のドラム・セットで極めてメロディアスなプレイを行なうアントニオ、4弦ベースとmoogベースを使い分けながら大地の鼓動のような低音を出すレックス、エレクトリックとアコースティック双方から多彩なヴォイスを引き出すBIGYUKI(「Suspended Animation」におけるアントニオとのデュオ・パートは、剣豪のやりとりを想像させるものでした)、そして、アルバムでは多様なヴォーカリストによって歌われていたナンバーを見事にコンバートして、エフェクトを効果的に用いつつ幅広い音域と深みのある歌声で届けてくれたタナと、誰もが極上のパフォーマンスで魅せます。とくに、ソロ活動(2度のグラミー賞ノミネート)やアントニオとのおしどりコンビに加え、ギター奏者ジーン・エス(ジーン下里)との共演、3人組ユニット"SONICA"など、華麗な活動を続けるタナに寄せる注目は今後、日本でもいっそう高まるに違いありません。

誰もが何人分もの活躍をして、"バッド・オンブレ流の多感音楽"といいたくなる世界へと案内してくれる今回のステージ。背後のスクリーンにうつし出される映像、会場中に充満する骨太の音響も特筆すべきでしょう。公演は本日まで「ブルーノート東京」、明日は「コットンクラブ」で開催されます。くれぐれも、お見逃しなく!
(原田 2023 6.7)

Photo by Makoto Ebi


★来日公演は6月8日(木)まで!
ANTONIO SANCHEZ "BAD HOMBRE"
2023 6.6 tue., 6.7 wed. ブルーノート東京
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2023 6.8 thu. コットンクラブ
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SET LIST

2023 6.6 TUE.
1st&2nd
1. The Bucket
2. Mi Palabra
3. I Think We’re Past That Now
4. Risa de Mujer
5. Waiting
6. Suspended Animation
7. Doyenne
EC. Eh Hee 2.0

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