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HIROMI UEHARA "SAVE LIVE MUSIC FINAL"

artist 上原ひろみ , 熊谷和徳

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


コロナ禍で苦境にあるライヴ業界の救済を願って始まった上原ひろみのライヴ・シリーズ"SAVE LIVE MUSIC"は2020年8月から4度にわたってブルーノート東京で行なわれ、結果的に100ステージを超えるロングラン公演へと成長しました。そして、去る12月には、このプロジェクトで繰り広げた音世界を全国のファンに届けるべく、ツアー"SAVE LIVE MUSIC FINAL"を開催し、満場を熱狂させました。ここでは、東京で行なわれた4日間7公演を取りあげます。

12月17日の東京国際フォーラム ホールA公演は、矢野顕子とのデュオで幕を開けました。2台のピアノが向かい合って配置されているのですが、遠目に見ると大きな黒い生き物を相手にふたりが遊びを楽しんでいるようにも見えてきます。矢野の自由奔放な歌声に"ここしかない"というタイミングで入り込む上原のフレーズの鮮烈さ、いわゆるポップス系のプロジェクトではなかなか味わう機会がないであろう矢野のアドリブ・プレイは、このデュオならではの魅力といえましょう。2017年リリースの『ラーメンな女たち 〜LIVE IN TOKYO〜』に入っている「ラーメンたべたい」、童謡の「雪」とイングランド民謡「グリーンスリーブス」をミックスした「こんこんスリーブス」等でのユーモア、ふたりのピアノの音色が重なり合って疾走する「飛ばしていくよ」等をガッチリ聴かせてくれました。

第2部は"SAVE LIVE MUSIC"から生まれたプロジェクト、"上原ひろみザ・ピアノクインテット"の演奏です。主体となるのはもちろん「シルヴァー・ライニング・スイート」ですが、ホールの広さを生かしたメンバーのレイアウト、スケールの大きなライティングを通じて体験する同曲は一層ドラマティックに心に響きます。アンコールの「ムーンライト・サンシャイン」では矢野顕子も登場、上原が絶大な信頼を寄せるファースト・ヴァイオリンの西江辰郎も快心の即興を聴かせました。

12月20日から22日にかけては場所を"SAVE LIVE MUSIC発祥の地"ブルーノート東京に移して、日替わりのプログラムが行なわれました。20日は"上原ひろみザ・ピアノクインテット"によるステージです。当然ながらホール公演よりもメンバー間の距離もぐっと近くなって、各メンバーが互いの音にいかに注意深く耳を傾けているかも、手に取るように伝わってきます。濃密な「シルヴァー・ライニング・スイート」から息もつかせぬ瞬間が続き、「リベラ・デル・ドゥエロ」では上原とチェロの向井航を除くメンバー(ヴァイオリンの西江辰郎、ビルマン聡平、ヴィオラの中恵菜)が、客席通路に入り込んで演奏。弦楽四重奏のメンバーはいずれもクラシック界の精鋭ですが、上原との共演を通じて、すっかり即興の妙味にとりつかれてしまったようです。演者とオーディエンス、それぞれの開放感が一体になった一夜という印象を受けました。

21日はソロ公演です。思えば第一回目の"SAVE LIVE MUSIC"はソロによる16日32ステージという型破りなものでした。その意味では、原点回帰にあたる一夜だったといってもいいでしょう。世界で親しまれる古典的なポジティヴ・ソング「上を向いて歩こう」を巧みにリハーモナイズして演奏し、喜劇王チャップリンに捧げた自作「ミスター・C.C.」で大きな拍手を呼び起こします。ストライド奏法、内部奏法、プリペアド奏法、ブロック・コード、クラスター等を織り交ぜてピアノを鳴らしきり、オーディエンスを徹底的に楽しませて、最後の最後に、非常に人気の高いオリジナル曲「グリーン・ティー・ファーム」を奏でて深々とした余韻を残しました。

22日はタップダンサーの熊谷和徳とのデュオです。16年間の交流を誇る両者のステージは、タップがいかにメロディアスであるか、そしてピアノがいかにパーカッシヴであるかもしっかりと示します。クリスマス・シーズンということで「クリスマス・ソング」、「ジングル・ベル」等のメロディを挟みながらの、白熱の語らい。学生の頃、音楽の授業で聴いたことがあるスメタナの「モルダウ」にこんなにスリリングで、発展しまくる解釈が可能だということを、筆者は初めてここで知りました。スタンディング・オベーションと盛大な拍手のなか、ブルーノート東京における"SAVE LIVE MUSIC"は大団円を迎え、同プロジェクトは、12月23日にアクトシティ浜松 大ホールで行なわれた公演(上原ひろみSOLO / 上原ひろみザ・ピアノクインテット)で完結しました。来日ミュージシャンも再び増えて、ライヴ・シーンも盛んになりつつある昨今ですが、今後いろんなことが元通りになって以降も、"SAVE LIVE MUSIC"は後々までの語り草となることでしょう。
(原田 2022 12.25)

Photo Gallery 1~10:Photo by Takuo Sato
Photo Gallery 11~20:Photo by Yuka Yamaji
Main Photo & Photo Gallery 21〜30:Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2022 12.20 TUE.
1st&2nd
1. Silver Lining Suite: Isolation
2. Silver Lining Suite: The Unknown
3. Silver Lining Suite: Drifters
4. Silver Lining Suite: Fortitude
5. Jumpstart
6. Move
EC1. Moonlight Sunshine
EC2. Ribera Del Duero
 
2022 12.21 WED.
1st&2nd
1. 上を向いて歩こう
2. Haze
3. Spectrum
4. Mr. C.C.
5. Blackbird
6. Dancando No Paraiso
EC. Green Tea Farm
 
2022 12.22 THU.
1st&2nd
1. Wanderer
2. Love And Laughter
3. The Christmas Song (Kaz Solo)
4. Wake Up And Dream (Hiromi Solo)
5. Moldau
EC1. Place to Be
EC2. Ribera Del Duero *2ndのみ
 

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