2016 7.17 sun., 7.18 mon.
CHIHIRO YAMANAKA NEW YORK TRIO
artist CHIHIRO YAMANAKA
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
CDデビュー15周年記念アルバム『Guilty Pleasure』を7月13日に発売したばかりの山中千尋が、絶好のタイミングで「ブルーノート東京」に戻ってきてくれました。共演メンバーも脇義典(ベース)、ジョン・デイヴィス(ドラムス)と作品そのまま。できたてのCDからの楽曲が、目の前で次々と演奏されていく生々しさは格別です。
音量を極限までそぎ落としたかのような、3人の非常に繊細なプレイが、シンと静まった店内に鳴り響きます。幻想的な世界が数分間続いた後、浮かび上がってきたのはホーギー・カーマイケルが1940年に書いた古典的スタンダード・ナンバー「The Nearness of You」のメロディです。比較的近年ではノラ・ジョーンズもこの曲を歌っていますが、山中千尋は、こちらが"あ、ニアネスだな"と気づき始めたうちに自作「Caught in the Rain」へ移行します。彼女の書いた雨にまつわる曲には「Rain, Rain and Rain」もありますが、「Caught」からはより叙情的でエレガントな印象を受けました。たとえるならクロード・ルルーシュ監督の映画に、アコーディオンか何かの独奏で使われていても不思議ではないメロディです。毎年のように超満員のブルーノート東京を沸かせている山中千尋ですが、ここまで静かに始まった公演は、ぼくの体験した限り初めてです。
途中ではサックス奏者ポール・デスモンドが書き、彼の所属するデイヴ・ブルーベック・カルテットが流行らせた「Take Five」(近日公開の映画「ソング・オブ・ラホール」では、パキスタンのバンドとアメリカのオーケストラの共演曲の題材として使われています)や、ハンガリー生まれのピアノ奏者ラズロ・ガードニーがアルバム『The Legend of Tsumi』で初演した「Meeting You There」などのカヴァー曲も聴かせてくれました。そしてオリジナル曲は歌詞がついても不思議ではないほどメロディのキャラクターが立ったものばかりで、しかもただポップなだけではなくひねりが利いています。ジャズ・ミュージシャンとして押しも押されもせぬ地位を確立している彼女とはいえ、今回のライヴ、および最新CDは、たとえばSuchmos、CICADA、CRCK/LCKS、北園みなみなどのファンにも"刺さる"のではないかと思います。さらに幅を拡げ、ワイド・オープンになっていく山中千尋ミュージック。聴き逃すわけにはいきません。
(原田 2016 7.18)
Photo by Yuka Yamaji
2016 7.17 SUN.
| 1st | |
|---|---|
| 1. | THE NEARNESS OF YOU |
| 2. | CAUGHT IN THE RAIN |
| 3. | AT DAWN |
| 4. | TAKE FIVE |
| 5. | MEETING YOU THERE |
| 6. | LIFE GOES ON |
| 7. | YAGIBUSHI |
| EC1. | CLUE |
| EC2. | SO LONG |
| 2nd | |
| 1. | RED DRAGONFLY |
| 2. | BEVERLY |
| 3. | GUILTY PLEASURE |
| 4. | ANTONIO'S JOKE |
| 5. | SUMMERTIME |
| 6. | MOMENT OF INERTIA |
| 7. | FÜR ELISE |
| 8. | CAUGHT IN THE RAIN |
| 9. | YAGIBUSHI |
| EC1. | THANK YOU BABY |
| EC2. | CLUE |
| EC3. | RAIN, RAIN AND RAIN |







