2019 12.19 thu., 12.20 fri., 12.21 sat.
TILL BRÖNNER "Better Than Christmas" Tour
artist FRANK McCOMB , TILL BRÖNNER
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
スイスに本拠地を置くインタクト(Intakt)は、ぼくの最も注目するレーベルのひとつです。昨年、ここから実に興味深いアルバムが発売されました。タイトルは『Baby's Party』、75歳を迎えたドイツのフリー・インプロヴィゼーション系打楽器奏者ギュンター・ソマーのデュオ・アルバムです。セシル・テイラー、ペーター・ブロッツマン、ワダダ・レオ・スミス、ミシェル・ゴダール等と共演を重ねてきたギュンターが、今回パートナーに選んだのはなんと、ティル・ブレナー。実に楽しそうに生き生きと、フリーでアヴァンギャルドで時にノイジーなプレイを繰り広げるティルに、個人的には相当なインパクトを受けました。
さて今回の来日公演ですが、これまで以上に思いっきりハッピーでエンタテイニングな内容であるといっていいでしょう。副題に"ベター・ザン・クリスマス・ツアー"とつけられているだけあって、クリスマス感や年末感もたっぷり。とびきりメロディアスな楽曲の数々が、ロマンティック&ポップに綴られていきます。オープニングはまず、無伴奏のトランペット・ソロで軽快に「サンタが街にやってくる」。相変わらずの明瞭なトーン、音程の良さに聴き惚れていると、いつしか曲は「Nature Boy」へ移行しています。'40年代にナット・キング・コールが最初にヒットさせたナンバーですが、ティルたちは'70年代にジョージ・ベンソンが流行らせたヴァージョンに通じる、ファンキーな要素を取り入れたアレンジで届けてくれました。リード・ヴォーカルは、プリンスにも才能を評価された米国出身のフランク・マッコムが担当。この曲ではフランクと、オラフ・プーツシーン、ヤン・ミゼーレ、普段はベースを弾くクリスチャン・フォン・カプヘンクストがそれぞれキーボードを担当したのですが(つまり4台の鍵盤が鳴り響いていた)、それらの音が決してぶつかりあったり濁ったりすることなく、有機的かつメロウに(ここがティルの音作りにおいては大切です)機能するあたり、編曲の卓抜さも讃えられるべきでしょう。
「蛍の光」でのティルは、フリューゲルホーンに持ち替えて、メロディを朗々と披露。年季の入った音楽ファンなら、イタリアの伝説的トランペット奏者であるニニ・ロッソを思い出したかもしれません。ティルは太く甘い音はもちろん、驚くほどクリアーな高音も混ぜながら、この楽器からさまざまな魅力を引き出していきます。以降も、フランクがストライド・ピアノ風アプローチを織り交ぜながら弾き語った「Winter Wonderland」、"ぼくらの解釈は「サイレント・ナイト・イン・リオ・デ・ジャネイロ」だね"という紹介の通りサンバにアレンジされた「きよしこの夜」、フランクとティルのツイン・ヴォーカルによるジョージ・マイケルのカヴァー「Last Christmas」などなど、名曲のてんこ盛り。オーラスはティルが書きおろしたクリスマス・ソングを、オラフのアコースティック・ピアノとのデュオで聴かせてくれました。
ティルは2007年に『ザ・クリスマス・アルバム』を発表していますが、彼の"ジャズ・クリスマス"はさらに発展し、品揃えを増やしています。公演は21日まで開催されます。
(原田 2019 12.20)
Photo by Yuka Yamaji
2019 12.19 THU.
| 1st | |
|---|---|
| 1. | NATURE BOY |
| 2. | AULD LANG SYNE |
| 3. | WINTER WONDERLAND |
| 4. | WHAT ARE YOU DOING NEW YEAR’S EVE |
| 5. | SILENT NIGHT SAMBA |
| 6. | LET IT SNOW, LET IT SNOW, LET IT SNOW |
| 7. | BETTER THAN CHRISTMAS |
| 8. | ANOTHER DAY |
| 9. | LAST CHRISTMAS |
| 2nd | |
| 1. | NATURE BOY |
| 2. | AULD LANG SYNE |
| 3. | WINTER WONDERLAND |
| 4. | WHAT ARE YOU DOING NEW YEAR’S EVE |
| 5. | SILENT NIGHT SAMBA |
| 6. | LET IT SNOW, LET IT SNOW, LET IT SNOW |
| 7. | BETTER THAN CHRISTMAS |
| 8. | ANOTHER DAY |
| 9. | LAST CHRISTMAS |
| EC. | CHRISTMAS IS NEVER |







