原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

去る2月28日に50周年ツアーの日本公演初日を「すみだトリフォニーホール」で開催したマンハッタン・トランスファーが、昨日から会場を「ブルーノート東京」に移し、さらなる絶好調ぶりで超満員のオーディエンスを魅了しています。

この名門グループが「ブルーノート東京」のステージに立つのは、なんと11年ぶり。そのあいだ、創設者のティム・ハウザーが他界し、トリスト・カーレスが新たに迎えられるというメンバー・チェンジもありましたが、圧巻のハーモニーと抜群のエンタテインメント性は変わることなく健在。しかも今回は"マントラ・サウンドの要"というべきピアニスト/音楽監督のヤロン・ガーショフスキー率いる4人組のバック・バンドに加え、日本屈指の管楽器奏者たちがそれぞれトランペット・セクション、トロンボーン・セクション、サックス・セクションを組んで参加。混声コーラスの厚みとホーン陣の厚みが何乗にもなりながら、最高にエキサイティングなひとときを届けてくれるのです。マントラは最新作『フィフティ』でオーケストラとの共演を繰り広げていましたが、あの、いささかクラシカルともいえる音作りに、ジャズ・ビッグ・バンドの躍動感をたっぷり加えたのが、今回の「ブルーノート東京」公演の内容であるといっていいでしょう。

歌う前、万雷の拍手に迎えられた時からすでにアラン・ポール、ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーン、トリスト・カーレスの中では"スウィングすること"が始まっていたかのようです。一糸乱れぬハモリ、掛け合い、巧みなソロ・パート、つい真似したくなるユーモラスな振り付け。グレン・ミラー楽団で有名な「Tuxedo Junction」や「I Know Why」、若きエラ・フィッツジェラルドがチック・ウェッブ楽団で歌った「Tisket A Tasket」等で、ビッグ・バンド・スウィング黄金時代の空気を、今を生きながらにして追体験させてくれるかと思えば、「Cantaloop」では"ヒップホップとマントラ・サウンドの融合"で喜ばせ、庵原良司の豪快なサックス・ソロもフィーチャーされた「Trickle,Trickle」ではロックンロール～ドゥーワップの香り高い音作りで客席から大きな手拍子を引き出しました。大定番の「Birdland」も、今回はホーン・セクションが加わったことによっていっそうパワフルかつ豪華にプレイされました（「Buzzy」や「Au Privave」等、チャーリー・パーカーゆかりのメロディをリフに用いていたのも印象的でした）。メンバーも、共演者も、観客も、誰もが、こぼれんばかりの笑顔。音楽の力、ハーモニーの力を改めて教えられました。公演は3月3日まで行なわれます。
(原田 2023 3.2)

Photo by Takuo Sato

★来日公演は3月3日(金)まで！
THE MANHATTAN TRANSFER
50th Anniversary & Final World Tour with Big Band
2023 3.1 wed., 3.2 thu., 3.3 fri.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm　[2nd]Open7:45pm Start8:30pm