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MARCUS MILLER

artist MARCUS MILLER

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まさに、ブルーノート東京の<特別銘柄>。その喜びに満ちたライヴに祝福あれ!

ゴールデン・ウィーク明けに来日し、まずはブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラと共演。その後、自己バンドとともに2泊3日のジャズ・クルーズにメインの出演者として乗船したり、山形や静岡などでの公演を行なったり。そんな彼の盛りだくさんの今回の滞日を締めくくるのが、26日まで持たれるブルーノート東京公演だ。

アルト・サックスのアレックス・ハンやトランペットのマーキス・ヒル(昨年1月のコットンクラブにおけるリーダー公演は、2017年に日本で持たれた現代ジャズ公演の白眉であったと確信します)らのサポート陣は、現在の彼のワーキング・バンド。マーカスはこの7月に3年ぶりの新作となる『レイド・ブラック』をリリースするが、もちろん彼らはそのレコーディングのコアの奏者たちだ。

そんな面々で音を出し合うのが楽しくてしょうがないという風情が横溢する5人によるパフォーマンスは、強靭にして技たっぷりのエレクリック・ベース演奏を核に置き、進められる。その様はマーカスが描く骨太な青写真のうえに辣腕若手奏者たちが様々な音楽語彙や色彩感を散りばめていくといった風情。管奏者二人がステージを降り、トリオで演奏される局面(より、マーカスが前に出る!)も何気に少なくなかった。

前作のリード・トラック「ハイライフ」では自らハミングし観客にも働きかけて唱和させたり、当初マイルス・デイヴィスに提供した「TUTU」はクラーベ調の手拍子をお客にさせてとても早いテンポでやってみたり。それらに接すると、おなじみの曲であっても、日々"呼吸"しているんだなと思わずはいられない。

昨年、マーカスはオールドなジャズからラップまでを横切る映画『マーシャル』(米国初の最高裁判所判事であるサーグッド・マーシャルを題材にしている)のサントラを発表しているが、本当に彼が抱える音楽語彙は広く、かつその探究心はなんら衰えていないと痛感。そういえば、彼のバス・クラリネットの演奏もますます上達していましたね。ぼくは誰かのアルバムに彼がバスクラで入ったと聞いても驚かない。

事前予約で一杯となったことが伝えられていた今回の公演群は、もちろん初日のファースト・ショウからフルハウス。当然のことながら観客の反応はホットで、マーカスの一挙一動に熱烈に反応する。そのやり取りに触れていると、まさに彼は"特別銘柄"と言うしかない。どこかお茶目でいまだ青年ぽさを残しているが、そんなマーカスも来年には還暦を迎える。ふむ、これは縁のアーティストをそろえてキャリアを祝福する<マーカス・ミラー祭り>を日本で開いてもらうしかないではないか。


text : 佐藤英輔
出版社勤務を経て、フリーランスの物書きとなる。グルーヴと飛躍する感覚と酔狂さがある音楽が好み。ライヴを中心に扱ったブログはこちらから


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2018 5.24 THU.
1st & 2nd
1. RUN FOR COVER
2. PAPA
3. DETROIT
4. PORGY
5. HY LIFE
6. TUTU
EC. BLAST
 

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