2019 6.5 wed., 6.6 thu., 6.7 fri.
SIMON PHILLIPS "Protocol" -30th Anniversary Tour-
artist SIMON PHILLIPS
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
TOTOや上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトに在籍し、ジェフ・ベック、ミック・ジャガー、マイク・スターンらと共演。2018年に「ブルーノート東京」で行なわれたニュー・イヤー公演も記憶に新しいカリスマ・ドラマーのサイモン・フィリップスが、最新ラインナップによるユニットで来日中です。すべてのパートを自身で担当したファースト・ソロ・アルバム『プロトコル』の30周年を記念したアニヴァーサリー・ツアーの一環ですが、ライヴではスリリングでワイルドなバンド・サウンドが炸裂。あっという間に時間が過ぎていきます。
グレッグ・ハウの後任として参加したのは、今回が初来日となるアレックス・シル(26歳)。リー・リトナー主催のコンペティション"シックス・ストリングス・セオリー"のギター部門で優勝、5月に初アルバム『Experiences: Real and Imaginary』を出したばかりです。幅広いスタイルで演奏できるギタリストですが、この日はヘッドレスのソリッド・ギターを手に、すさまじい音数で空間を埋め尽くします。指の動きは、あまりの速さと無駄のなさのせいでしょうか、まるで止まっているかのように見えるときもあるのですが、その間も楽器からは奔流のように音が放出されています。"顔で弾く"タイプのギタリストとは対照的に実にクールな表情で、体も殆ど動かすことなく、ただひたすら信じがたいほどの速さで弾きまくるシルは、疑いなく現グループの見どころ・聴きどころでしょう。個人的にはフランク・ギャンバレのスウィープ・ピッキングの2020年版という印象も受けました。
そして今回、楽器編成にサックスが新たに加わりました。サイモンが抜擢したジェイコブ・セスニーは、アレックスと同じ26歳。これまでクリスチャン・スコット、セス・マクファーレン、ケイシー・エイブラムスらと共演、影響を受けたものとしてチャーリー・パーカー、ティグラン・ハマシアン、エリック・マリエンサル、アニメ「トムとジェリー」(の音楽)等をあげるという、まさにボーダーレスそのものの奏者です。その実力はケンドリック・ラマ―やエド・シーラン関連曲を"吹いてみた"YouTube画像でも明らかですが、このバンドでの彼もまさに適材適所。テナー、アルト、ソプラノを持ち替えながら、演奏するのが楽しくてたまらないという感じで痛快なブロウを聴かせてくれました。
彼ら新メンバーに対し、リズム・セクションはキーボードのオトマロ・ルイス、ベースのアーネスト・ティブズ、そしてドラムスのサイモンと、百戦錬磨のベテランで構成されています。サイモンの巨大なセットは例によって向かって左端に位置し、敬愛するトニー・ウィリアムスばりの明快なチューニングと出音でドラムスの醍醐味を味わわせてくれます。とくに向かって左端に位置する"ゴングバス"の迫力は鳥肌ものでした。下の皮(ヘッド)がなく、中に大き目のマイクを突っ込んで、上の皮(ヘッド)に対する打撃を拾うのですが、風圧体験できるのはまさしくライヴの醍醐味といえましょう。
選曲はこれまでの『プロトコル』シリーズ(計4作出ています)、トニーに捧げた『アナザー・ライフタイム』等のアルバムから構成。ファースト・セットとセカンド・セットの演目が異なるので、ぜひ通しでメンバーの超絶技を堪能していただけたらと思います。ブルーノート東京への出演は7日まで。9日にはモーション・ブルー・ヨコハマに登場します。
(原田 2019 6.5)
Photo by Great The Kabukicho
●サイモン・フィリップス "プロトコル"
-30th Anniversary Tour-
6.5 wed., 6.6 thu., 6.7 fri. ブルーノート東京
6.9 sun. モーション・ブルー・ヨコハマ
6.11 tue. 名古屋ブルーノート
2019 6.5 WED.
1st | |
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1. | CELTIC RUN |
2. | SOLITAIRE |
3. | CIRCLE SEVEN |
4. | YOU CAN'T BUT YOU CAN |
5. | FIRST ORBIT |
6. | KUMI NA MOJA |
EC. | AZORES |
2nd | |
1. | NARMADA |
2. | ALL THINGS CONSIDERED |
3. | AZORES |
4. | MOMENTS OF FORTUNE |
5. | PENTANGLE |
EC. | CELTIC RUN |