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BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guests BOB JAMES & KIRK WHALUM

artist BLUE NOTE TOKYO ALL JAZZ ORCHESTRA , BOB JAMES , KIRK WHALUM

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

2013年結成、この2020年で満7周年を迎えるブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラdirected by エリック・ミヤシロが、今年初のステージを繰り広げています。スペシャル・ゲストは、2019~20年、ブルーノート東京のカウントダウン/ニューイヤー・シーズンを飾ったボブ・ジェームスとカーク・ウェイラムの名コンビ。息の合った快演に、たっぷり浸ることができます。

小池修(テナー・サックス)、エリック(トランペット)、本田雅人(アルト・サックス)のプレイをフィーチャーしたオーケストラのテーマ・ソング「Trains」から、この凄腕集団ならではの華やかなサウンドが炸裂します。ボブとカークが合流しての1曲目は、「One Mint Julep」。'50年代にクローヴァーズ、'60年代にレイ・チャールズの演唱で流行したR&Bナンバーです。ボブは'76年にリリースされた『Bob James Three』の中でカヴァーし、ディスコ調のリズム、きらびやかなホーン・セクションを取り入れたアレンジでこの曲の新たな魅力を引き出しました。今回はそのアレンジを軸に、「中学の頃にボブの音楽を初めて聴き、それからずっと魅了されている。中学、高校とボブの譜面をコピーして演奏したこともある。ボブは、自分がアレンジに関心を持つきっかけを与えてくれたひとり」と語るエリックが再編曲、"「One Mint Julep」2020"と呼びたくなる解釈をオーディエンスに届けてくれました。'76年ヴァージョンではボブがフェンダー・ローズを演奏し、故グローヴァー・ワシントンJr.のテナー・サックスもフィーチャーされていたのですが、今回のボブはアコースティック・ピアノを弾き(この曲に限らず、ステージ全曲で)、もちろんテナー・サックスのパートではカークの雄大な吹奏を満喫することができました。ちなみにこの曲、ボブはレコーディングで演奏したきりで、観客の前でプレイするのはこの日が恐らく初めてとのこと。「録音から40数年経って、ついにライヴでワールド・プレミアだよ」とのことでした。続いては「Feel Like Making Love」。ロバータ・フラックやマリーナ・ショウがこの曲を歌ったのとほぼ同じころ、ボブは'74年リリースの『Bob James One』でフェンダー・ローズを用いたアプローチを聴かせましたが、この日はアコースティック・ピアノでしっとりとしたプレイを繰り広げました。

中盤ではカークの楽曲がフィーチャーされます。まずは最新作『Humanite』からの「Kwetu」。テーマ・メロディを奏でるミュート・トランペット+フルート+ピアノの音色のブレンド具合も絶妙でしたが、後半に登場するカークのソロも圧巻でした。マウスピースを咥えながら歌声を楽器のベルから出し(エディ・ハリスのように)、やがてその"歌"とサックスが交互に登場します。まさに一人二役というべきか、まるでヴォーカリストとサックス奏者が掛け合いを演じているかのように響きました。"今こそ世界に祈りが必要なのだ"というカークの言葉を受けて始まった抒情的な「Thy Kingdom Come」では、梶原順のアコースティック・ギターや青柳誠のキーボードにもスポットが当たりました。

続く「Maputo」はボブとデヴィッド・サンボーンが組んだ'86年の大ヒット作『Double Vision』からのナンバー。ボブもサンボーンも、作曲者のマーカス・ミラーもライヴのレパートリーに加えているので、必然的に「ブルーノート東京」で聴く機会も増えるのですが、オーケストラ・ヴァージョンはやはりレアといえましょう。カークが抜け、本田雅人のアルト・サックスに大きく活躍の場が与えられました。"なぜかヒップホップの世界ですごい人気なんだ。おかげで若いファンがすごく増えたよ"というボブのMCに続いては『One』収録曲の「Nautilus」。さらに『Three』に入っていた大定番の「Westchester Lady」を、全員のソロをフィーチャーしつつ楽しませてくれました。鳴りやまない拍手に応えて演奏されたのは、可憐な「Angela」。途中、ボブとカーク(フルート)のデュオによる「Amazing Grace」をはさみながらの(この曲を演奏せずにはいられない気持ちだったのだと思います)、ピースフルなパフォーマンスでした。公演は本日も開催!

(原田 2020 1.8)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2020 1.7 TUE.
1st & 2nd
1. TRAINS
2. ONE MINT JULEP
3. FEEL LIKE MAKIN’ LOVE
4. KWETU
5. THY KINGDOM COME
6. MAPUTO
7. NAUTILUS
8. WESTCHESTER LADY
EC. ANGELA

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