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STACEY KENT

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ノーベル文学賞に輝く作家、カズオ・イシグロの作詞曲を含む最新作『アイ・ノウ・アイ・ドリーム』が、ジャズ・ジャパン・アワードの"アルバム・オブ・ザ・イヤー/ヴォーカル部門"を獲得。ピークを更新し続ける歌姫、ステイシー・ケントのステージが昨日から始まりました。

共演メンバーはピアノとフェンダー・ローズのグレアム・ハーヴィー、アコースティック・ベースのジェレミー・ブラウン、ドラムスのジョシュ・モリソン、サックスとフルートの夫君ジム・トムリンソンという不動のメンバー。まずステージに登場したのは、この4人です。メロディアスなイントロを奏でて観客から大きな拍手を引き出した後、いよいよ主役のステイシーがあらわれて、ニュー・アルバムの1曲目に入っていた「Make It Up」を歌い始めます。よく通るヴォーカルに、鳥がさえずるようなフルートが絡み、実にゴージャスな響きが生まれました。

続いてはアントニオ・カルロス・ジョビンの「Dindi」を英語で歌唱。ステイシーのボサ・ノヴァ解釈は常に透明感にあふれ、品格を感じさせます。そしてこの9月14日に満75歳の誕生日を迎えたマルコス・ヴァーリの楽曲からは「So Nice(Summer Samba)」や「The Face I Love」をピックアップ。2014年発表の共演アルバム『マルコス・ヴァーリ&ステイシー・ケント・ライヴ~マルコス・ヴァーリ・デビュー50周年記念』を彷彿とさせる、ハートウォーミングなひと時を味わうことができました。

中盤に入るとお待ちかね、カズオ・イシグロ作詞ナンバーも登場(作曲はジム・トムリンソン)。ステイシーとジムは2002年以来、イシグロと深い交流を続けています。アルバム『ザ・チェンジング・ライツ』に入っているユーモラスな「Waiter, Oh Waiter」、新幹線の中で生まれた恋を描いた最新作収録ナンバー「Bullet Train」を、歌詞の一語一句をかみしめるように披露し、最新作からはさらにタイトル曲のバラード「I Know I Dream」(作詞はクリス・ゴールドマッハ―)、フランス語の「Les Amours Perdues」も届けてくれました。ラストはバーデン・パウエルが作曲してピエール・バルーが創唱した「Samba Saravah(男と女のサンバ)」、エドゥ・ロボの楽曲でエリス・レジーナも名唱を残した「Upa Neguinho」を立て続けに。鳴りやまない拍手と声援の中、5人は笑顔いっぱいのままステージを去っていきました。

初日のファースト・セットはボサ・ノヴァ関連の楽曲を中心に楽しませてくれましたが、なにしろ幅広いレパートリーを持つステイシーのことです。どのセットに足を運んでも工夫をこらしたラインナップで満足感を与えてくれることでしょう。公演は16日まで続きます。
(原田 2018 9.15)

Photo by Takuo Sato

SET LIST

2018 9.14 FRI.
1st
1. MAKE IT UP
2. DINDI
3. LA RUA MADUREIRA
4. SO NICE
5. THE FACE I LOVE
6. IF YOU GO AWAY / NE ME QUITTE PAS
7. WAITER, OH WAITER
8. THINKING ABOUT THE RAIN
9. THE BULLET TRAIN
10. ÁGUAS DE MARÇO
11. I KNOW I DREAM
12. SAMBA SARAVAH
EC. UPA, NEGUINHO
 
2nd
1. MAKE IT UP
2. PHOTOGRAPH
3. LES AMOURS PERDUES
4. THE FACE I LOVE
5. IF YOU GO AWAY / NE ME QUITTE PAS
6. WAITER, OH WAITER
7. THINKING ABOUT THE RAIN
8. UPA, NEGUINHO
9. THE BULLET TRAIN
10. TO SAY GOODBYE
11. SHADOW WALTZ
EC. STARDUST

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