原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

今年もこの日がやってきました。4月30日は、ユネスコ制定の"インターナショナル・ジャズ・デイ"です。世界中で祝賀イベントが開催されましたが、ブルーノート東京にはもちろん、日本が誇る凄腕集団"ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ"が登場。アンドレア・モティス（スペイン）、アルフレッド・ロドリゲス（キューバ）を招き、白熱のセッションを繰り広げました。アンドレアとアルフレッドは数年前、スペインで共演して以来の再会です。

オーケストラにとっての"序曲"というべき「Trains」から超満員のオーディエンスを一気に引き込み、スティーヴィー・ワンダーがデューク・エリントンに捧げた「Sir Duke」へ。"エリントンは生きていたら4月29日に120歳を迎えていたんだなあ"と思いながら、緩急に富んだアンサンブルに酔いしれました。最初のゲストは現在23歳のトランぺッター/ヴォーカリスト、アンドレア・モティス。先日ブルーノート東京で行なわれた単独公演では、ブラジル音楽を中心にした最新作『もうひとつの青（アズール）』からのナンバーが印象に残りましたが、この日は伝統的なジャズ・フォーマットの中でスウィングする一面をたっぷり味わわせてくれました。1曲目の「You're Not The Kind」が、歌手サラ・ヴォーンとトランペット奏者クリフォード・ブラウンの共演盤にも入っている通好みのナンバー。アンドレアは歌とトランペットで、いわばサラとクリフォード両方のパートをこなします。かと思えば、「My Favorite Things」ではカーヴド・ソプラノ・サックスに持ち替えての"吹き語り"を披露。イン・コードの部分とモーダルな部分を巧みにクロスさせたエリックの編曲もアイデア賞ものです。「Lover Come Back To Me」では、アンドレアのトランペットと鈴木圭のバリトン・サックスが軽やかなチェイス（ソロ交換）も聴くことができました。

ベーシストの納浩一が刻む「Killer Joe」のイントロに乗せて、次は、現在33歳のピアニスト、アルフレッド・ロドリゲスが登場します。クインシー・ジョーンズに見出され、2月には最新作『Duologue』をリリースしたばかりです。このオーケストラとの共演は昨年に続いて2度目。「再び、この素晴らしいオーケストラと共演することができて嬉しい」と、大いにリキの入ったプレイで場内を沸かせました。『Duologue』からは、マイケル・ジャクソン（クインシーは彼のプロデューサーでした）の「Thriller」も披露。「"キューバン・ウェイ"で演奏するよ」というアルフレッドの言葉通り、稀代のヒット・ポップ・チューンが、極上のラテン・ジャズとして生まれ変わりました。アンコールはアンドレアとアルフレッドのデュオ「Besame Mucho」、さらにオーケストラとの共演でマリオ・バウサ（ラテン・ジャズの草分けのひとり）作「Tanga」。まさにあっという間の90分、ストリーミング配信をご覧になっていた方も時間を忘れて楽しまれたことでしょう。

アルフレッドは本日からブルーノート東京で単独公演を開催。こちらもお見逃しなく！
(原田 2019 5.1)

Photo by Yuka Yamaji

●ALFREDO RODRIGUEZ TRIO
presented by QUINCY JONES PRODUCTIONS
2019 5.1 wed., 5.2 thu.　ブルーノート東京